高血圧の20%には、血圧が高くなる病気が隠れていると言われています。
さらに近年、高血圧の原因の約10%に、実はお腹の腫瘍が原因というデータが出ました。
あまりにも血圧が下がらない時は、お腹にある副腎(ふくじん)に腫瘍ができて、血圧が高くなるホルモンを出している場合があります。
この副腎の病気は、高血圧を薬で抑えている場合は、逆に見つかりにくくなります。
また、副腎の病気以外の原因でも、血圧が高くなっているのかもしれません。
ですので、高血圧ははじめの診療が大切なのです。
重大な病気を見過ごさないように、高血圧の診察を正しく受けるようにしましょう。
高血圧の20%は、何か原因がある
- 高血圧の10%に血圧が高くなるホルモンを出す腫瘍が隠れている
高血圧の20%には、血圧が高くなる病気が隠れています。
さらに、高血圧の10%は、お腹に血圧が上がるホルモンを出す腫瘍があると言われています。
高血圧で受診すると、血圧手帳をもらって家でつけるように指導、食事の指導、血圧の薬を処方、のパターンが多いと思います。
通常の高血圧であればそれで良いです。
しかし、すべての高血圧の方が、同じパターンに当てはまるわけではありません。
何かの病気があって、血圧が上がっていることは、以前はまれだと考えられていましたが、最近ではその割合は20%と程度と意外に多いことがわかりました。
見逃されないように、きちんと受診して、疑い、検査を受けることが大切です。
高血圧の原因となる病気
- 副腎(ふくじん)の病気
- 腎臓(じんぞう)の病気
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺の病気
高血圧の原因となる病気としては、副腎の病気、腎臓の病気、睡眠時無呼吸症候群、が多いです。
血圧が上がる副腎の病気は、『原発性アルドステロン症(げんぱつせい・あるどすてろんしょう)』が有名です。
原発性アルドステロン症などの副腎の病気は、血液検査で疑うことができます。
高血圧を起こす病気は、血液検査で見つかる
血圧が高くなる病気は、血液検査をすることで見つかることが多いです。
血圧が高くなる病気の多くは、ホルモンバランスが崩れるからです。
副腎の病気は、ホルモンが過剰に出ることで血圧が上がるため、血液検査ですぐに疑うことができます。
その他にも、高血圧の原因となる睡眠時無呼吸症候群は、家族から『いびきがうるさくて困る』、『寝ている時に息が止まっている』と言われて、見つかるきっかけになることもあります。
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血圧が上がる副腎の病気
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- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫(かっしょく・さいぼうしゅ)
- クッシング病
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高血圧の原因となる病気の頻度
- 高血圧の原因になっている病気の種類と頻度です。
何かの病気がきっかけで高血圧になっている場合は、『二次性高血圧(にじせい・こうけつあつ)』と言います。
近年、二次性高血圧は、高血圧全体の約20%もあると言われています。
二次性高血圧の原因として最も多いものが、睡眠時無呼吸症候群、腎臓の病気、副腎の病気、ということなのです。
高血圧の原因となる病気 二次性高血圧の中の割合 どこが悪い? 睡眠時無呼吸症候群 5-15% 脳・のど・肺 腎実質性高血圧 1.6-8.0% 腎臓 腎血管性高血圧 1.0-8.0% 腎臓への血管 原発性アルドステロン症 1.4-10% 副腎 クッシング症候群 0.5% 副腎 褐色細胞腫 0.2-0.5% 副腎 甲状腺疾患 1-2% 甲状腺 大動脈縮窄症 1%未満 大動脈 Rimoldi SF; Eur Heart J 35: 1245-1254, 2014
副腎とは
副腎は、生きるために必要な元気の源となるホルモンを出す臓器です。
背中の方にある、数センチのとても小さい臓器です。
しかし、この小さな臓器が、生きていくためのとても大切なホルモンを分泌しているのです。
最も有名なのは、ストレスホルモンとしても有名な『コルチゾール』です。
その他にも、副腎は『アルドステロン』というホルモンを出します。
このアルドステロンが過剰になった状態が、『原発性アルドステロン症』なのです。
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副腎で作られるホルモン
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皮質ホルモン ステロイドホルモン(コルチゾール、アルドステロン、DHEA) 髄質ホルモン カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)
原発性アルドステロン症の診断・治療
- カリウムが低い
- アルドステロンが高い
血液検査でアルドステロン値とレニン活性を調べます。
原発性アルドステロン症の場合は、アルドステロン値が上がります。
また、血液中のカリウムが低くなるのも原発性アルドステロン症の特徴です。
カリウムは普通の血液検査でも、検査項目に入っていることが多いので、注目してみてみましょう。
原発性アルドステロン症を疑った場合は、大きな病院でCTやMRIなどの精密検査を行います。
場合によっては、ホルモンを出している部分を見つけるために、カテーテル検査を行うこともあります。
原発性アルドステロン症の場合は、カテーテル検査を受けることで、手術する部分を決めることができます。
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クリニックで行う検査(医療者向け)
- 条件①または②を満たせば、原発性アルドステロンを疑う。
- 血漿アルドステロン(pg/mL) / レニン活性(ng/mL/時) が200以上
調べる血液検査項目
- 血漿アルドステロン
- レニン活性
- 血漿アルドステロンが120以上の時に、血漿アルドステロン(pg/mL) / 血漿活性型レニン(pg/mL) が40-50以上
(低レニン血症の対策として、血漿アルドステロン値が120以上を条件としている)
調べる血液検査項目
- 血漿アルドステロン
- 血漿活性型レニン
高血圧でカリウムが低いときは、原発性アルドステロン症かも?
