低温やけどに限らず、やけどの正しい対処法とは、『やけどした直後にまず十分冷やすこと』です。
その後、やけど跡に水ぶくれができ、白くなったり、ひどいとヤケド跡がえぐれることがあります。
ヤケド跡が深い場合は、市販の薬だけでなく、感染対策を目的として、医療機関できちんとした薬を使っていくことが大切です。
結論:『水ぶくれのあるやけど』治療は『保湿』が大切
- 保湿
- 抗生物質
- スプレー製剤(フィブラストスプレー)
『水ぶくれがあるやけど』の治療は、保湿が基本です。
保湿の方法は、ワセリン成分の入った軟膏が推奨されています。
しっかり保湿ができるように、やけど部分にゲンタシン軟膏などの『ワセリン入り軟膏』をたっぷり塗ります。
『初期段階のやけど』では、ステロイドの塗り薬(リンデロンVG軟膏・リンデロンV軟膏)を使う場合もあります。
水ぶくれがあるやけどは、『Ⅱ度熱傷』と言います。
水ぶくれのやけどの治療│熱傷ガイドライン
Ⅱ度熱傷に推奨される治療:
- 湿潤環境維持を目的にワセリン軟膏基剤を基本
- 熱傷の広さ・深さの状況により主剤(抗生物質,ステロイドなど)を選択
- bFGF 製剤(フィブラストスプレー)の併用
熱傷診療ガイドライン 改定第2版, p47
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やけど処置で使われる軟膏リスト
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- ゲンタシン軟膏
- フシジンレオ軟膏
- リンデロンV軟膏
- ゲーベンクリーム
- ユーパスタ軟膏
やけど処置では、いろいろな軟膏が使われます。
『水ぶくれのやけど』では、ガイドラインではワセリンが入った軟膏が推奨されていますが、実際はゲンタシン軟膏が処方される例は多いです。
『水ぶくれ以上のひどいやけど』では、昔からある抗生剤軟膏の『ゲーベンクリーム』がよく使われます。
ゲンタシン軟膏は、自分で処置するときに使いやすい
浅達性Ⅱ度熱傷の治療:
抗菌剤軟膏(ゲンタシン軟膏、フシジンレオ軟膏など)を用いる.
創面を保護するため油脂性基剤の軟膏を使用する際、小分けにしてあり自己処置でも使いやすいため(抗菌作用を期待しているわけではない ).
受傷当日は, 疼痛緩和のためステロイド軟膏(リンデロンV軟膏など)を使用することもある.
岸邊, われわれの行っている熱傷局所療法, 形成外科 63(12): 1513-1518, 2020
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フィブラストスプレーの正しい使い方│5の法則
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やけど部分から、約5cm 離し、スプレーを 5プッシュする
フィブラストスプレーは、やけど部分から『5』センチ離して、『5』プッシュします。
やけど部分が広い場合は、全体に5プッシュずつ行き渡るようにふりかけます。
『広いやけど』は、直径6cm以上のものを言います。
噴霧した後は、30秒待って、ガーゼまたはフィルムで覆います。
フィブラストスプレーの使い方
1日1回、潰瘍面から約5cm離して5噴霧(トラフェルミン30μg)する.
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フィブラストスプレーを使えない人│『がん』がある人
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『がん』があると、フィブラストスプレーが使えません
フィブラストスプレーは、『がん』『悪性腫瘍』があると使えません。
フィブラストスプレーは、細胞分裂を促進して傷の治りを早くするスプレーなので、ガン細胞の細胞分裂も促進され、ガンが大きくなってしまいます。
フィブラストスプレーで、ガンが悪化する可能性がありますフィブラストスプレー添付文書(取説)では、『ガンがあってもメリットが大きければ使用可能』と解釈できる内容が記載されていますが、できれば使わない方が無難です。
もし使用する場合は、主治医の先生とよく相談し、使用期間を最小限にとどめるのが良いです。
フィブラストスプレーは、『がん』があると使えない
投与部位以外に悪性腫瘍のある患者又はその既往歴のある患者への適応に当たっては、(中略)治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.
