ワクチンが打てなかった方のために【受験生|子供|高齢者】インフルエンザ予防薬と治療薬

インフルエンザを発病すると、ご高齢の方やお子さんは重症化することがあります。

また、受験生の方は冬にインフルエンザを発病すると、受験の中では大変不利になります。

インフルエンザの予防接種が打てなかった場合に、インフルエンザの予防薬は特に有効と思います。

ただ、予防薬としての使用は自費診療となります。

ですので、予防薬の値段は医療機関によってさまざまです。

予防薬の使い方は下記の通りです。

 

・タミフルは1日1回1カプセルを10日間内服してください(タミフルの添付文書はこちら)。

・リレンザは、1日1回、2キットを、10日間、専用の吸入器を用いて吸入します(リレンザの詳しい使い方はこちら)。

・イナビルは、成人または10歳以上の子供は、①イナビル2容器を1回吸入します。または、②イナビル1容器を1回分として、1日1回、2日間、口から吸入します。10歳未満の小児は、イナビル1容器を1回吸入します(イナビルの添付文書はこちら)。

インフルエンザ予防薬の料金

インフルエンザ予防薬の使い方(医療者向け)

予防薬 予防薬の使い方
タミフル®カプセル75 成人は、1日1回1カプセル、10日間、飲みます。
体重37.5㎏以上の小児も、同様に飲みます。
タミフル®ドライシロップ3% 換算表を参照
リレンザ® 1日1回、2キットを、10日間、専用の吸入器を用いて吸入します。
イナビル®20㎎ 成人または10歳以上の子供は、①イナビル2容器を1回吸入します。または、②イナビル1容器を1回分として、1日1回、2日間、口から吸入します。
10歳未満の小児は、イナビル1容器を1回吸入します。

 

感染・重症化しないために、インフルエンザ予防薬は有効

感染リスク・重症化リスクの高い場合に、インフルエンザ予防薬を使う方法はとても有効です。

高齢者・子供は、インフルエンザを発病するとしばしば重症になります

また、受験生・大切な予定のある方など、どうしても感染を避けたい状況の方や、インフルエンザ予防接種を打てなかった方もいると思います。

そのような場合、インフルエンザの予防薬は有効です。

インフルエンザ予防薬の効果

家族にインフルエンザの発症者がいる場合でも、インフルエンザ予防薬を飲んでいると、高い確率で、インフルエンザを予防できます。

インフルエンザの予防効果
タミフル® 70-90%
リレンザ® 70-80%

予防投与の効果は、オセルタミビル(タミフル®)で70-90%、ザナミビル(リレンザ®)で70-80% であった.

Fiore AE, MMWR Recomm Rep 60: 1-24, 2011

特に予防投与の適応となる対象者

下記の方は、特に予防投与の適応となります。

  1. 高齢者(65歳以上)
  2. 慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者
  3. 代謝性疾患患者(糖尿病など)
  4. 腎機能障害患者

タミフル® 添付文書より抜粋

予防薬は、濃厚接触者・インフルエンザ流行期の状況、インフルエンザ予防接種歴、免疫状態、など、その方の状況によって必要性が変わってきます。

実際、病院や老健施設などで複数の部屋を超えてインフルエンザの発病者が出た場合は、そのフロアの全員に、インフルエンザ薬の予防投与をします。

病院では、インフルエンザ患者の発生が1つの病室にとどまっている場合は、その病室に限定して、抗ウイルス薬を予防投与し、病室を越えた発生がみられたら、病棟/フロア全体での予防投与も考慮する.

