脊髄梗塞(せきずいこうそく)の診断と治療

脊髄梗塞(せきずい・こうそく)は、『せぼねの中にある太い神経(=脊髄:せきずい)』の血流が途絶え、壊死してしまった状態です。

脊髄の血流が途絶えると、両足が動かなくなりますし、場合によっては、両手が動かなくなったり、呼吸ができなくなります。

 

脊髄梗塞の症状│突然、両足が動かなくなる

  • 突然、両足が動かない
  • 突然、両足の感覚が無くなる
  • 突然、熱い感覚や冷たい感覚がなくなる
  • 突然、ふらつくようになる
  • 突然、両手両足が動かない
  • 突然、呼吸がしづらくなる

いずれも、『突然』起こることがポイントです。

脊髄梗塞は、神経の病気のひとつですが、そもそも『血管が詰まる病気なので突然起こる』ということです。

脊髄梗塞では、両足が動かなる症状は、ほぼ必ず起こります

両足が動かなることを、医学用語で『対麻痺(=ついまひ)』と言います。

脊髄梗塞になりやすい年齢は、60~70 歳代

Robertson, C.E: Recovery after spinal cord infarcts: long-term outcome in 115 patients. Neurology, 78(2): 114-121, 2012

脊髄梗塞の症状は運動麻痺が主、感覚は痛みと温度がわからなくなることが多い

症状として,運動麻痺・膀胱直腸障害および解離性感覚障害が見られる

解離性感覚障害は,ASA 症候群では温痛覚のみ障害され,PSA 症候群では深部覚のみ障害されるのが特徴である

*ASA=前脊髄動脈、PSA=後脊髄動脈

河原: 当院で経験した脊髄梗塞10例の検討, 東日本整形災害外科学会雑誌 34(2): 98-102, 2022.

 

 

脊髄梗塞の診断│MRIで診断・その他の病気の除外も必要

脊髄梗塞は、せぼねのMRIを撮影すれば、ある程度の診断はつきます。

しかし、それだけでは不十分で、似たような病気を除外していく必要があります。

 

脊髄梗塞は胸髄によくできる│脊髄梗塞の好発部位

脊髄梗塞は、せぼねの中でも、背中のあたりに起こりやすい病気です。

背骨の中でも、首や腰にもできますが、胸髄に起こりやすいです。

脊髄梗塞は、背中の神経(胸髄:きょうずい)によくできます

 

 

脊髄梗塞は胸髄に発症しやすい│医師の学習向け内容

脊髄梗塞は、胸髄に好発するため、脊髄梗塞を否定できない場合は、頚椎MRI・腰椎MRIを撮影するとともに、胸椎MRIを含んで撮影した方が、脊髄梗塞の見落としが少ないです。

脊髄梗塞は、初診で診断がつきにくいことがあります。その理由は、脊髄梗塞の早期は、MRIで脊髄内の異常信号が映らないことが多いからです。

初回のMRIで脊髄梗塞を検出できなくても、脊髄梗塞が否定できない場合は、日を置いてから再検査をしましょう。

その間に他の疾患を否定しておくことも大切です。

 

脊髄梗塞は胸髄に好発する

Kramer, C.L.: Vascular disorders of the spinal cord. Continuum 24, Spinal Cord Disorders): 407-426, 2018

 

 

 

 

脊髄梗塞の治療│確かな治療は無い

  • 薬物治療(血液サラサラの治療)
  • 脳梗塞と同じ治療(エダラボン)
  • リハビリテーション

脊髄梗塞に全国的に統一された治療はありません

治療方針を示すようなガイドラインもありません。

しかし、再発予防のために、血液をサラサラにして、脳梗塞で使われるような薬を投与し、リハビリを行っていきます。