原発性アルドステロン症は、疑わないと正しい診断までたどり着けません。
ふつうの血液検査では、『アルドステロン』という項目は検査しないので、『カリウム』に注目してください。
『カリウム』であれば、ふつうの血液検査でも調べている事が多いです。
- 血圧が下がらず、カリウムが低い時は、原発性アルドステロン症を疑う
原発性アルドステロン症の治療は、『手術か薬』
原発性アルドステロン症の治療は、副腎が片側だけ異常なのか、両側ともに異常なのかで治療が違います。
片側の副腎だけアルドステロンを大量に放出しているときは、その副腎を手術で切り取ってしまいます。
両側の副腎からアルドステロンが大量に出ている場合は、手術の適応がなく、アルドステロンを抑える薬を飲むしかありません。
アルドステロンを抑える薬は、『MR(ミネラル・コルチコイド)阻害薬』と言い、3種類(スピロノラクトン・セララ・ミネブロ・)があります。
MR拮抗薬
MR拮抗薬(きっこうやく)には、下記の3種類があります。
- スピロノラクトン(アルダクトン)
- エプレレノン(セララ)
- エサキセレノン(ミネブロ)
スピロノラクトンは、古くから使われている安くて良い薬です。
最近では女性のAGA(脱毛症)にも使われます。
腎臓の機能が多少悪くても使うことができます。
副作用としては、性ホルモン関連が多く、男性の場合は女性化乳房、女性の場合は生理不順があります。
セララは、性ホルモン関連の副作用が少ない薬です。
しかし、腎臓が悪かったり(eGFR 50未満)、糖尿病が進んでいる(糖尿病性腎症2期)では禁忌であり、飲むことができません。
ミネブロは、腎臓が悪くても、糖尿病が悪くても使える薬です。
腎臓がある程度悪くてもミネブロを飲むことはできますが、腎臓が悪すぎると(eGFR 30未満)、さすがに使えません。
糖尿病が悪くても使える良い薬です。
最近では、新しいMR拮抗薬『フィネレノン』が海外で使われるようになってきました。
日本では現在、承認待ちの状態です。
原発性アルドステロン症は必ず手術というわけではない
原発性アルドステロン症と診断されても、全員が手術になるわけではありません。
中には、ほんの少しだけ アルドステロンが高いだけの人もいます。
また、アルドステロンが片側の副腎か両側の副腎から出ているかは、『副腎静脈サンプリング』というカテーテル検査を行う必要があります。
やや特殊な検査であり、リスクもあるため、メリット・デメリットを比較した上で検査をやらない施設もあります。
検査を実施し、仮に手術になっても、麻酔トラブルがあり得る手術ですし、費用も高いため、やらないという選択肢をされる先生や患者様も見えます。
高血圧になると発症しやすい病気
主に、心臓と脳の血管の病気にかかりやすくなります。
また、高血圧になると、首の血管や、足の血管が、つまりやすくなります。
その他にも、高血圧は、頭痛の原因になったりします。
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高血圧が原因となる病気
- 高血圧が原因で起こってしまう病気もあります。
高血圧が原因となる病気 脳出血 脳梗塞 くも膜下出血 一過性脳虚血発作 高血圧性脳症 心筋梗塞 狭心症 頸動脈狭窄症 閉塞性動脈硬化症 下肢血管閉塞
高血圧の食事
塩分控えめの食事が良いとされています。
食塩は6g以下、アルコールはエタノール換算で30g以下が良いとされています。
血圧をたった10下げだけで、心臓と脳の病気を防げる
上の血圧(収縮期血圧)を10mmHg下げるだけで、心臓と脳の病気を防ぐことができます。
心臓や脳の病気になると、後遺症で生活が大変になるため、高血圧の治療をしておくというのは、とてもコストパフォーマンスが高い治療となります。
収縮期血圧を10mmHg低下すると、下記の疾患リスクが低下する.
- 心不全発症リスク 40%
- 脳出血と脳梗塞発症リスク 30-40%
- 冠動脈疾患発症リスク 20%減少
高血圧治療ガイドライン2019