結論:水ぶくれは『自分で潰さない』が正解
火傷でできた水ぶくれは、潰さない方が良いです。
水ぶくれを潰さない方が良い理由は、『水ぶくれの中には、傷を治す物質がたくさん含まれているから』です。
しかし、水ぶくれを積極的に潰した方が良い場合もあります。
水ぶくれを潰した方が良い場合
- 水ぶくれが痛みの原因になっているとき
- 水ぶくれがこすれて、大きくめくれそうなとき
水ぶくれが痛みの原因になっている場合は、積極的に水を抜いた方が良いです。
また、そのまま保護しておいても、水ぶくれがこすれて大きく皮がめくれてしまうときもあります。
その場合は、皮膚の下の大切な組織が大きく露出してしまうことになり、衛生的に良くありません。
これらの場合は、医療機関(病院・クリニック)で、清潔な環境の元、細い針で水を抜いてもらうのが最善であり、早く、キレイに傷が治るコツです。
低温やけどの対処│冬の湯たんぽ
湯たんぽでの低温やけどは、意外と重症で、治癒までに数ヶ月かかることもあります。
その間に、壊死組織を切除する手術と、植皮の手術が必要になったりすることも多いです。
湯たんぽは、小さいながらも、『水ぶくれ以上の重症やけど』である『Ⅲ度熱傷』になりがちです。
Ⅲ度熱傷は、見た目はそれほどひどくなくても、『やけど部分の痛みを感じなくなる』という特徴があります。
『痛みを感じない部分が出る程のやけど』は、真ん中が黒く変色し、壊死するため、壊死部分の切除をしないと最後まで治癒しません。
壊死組織であっても、皮膚の一部を切除することに抵抗がある人もいます。
そのような場合は、ゲーベンクリームやブロメライン軟膏で、壊死した部分を溶かします。
やけどの治療は、深さによって決まる
- 壊死(えし)した組織を切り取る
- 塗り薬(ゲーベンクリーム・プロスタンディン軟膏)
- スプレー(フィブラスト・スプレー)
- 皮膚を移植する手術(植皮)
『水ぶくれ以上のひどいやけど』は、まず壊死(えし)した黒い部分を切り取るところから治療を始めます。
次に感染治療として、ゲーベンクリームを塗布するのがガイドラインに準じた治療となります。
深くえぐれた潰瘍部分にはフィブラストスプレーを使用し、それでも治癒しない場合は、植皮の手術をします。
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『ひどいやけど』の塗り薬処置は、『ゲーベンクリーム』
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ひどいやけどの処置は、ゲーベンクリームが推奨されています
皮膚がベロっとむけたⅢ度熱傷(ひどいやけど)には、ゲーベンクリームが推奨されています。
ゲーベンクリームは、緑膿菌感染に特に有効です。
ゲーベンクリームの他には、『ブロメライン軟膏』『ソルコセリル軟膏』も、効果があるとされています。
ひどい熱傷(やけど)には、ゲーベンクリームを推奨│熱傷ガイドライン
広範囲Ⅲ度熱傷に対する感染予防目的には,Silver Sulfadiazine クリーム(ゲーベンクリーム)が推奨される.
熱傷診療ガイドライン 改定第2版, p45
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ゲーベンの副作用は『白血球減少』
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ゲーベンクリームは、『白血球減少』の副作用に注意です
ゲーベンクリームは、白血球が減少することがあります。
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『深くえぐれたやけど』には、『フィブラストスプレー』
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『えぐれたやけど』には、スプレーが特に効きます
やけどの治療には、皮膚の再生を促進させるフィブラストスプレーがよく効きます。
一般には、やけど治療は、傷の治りが早くなるパッドを薬局で買って貼ったりします。
病院やクリニックに受診すると、塗り薬と飲み薬を処方されたりしますが、病院では、皮膚の再生を促すこのスプレー製剤を使います。
このスプレーは、『成長因子(せいちょう・いんし)』が豊富に含まれており、細胞を増やします。
『がん』がある人にフィブラストスプレーを使用すると、『がん』が大きく育ってしまうため、がんの人には使えません。
えぐれたヤケドは、市販のパッドで覆ってはいけない
皮膚がえぐれるようなひどいやけどには、パッド製剤を当ててはいけません。
えぐれる程のヤケドは、感染のリスクが非常に高いため、傷を覆うことで逆にバイ菌が繁殖しやすくなってしまいます。
まとめ:やけどの治療は、選択肢が豊富
やけどの治療は選択肢が豊富です。
研究データが少ない中での治療のガイドラインなので、医療者側の経験で治療していく場合も多いです。
最後は、植皮の手術になりますが、その前にきちんと処置を受けて治しましょう。