『疲れがとれない状態』が半年以上続くと、『慢性疲労症候群(まんせい・ひろう・しょうこうぐん)』の可能性があります。
慢性疲労症候群は、人口の 0.3% に見られ、社会の生産性が落ちることでの経済損失が年間1.2兆円と試算されています。
原因は不明ですが、以前は、何らかのウィルス感染の後に起こる(感染後疲労症候群)とされてきましたが、ウィルスの特定にはいたっていません。
- 感染後疲労症候群
- 何らかのウィルス感染後に起こる慢性疲労です。
人口あたり0.2%の確率で起こる、割と頻度の高い病気です。
感染後疲労症候群を起こしやすいウィルスとしては、EBウィルス・インフルエンザウィルスが有名です。
- EBウイルス
- インフルエンザ
- ヘルペスウイルス
- パルボウイルス
『インフルエンザの後に疲れが取れなくなった』という場合は、この病気の可能性があります。
有効な治療法はなく、症状に合わせた治療とカウンセリングが主体となります。
参考│
・前田, 感染後疲労症候群, 小児科診療 72(suppl): 422-422, 2009
慢性疲労症候群とは?
慢性疲労症候群とは、『原因不明の疲れ』が半年以上続き、日常生活が普通どおりにできなくなる病気です。
この病気は原因不明であり、有効な薬もそれ程ありません。
しかし、この病気を理解を深めることで、自分を客観視でき、これ以上ストレスを抱えずに過ごせる可能性があります。
診断
慢性的な疲れが半年以上続いていたら、だいたい診断に当てはまります。
この疲れは、寝ても回復しませんし、頭痛・腰痛・関節痛なども出てきます。
ノドが痛いことも特徴です。
慢性疲労症候群の診断基準
(A・B)の条件を共に備える場合に、慢性疲労症候群と診断する.
(A)"慢性疲労"が下記の条件を満たす場合
ア)臨床的に新しい明確な発症である
イ)現在続いている労作の結果ではない
ウ)休養で改善されない
エ)職業・教育・社会・個人における活動力の以前に比べての低下(50%以上)
(B)以下の症状の 4 つ以上が同時に存在する
(症状は 6 か月以上持続またはくり返し,疲労発現前にはないこと)ア)24 時間以上続く労作後の劵怠感
イ)睡眠で回復しない
ウ)短期記憶または集中力の重大な低下
エ)筋肉痛
オ)発赤・腫脹のない関節痛
カ)新しいタイプまたはパターン,強さの頭痛
キ)頸部または腋窩部のリンパ節の圧痛
ク)頻度の高いまたはくり返す咽頭痛Fukuda K: The chronic fatigue syndrome: a comprehensive approach to its definition and study. International Chronic Fatigue Syndrome Study Group. Ann Intern Med, 121:953⊖959, 1994
小児の場合は、朝起きられず学校に行けないことが多いため、起立性調節障害・体位性頻脈と誤解されやすいです。
『朝、起きれない』というお子さんは、実は『起立性調節障害(きりつせい・ちょうせつ・しょうがい)』かもしれません。 起立性調節障害は、自律神経の障害で、朝起きられなかったり、頭痛が起こったりする子どもの病気です。 『朝起きられない[…]
治療
薬による治療もありますが、効果に乏しいです。
治療の主体は、『病気を受け入れて、自分を客観視すること』です。
マインドフルネスも有効です。
対人ストレスが強い場合は、認知行動療法も有効です。
薬の治療
慢性疲労症候群の薬物治療
- 補中益気湯
- 六君子湯
- アスコルビン酸(ビタミンC)大量療法
- カルニチン補充療法
治療薬として特定のものはない.
下村, 慢性疲労症候群の治療と社会支援, 難病と在宅ケア 27(2): 30-33, 2021
カルニチン療法を行う場合は、治療前にカルニチン濃度の測定が望ましいです。
心理的な治療法
- 生活習慣の改善
- 十分な睡眠
- 認知行動療法
- マインドフルネス
- 運動(ヨガ)
認知行動療法│対人ストレスが強い場合に有効
慢性疲労症候群の認知行動療法とは、辛い状況になった時に、自分に腹落ちするような考え方に切り替えていく治療法です。
誰かに小言や注意を受けて『怒り』が湧いてくる時、相手の立場に立って、『良かれと思って注意したのかもしれない』と考えることで、自分の怒りを抑える方法もあります。
参考│
・倉恒, 慢性疲労症候群の疫学/病態診断基準, 日本臨床, 2007;65:983-990