日本医事新報 (4981): 32-36, 2019

 

インフルエンザ薬の一覧

原則、『インフルエンザの治療薬を半分の量で長く使う』と『インフルエンザの予防薬』となります。

薬の名前 剤型 治療投与日数 予防投与 予防投与日数
タミフル®
(オセルタミビル)
飲み薬 5日間 10日間
ゾフルーザ®
(バロキサビル)
飲み薬 1回 × ×
リレンザ®
(ザナミビル)
吸入薬 5日間 10日間
イナビル®
(ラニナミビル)
吸入薬 1回 1-2日
ラピアクタ®
(ぺラミビル)
点滴 1回 × ×
アビガン®
(ファビピラビル)
飲み薬 × ×

 

インフルエンザ薬の歴史

インフルエンザ薬として、最も歴史がある薬がタミフルです。その後、リレンザ、イナビル、ラピアクタが登場し、ゾフルーザが発売されました。

また、インフルエンザ薬として開発されたアビガンは、現在、新型コロナウィルス(COVID-19)にも使われています。

 

インフルエンザ薬はそれぞれ効き方が違う

タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタは、細胞中で増えたインフルエンザウィルスを感染した細胞の中に閉じ込めて、他の細胞に感染しないようにします。

ゾフルーザは、ウィルスが細胞の中で増えないようにします。

 

『インフルエンザ治療薬』を半量にして『予防薬』として使う

『インフルエンザの予防薬』は、『インフルエンザの治療薬』と同じ薬を使います。

現在、予防投与として使えるインフルエンザ薬は、下記の3つです。

  1. タミフル®
  2. リレンザ®
  3. イナビル®

インフルエンザの治療薬と予防薬の違いは、『薬の量』です。

治療薬の半量を飲む(または吸う)ことで、予防薬としての効果を発揮します。

  • タミフルとリレンザは、治療では5日間使用して治療終了とするところを、予防では10日間使います。
  • イナビルは、治療では1回吸入して治療終了とするところを、2日間に分けて吸入します。

予防投与する日数は、内服開始から約10日間をカバーできる日数となっています。

これは、インフルエンザを発症すると、ウィルスを体外へ放出する期間が7~10日間あるため、予防投与期間が10日間に設定されています。

一方、イナビルの予防投与は、治療用の半量を1回吸入するだけで、予防投与完了となります。

罹患リスクの高い期間(通常、初発患者がウィルスを放出している期間)、予防服用することが適切である.

タミフル® 適正使用のお願い(中外製薬)

また、医療機関によっては、適応外ではありますが、ゾフルーザ®を自費診療で処方されているところもあります。

 

インフルエンザの予防薬の投与日数

薬の名前 剤型 予防投与日数
タミフル®
(オセルタミビル)
飲み薬 10日間
リレンザ®
(ザナミビル)
吸入薬 10日間
イナビル®
(イナビル)
吸入薬 1-2日間

インフルエンザ予防薬の料金

インフルエンザ予防の服薬のタイミングは『濃厚接触から48時間以内』

インフルエンザ予防薬を使用するタイミングは、濃厚接触から48時間以内が良いとされています。

 

予防内服中にインフルエンザを発症したときは、治療量に切り替える

インフルエンザ予防内服では、治療量よりも少ない量を使っていきます。

でも、予防内服しているからといって、インフルエンザを発症しないとは限りません。

インフルエンザの予防内服中に発症してしまった時は、治療量への増量が必要です

医療機関に速やかに受診して、経過を伝えしましょう。

予防内服中に,インフルエンザ様症状を発症した場合には,抗インフルエンザ薬を予防量ではなく,治療量で用いるべきである.

Uyeki TM: Clin Infect Des. 68(6); 895-902, 2019

 

インフルエンザ薬の副作用は?

インフルエンザ薬の副作用は、主には、胃腸症状(嘔吐・下痢)、低体温です。

以前は、幻覚や飛び降りが問題となることがありました。

副作用や使用経験については、世界的にも、タミフルは最もデータがある薬物となります。

 

予防内服における副作用

タミフルの予防内服での副作用で最も多いのは、吐き気・腹痛・下痢・便秘などで、次に多いのは発熱・頭痛・めまい・眠気、などです。

一方、リレンザは、副作用は比較的少ないと言われています。

リレンザの主な副作用は、喘息(ぜんそく)患者さんでは、呼吸困難の報告があります。

タミフルの予防内服での副作用は、22.5%であり、予防内服4~5日目に認められた.

  • 胃腸障害 13.4%
  • 倦怠感・発熱 11.8%
  • 頭痛・めまい・眠気 7.9%

リレンザの予防内服での副作用は、3.4%であった.

