サル痘は、皮膚にブツブツができるウィルス感染症です。
天然痘・水痘(水ぼうそう)の症状の特徴と似ていて区別がつきにくいです。
サル痘は、致死率 3-10%で、ヒトからヒトへの感染率は、20-30%です。
- サル痘まとめ
- サル痘は、天然痘に似た症状を示す人獣共通感染症のオルトポックスウイルスです。
ジリス等のげっ歯類が宿主のウイルスで,ヒトでは天然痘に似た症状を引き起こします。
アフリカ(ガーナ)から輸入したげっ歯類が感染源となり,2003年に米国においてヒトにおけるサル痘ウイルス感染症が流行しました。
日本では4類感染症に分類されており、診断した場合は、保健所への届け出が必要です。
サル痘の発見はいつ?│サル痘の歴史
- 1958年 猿にサル痘が初めて発症
- 1970年 人間にサル痘が初めて発症
サル痘のはじまりは1958年(猿に発症)
サル痘は、1958年にコペンハーゲン(デンマーク)に輸出された猿から見つかりました。
1958年Von Magnusらがシンガポールからコペンハーゲンに輸出されたカニクイザルに全身発痘した症例を見つけモンキーポックス(サル痘)と名づけた
Jezek J: Monographs in Virology, Vol 17, Karger, Base1, 1988
1970年 人間がサル痘を発症
1970年に人間のサル痘が発見されました。
コンゴ民主共和国の農村地域におけるサル痘の発生がまとめられた.
Ladnyj et al, 1972
サル痘の主な症状は『皮膚のブツブツ』
サル痘の主な症状は、皮膚のブツブツ=発疹(ほっしん)です。
他には、熱が出たり、呼吸がしんどい、などの症状が出ます。
通常は、4週間以内に自然と治ります。
潜伏期間は、サル痘の人や動物と接触してから1-2週間です。
感染源の接触から3週間経っていれば大丈夫です。
発疹パターンにも特徴がありますが、実際は見た目だけでは、天然痘や水痘とサル痘の区別は困難とする海外研究が多いです。
サル痘の皮疹パターン
サル痘の皮疹(手・背中)
サル痘の症状の研究(米国):35症例の検討
- 発疹 97%
- 発熱 83%
- 呼吸器症状 77%
- リンパ節腫脹 69%
Guarner J, et al: Emerg lnfect Dis 10: 426- 431, 2004
サル痘の潜伏期間は1-2週間
- 潜伏期間は7-15日
- 重症例では天然痘に類似し、全身特に顔面、手足、手掌、足に丘疹、水庖、膿庖性の発痘がみられ痂皮となる
- リンパ節の腫脹、高熱を伴う
吉川, ウイルス感染症 モンキーポックス (サル痘), 日本臨牀 68(増刊号6): 322-324, 2010
サル痘の致死率は10%│9割は助かる
サル痘の致死率は、平均すると、3-10%です。
流行年ごとに致死率のデータにばらつきはあります。
しかし、9割は助かる病気です。
重症例は、天然痘に似たブツブツが激しく出現するため、命に関わる場合は、見た目にも症状が出ます。
サル痘の治療薬『テコビリマット』『シドフォビル』
サル痘の治療薬で、国内で承認されているものはありません。
海外では『Tecovirimat:テコビリマット』『Cidofovir:シドフォビル』が承認されています。
サル痘治療薬①テコビリマット│アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
重症になる可能性が高い人には、テコビリマット(tecovirimat:TPOXX)などの抗ウイルス薬が推奨される場合がある.
サル痘の治療薬②シドフォビル
抗ウイルス薬のCidofovirがサル痘に有効(invitroおよび動物実験)との報告もあるが、ヒトでの十分な評価がないこと、腎障害などの副作用も強いため、重症例に限って使用する方向が推奨されている.
吉川, ウイルス感染症 モンキーポックス (サル痘), 日本臨牀 68(増刊号6): 322-324, 2010
参考│
・吉川, ウイルス感染症 モンキーポックス (サル痘), 日本臨牀 68(増刊号6): 322-324, 2010