新型コロナウィルス感染症は、一命をとりとめても、後遺症で苦しむ場合があります。
新型コロナウィルスのワクチンが普及し、次は治療のさらなる開発が進みますが、同時にコロナの後遺症(ロング・コビッド)の対策もしていかなければいけません。
問題)コロナワクチンを打った後に、『皮膚の赤み』が出るのはいつ?
3択です
- すぐ赤くなる
- 1日後に赤くなる
- 1週間経ってから、急に赤くなる
驚きの正解は(画像あり)⇛(https://sato-nou.com/skin-vaccine)
結論:コロナの後遺症で、『体のだるさ』『脱毛』『嗅覚障害』が残ることがある
- 体のだるさ
- 脱毛
- 嗅覚障害(においがしない)
- 呼吸困難(息が苦しい)
- 咳
- 味覚障害(味がしない)
- 口の中が乾く
- 鼻炎
- 結膜充血(目が赤い)
- 頭痛
- 痰(たん)がよく出る
- 食欲がない
- めまい
- 筋肉痛
- 下痢
コロナ後遺症として、日本で報告が多かった症状は、『脱毛』と『嗅覚障害(においがしない)』です。
コロナ発症から60日経っても、約2割の患者さんが『脱毛』と『嗅覚障害』が後遺症として残っていたと報告があります。
日本のデータでは、脱毛は、コロナ患者さんの2割程度とかなり多い後遺症と報告されています。
日本では『脱毛』と『嗅覚障害』の後遺症が最多
COVID-19 回復者63人の後遺症の電話調査の結果:
①発症から60日時点
- 嗅覚障害(19.4%)
- 呼吸困難(17.5%)
- 倦怠感(15.9%)
- 咳(7.9%)
- 味覚障害(4.8%)
②発症から120日時点
- 呼吸困難(11.1%)
- 嗅覚障害(9.7%)
- 倦怠感(9.5%)
- 咳(6.3%)
- 味覚障害(1.7%)
③脱毛について
脱毛は24%に見られ、発症後 約30日から出現、約120日まで見られた.
脱毛の平均持続期間は、平均 76日間.
厚生労働省, 新型コロナウィルス感染症 診療の手引き4.2版
高齢者は、コロナの後遺症が残りやすい│COVID-19の後遺症と年齢の関係
年齢とともに、コロナの後遺症が残りやすいと報告があります。
若い人では後遺症が残る確率は2-3割ですが、50歳以上は約半分の人が後遺症が残ると米国から研究データが出ました。
高齢者はCOVID-19の後遺症が残りやすい(米国の報告)
年齢別の後遺症率:
- 18-34歳 26%
- 35-49歳 32%
- 50歳以上 47%
Tenforde MW: Characteristics of Adult Outpatients and Inpatients with COVID-19, 11 Academic Medical Centers, United States, March-May 2020, MMWR 2020; 69: 841-846
『後遺症が残る確率は8割以上』│イタリアのデータ
コロナでロックダウンしたイタリアからの報告では、コロナの後遺症が残った確率は8割以上でした。
最も多いものは、『体のだるさ』で、次に多い症状は『呼吸困難感』です。
日常生活や仕事に復帰するにも、満足に回復しない可能性があります。
8割以上で後遺症が残るかもしれない(イタリアのデータ)
退院患者143人の後遺症:
- 倦怠感(53.1%)
- 呼吸困難感(43.4%)
- 関節痛(27.3%)
- 胸痛(21.7%)
その他、様々な症状の報告あり.
Carfi A: Persistent Symptoms in Patients After Acute COVID-19. JAMA 2020; 324: 603-605
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後遺症は血栓と関係しているかもしれない
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コロナの後遺症は、『血流が悪くなる』ために起こるかもしれない、と言われています
後遺症の原因について、ウィルスによって、肺や心臓の血管が傷んでいることが影響している可能性があります。
血栓・凝固異常がコロナ後遺症と関連
持続的なDダイマーの増加は、Long COVIDの病因に関連している可能性がある.
Townsend L, Prolonged elevation of D-dimer Levels in Convalescent COVID-19 patients is Independent of the Acute Phase Response.J Thromb Haemost. 2021 Feb 15. doi: 10.1111/jth.15267
心臓はコロナによる障害が残っている可能性が高い
コロナ診断後 約70日時点で、71%で高感度トロポニンTが検出された.
また60%では進行中の心筋炎の所見を認め、継続的な障害が残存していた.
Puntmann VO: Outcomes of Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging in Patients Recently Recovered From Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) JAMA cardiol July 27, 2020
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コロナの後に『うつ』になる│バングラデシュの報告
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コロナから回復した後、『うつ病になりやすい』と報告があります
コロナから回復しても、その後に『うつ病』になりやすいという研究報告がバングラデシュからありました。
また、基礎疾患があったり、経済が不安定になるとうつ病の発症率が上がります。
これは、基礎疾患があると健康面での不安や、収入面での不安などから、うつ病になりやすいのではないか、と解釈されています。
コロナから回復しても『うつ病』と発症するかもしれない
COVID-19から回復した後も、48%は、中等度から重度のうつを発症した.
うつ病と診断された症例と相関があった項目:
- 家族収入の低下
- 睡眠障害
- 活動量の低下
- 高血圧
- 喘息
- 呼吸器疾患
Md Saiful Islam; Treatment, Persistent Symptoms, and Depression in People Infected with COVID-19 in Bangladesh, Int J Environ Res Public Health. 2021 Feb 5;18(4):1453. doi: 10.3390/ijerph18041453
『コロナ後遺症の外来』の設置が望ましい
『コロナの後遺症』を専門に診療にする外来があれば良いのですが、国内だけでなく、世界でもまだ十分な準備が整っていません。
当院では、コロナ後遺症があれば、神経症状に対しては神経再生のビタミン剤、体のだるさに対しては状態により点滴や飲み薬、頭痛については頭痛薬を処方します。
また、脱毛に対しては、髪に栄養を与える治療やLED治療を提案しています。
早急な、後遺症の治療方法のデータやエビデンスの集積、コロナの収束を願っています。