Kato, J Infect Chemother, 23: 683-686, 2017

 

タミフル®まとめ

タミフルの予防効果はどのくらい持続?

  • タミフルは、飲んでいる限り、効果が継続します

タミフルの予防効果は、飲んでいる限り、継続します

『予防投与は10日間』と添付文書に記載はありますが、場合によっては『10日間の予防投与』を複数回、行うこともあります

かかりつけの医療機関にてお尋ねください。

タミフルの予防効果は、連続して服用している期間のみ持続します.

タミフル® 添付文書より抜粋

同じシーズン中の投与回数制限の規定はありません.

医師の判断により、複数回予防投与が実施されることがあります.

タミフル® 適正使用のお願い(中外製薬)

 

タミフルの副作用

  1. 胃腸障害(下痢・腹痛)
  2. 精神障害(飛び降り・幻覚)

タミフルの主な副作用は、胃腸障害・精神障害、です。

精神症状の中でも、特に幻覚や飛び降りについては、2007年、10代の患者さんの転落死がニュースで報道されました。

その後、緊急安全性情報が出され、10代のインフルエンザ患者さんへの投与制限がありましたが、現在では『タミフルと精神症状との明らかな関連性はない』とされ、投与制限は解除されています

 

タミフルと精神症状(異常行動・飛び降り・幻覚)とは関連しない

現在では、タミフルと精神症状・異常行動は関係ないと言われています。

精神症状が出てしまった原因は、『インフルエンザの症状そのものによる』、という考えが現在では主流です。

抗インフルエンザウィルス薬を服用していないインフルエンザウィルス患者さんでも異常行動を起こすことが確認された.

タミフルと異常行動等の関連に係る報告書(H30年度第9回薬事・食品衛生審議会薬事分科会)

 

インフルエンザを発症したら、はじめの2日間は転落防止をする

インフルエンザを発症してしまうと、はじめの2日間は、転落・飛び降りなどの重度の異常行動が見られることがあります。

幼稚園生・小学生・中学生・高校生、など、小児や10代でこれらの転落事故・飛び降りの件数が多いとされています。

ですので、インフルエンザを発症して、はじめの2日間はよく注意して見てあげた方が良いです。

 

小さな赤ちゃんでもタミフルを使用できる?

日本では、タミフルは1歳未満でも、生後1か月くらいから安全に使用できます。

国内の臨床試験でも、小さな赤ちゃんでも安全にタミフルが使えたという研究データがあります。

国内で22例の患児(生後1か月~11か月)にタミフルが投与され、副作用はなかった.

 佐藤; 小児感染免疫; 29(1): 83-88, 2017

 

タミフルの使われた最年少は日齢13日の赤ちゃん

タミフル使用の最年少は、海外の臨床試験で、生後13日の赤ちゃんに対してタミフルが投与されたデータがあります。

ですので、早産児や生後13日未満の新生児における使用経験はないとされています。

米国では、オセルタミビル(タミフル®)を投与された最年少患児は、日齢13日であった.

Kamel MA: Infectious Disorders Drug Targets; 207(5):709-720, 2013

 

タミフルはインフルエンザ予防接種の代わりには、厳密にはなりません

インフルエンザ予防薬は、『感染を防ぐ』という意味では、インフルエンザ予防接種の代わりなりますが、厳密に同じ効果ではありません

タミフルは、発熱・関節痛などのインフルエンザ症状の発症は予防できますが、インフルエンザウィルスに感染すること自体は予防できない点で、予防接種とは異なります。

タミフルの予防効果は、インフルエンザ発症の抑制であり、インフルエンザ感染抑制効果はありません.

タミフル® 適正使用のお願い(中外製薬)

 

インフルワクチンの在庫は全国にどのくらい?

日本人の人口1.2憶人に対して、2020年のインフルエンザワクチンは、6650万人分が生産される見込みです。

3歳から13歳までは2回打ちますので、人口の半分弱~3分の1くらいの方が打てる見込みとなります。

2020/21シーズン向けのインフルエンザワクチンは、4価ワクチンに変更された平成27年以降で最大約6,650万人分を確保できる見込み

厚生労働省HP より抜粋