【時期を逃さないために】パーキンソン病の手術の適切なタイミングは?│DBS

パーキンソン病の手術は、脳に電極を入れる『DBS』という手術が主流です。

DBSを行うメリットは、『動きやすくなること』です。

この手術は、『手術を行うタイミング』が難しいです。

『電極を入れる』ということは、今後MRIを撮影できなくなります

また、5年に1回のバッテリー交換の手術も必要になります

手術のタイミングが早すぎると、これらのデメリットの影響が大きくなりますが、タイミングが遅すぎると手術の効果が出ません。

適切な手術のタイミングを知り、治療の方針について、担当の先生に前もって希望をよく伝えておきましょう。

 

結論:パーキンソン病の手術のタイミングは、若い人で動きが悪くなってきたとき

  1. 若い(50歳代)
  2. 動きにくくなって3年以内

パーキンソン病の手術で最も大切なことは、『タイミング』です

動きが完全に悪くなってからでは、手術の効果が望めません

つまり、動きにくくなって間もない頃(3年以内)が、手術のタイミングとなります。

また、高齢になってからのパーキンソン病手術は、効果に乏しい上に、合併症も増えてきます。

ですので、50歳代の若いうちに手術する方が良いです。

パーキンソン病はお年寄りの病気ですので、『若い』というのは、50歳代の方を言います。

若い人が動きにくくなってきた時が手術のタイミング

STN-DBSを行うことで、QOL(生活の質)が改善した.

対象:運動合併症を発症して3年以内の若年患者

  • 平均52歳
  • 発病して7.5年以内

Schuepbach WM. Neurostimulation for Parkinson’s disease with early motor complications. NEJM. 2013; 368(7): 610-622 

 

パーキンソン病の手術の種類

  1. 脳に電極を入れる手術(DBS)
  2. 脳の一部を破壊する手術(破壊術)

パーキンソン病の手術の種類は、脳の一部に電極を入れる手術と、脳の一部を破壊する手術があります

電極を入れる手術を、DBS(でぃー・びー・えす)と言います。

現在では、電極を入れる手術の方が主流であり、破壊術が行われることは少なくなっています。

現在の手術の主流は、DBS手術

DBS(電極を入れる手術)の方が、主流です

電極を入れるDBS(でぃーびーえす)の方が、パーキンソン病の手術としては主流です。

なぜなら、破壊術は脳の一部を壊してしまうため、調節が難しいからです。

その点、DBSであれば、電極から脳に伝える電気刺激の強さを調節できるため、便利が良いのです。

DBSの方が主流

2000年にSTN-DBSが保険適応された後は、可逆性、調節性が支持されて事実上破壊術に取って代わった.

パーキンソン病診療ガイドライン2018, p200

DBS手術の種類

 

  1. STN-DBS(視床下核 脳深部刺激療法)
  2. GPi-DBS(淡蒼球内節 刺激療法)
  3. Vim-DBS(視床腹中間核 脳深部刺激療法)

脳のどこに電極を入れるかで、DBS手術の名前が変わります。

STN-DBSが最も一般的であり、まず第一に勧められる手術法です。

ただ、STN-DBSは、認知症や精神症状の合併症が起こり得るため、これらのリスクの高い患者さんには、Gpi-DBSが選択されることもあります。

Gpi-DBSの方が良い場合

下記の理由でSTN-DBSの適応として適切ではない場合は、Gpi-DBSを検討する

  1. オン時の運動機能やADLが損なわれている
  2. すくみや姿勢反射障害などの体軸症状が認められている
  3. 抑うつ傾向を認める
  4. 軽度の認知機能障害や遂行機能障害を認める

また、薬剤を減量することなくジスキネジアを改善したい場合もGpi-DBSを考慮する.

パーキンソン病診療ガイドライン2018, p200

 

パーキンソン病の手術の効果とメリット

  1. 『薬が効いていない時間』も動きやすくなる
  2. 『体が勝手に動く』が少なくなる

パーキンソン病の手術のDBSの効果は、主に『底上げ効果』です。

薬が効いていない時間(オフ時間)も、動きやすくなることが最大のメリットです。

パーキンソン病は、次第に薬が効きにくくなる病気です。

まだ手術できる年齢で、薬が効きにくくなってきたら、それはDBS手術のタイミングかもしれません。

パーキンソン病の手術で期待できない効果

『薬が効いている時間の動きやすさ』は、特に変わらない

電極を入れるDBS手術を行っても、『薬が効いている時間帯の動きがさらに良くなる』ということはありません。

ですので、積極的にどんどん状態を良くする手術というよりは、『動きの良くない時間帯を減らす』という目的の手術と言えます。

DBSを行ってもオン時間が更に良くなるということはない

オン時の運動症状やADLの改善は、あっても一時的である.

パーキンソン病診療ガイドライン2018, p202

 

 

パーキンソン病の手術リスク│合併症

  1. 認知症
  2. 精神症状

パーキンソン病のDBS手術の主な合併症(副作用)は、認知症と精神障害です。

つまり、DBS手術をしたことで、認知症が進んでしまう場合があります。

ですので、もともと認知症がある方は、DBSはできません。

また、『現時点では認知症ではないけど、手術の後に認知症になりそうな患者さん』には、STN-DBSではなく、GPi-DBSが勧められます

 

パーキンソン病の手術のデメリット

  1. MRIが撮影できなくなる
  2. バッテリー交換が必要(5年毎に手術)
  3. 電極が感染すると、手術やり直し

パーキンソン病の手術で電極留置(DBS)を行うと、MRIが撮影できなくなります

これは、将来的にはデメリットがあるかもしれません。

なぜなら、脳梗塞の診断は、CTよりもMRIで診断しやすいからです。

つまり、パーキンソン病で電極留置の手術(DBS)を行うと、脳梗塞の診断が遅れる可能性があるということです。

 

パーキンソン病の手術の費用

すべて合せると総額400万円くらいです。

しかし、高額医療費制度が使えるため、10万円以内で手術ができることが多いです。

 

パーキンソン病で多い手術は、『せぼねの手術』

パーキンソン病になると、せぼねの骨折を起こしやすいです。

パーキンソン病でせぼねの骨折を合併した場合は、背骨にスクリューを入れたり、セメントで固定したりします。

せぼねの骨折はなぜ起こる?│パーキンソン病

パーキンソン病になると、運動能力が落ち、骨がもろくなります

パーキンソン病になると、全身が衰え、体力が落ち、だんだんと外に出なくなります。

運動量が減り、日光に当たらないと骨がどんどんもろくなります。

骨がもろくなると、動けなくなり、さらに骨がもろくなるという負の連鎖になってしまいます。

この流れにならないように、日頃から運動して適度に日光を浴びるようにする必要があります。

 

パーキンソン病Q&A

パーキンソン病は多い病気ですか?

65歳以上の100人に1人がパーキンソン病

パーキンソン病は、高齢者ではかなり多い病気です。

65歳以上では、人口10万人あたり950人と言われており、『100人に1人はパーキンソン病』という計算になります。

パーキンソン病の有病率

  • 有病率は、人口10万人あたり 100-300人 と推定される.
  • 65歳以上では、人口10万人あたり 950人 と推定される.

Wirdefeldt K, Eur J Epidemiol 2011; 26(Supp 1): S1-S58