頸部ジストニア(痙性斜頸)とは
頸部ジストニア(けいぶ・じすとにあ)は、痙性斜頸(けいせい・しゃけい)とも呼ばれ、『無意識に首が横に傾いてしまう病気』です。
この病気は、この病気は大脳の基底核(きていかく)に、異常が原因と言われていますが、脳のMRIでは診断できないことが多く、症状で診断します。
ジストニアには、いろいろな種類があり、有名なものでは、まぶたがピクピクする『眼瞼(がんけん)けいれん)』という病気があります。
いずれのジストニアも治療は似ています。
ジストニアの意味
ジストニアは、無意識で、ある種の動きをしてしまうことです。
『きっかけになる何らかの動作』があることが多いです。
ジストニアの種類
- 眼瞼けいれん(まぶたのけいれん)
- 音楽家ジストニア
- 書痙(しょけい)
- 痙性斜頸(頸部ジストニア)
- 薬剤性ジストニア
- 遺伝性ジストニア
まぶたの痙攣である『眼瞼けいれん』は、非常にありふれた病気です。少し疲れただけでも症状が出ます。
音楽家ジストニアは、楽器を演奏しているときだけ手が特定の動きをしてしまいます。食事をしていたり、字を書いているときには症状が出ません。
書痙(しょけい)は、字を書くときのみ症状が出るジストニアです。
薬剤性ジストニアは、精神科の薬を突然やめると起こるジストニアです。その場合は、また元の量に一旦戻してから、ゆっくり減量していきます。
遺伝性ジストニアは、家族で似た症状の人がいるはずです。遺伝子診断してDYT5(瀬川病)であれば、パーキンソン病と同じ薬(マドパー)が効きます。
頸部ジストニアの診断
首を横に傾いたままだったりする場合は、頸部ジストニア(痙性斜頸)の可能性が高いです。
その場合は、脳のMRIを撮影し、他に病気がないか、確認します。
どの部位のジストニアも、特別な診断方法はなく、病歴(今までの経緯)でジストニアを疑い、その他の病気を除外すれば、ジストニアの診断、という流れになります。
頸部ジストニアの治療
- リハビリ(生活指導)
- ストレスの回避
- 薬
- ボトックス治療
- 手術
ジストニアの治療は、リハビリが大きいです。ただし、動かしすぎるとジストニアは悪化するので、適度な安静を取り入れるという生活指導が主体です。
また、薬で動きをなめらかにするようにサポートします。
薬が効きにくく、無意識にどうしても力が入ってしまう場合は、その筋肉にボトックス注射を行います。
あまりにも治療が難しい場合は、大学病院の脳神経外科で手術を行います。
『ストレスから逃げること』が重要
職場環境で上司・部下・同僚・取引先からのストレスがあると、ジストニアは悪化することが知られています。
無理は禁物ですが、もちろんすぐに転職はできませんので、可能な範囲内での配置変更が望まれます。
タバコを吸うとジストニアは悪化する
タバコを吸うと、ジストニアは悪化することが知られています。
ですので、『薬は飲みたくないけどジストニアは治したい』という人は、まず禁煙治療をします。
職場ストレスと喫煙は、ジストニアの原因になる
職業上の同一動作の繰り返しや職場ストレスなどはジストニア発症の原因になり、喫煙もニコチンが増悪因子になるため、職場異動や禁煙も治療効果がある.
武内, ジストニア診療ガイドライン2018, 日本医事新報 (4975): 24-26, 2019
ジストニアの薬は2種類
- クロナゼパム(リボトリール・ランドセン)
- トリヘキシフェニジル(アーテン)
ジストニアは多い病気ですが、薬は主に、①リボトリール、②アーテンの2種類しかありません。
どちらかが効くことが多いのですが、どちらも効かない場合は、ボトックス治療を提案していきます。
ジストニアのボトックス治療
頸部ジストニア(痙性斜頸)のボトックスは、比較的多めの量を打ちます。
ですので、ボトックスに慣れた専門の先生に打ってもらった方が無難です。
ボトックスの量(美容ボトックスとの比較)
ボトックスの量は、まぶたや顔面けいれんでは、10単位くらいを打ちます。
顔のシワへの美容ボトックスも、10単位くらいを打ちます。
わき汗ボトックスや、エラボトックスは、100単位を打ちます。
頸部ジストニアは、240単位を打ちます。
脳卒中などで、手足がカチカチに麻痺した場合は、400単位を打ちます。
ジストニアの手術は『脳に電極を埋め込む』
ジストニアの手術は、脳に電極を埋め込む手術です。
愛知県では、名古屋大学医学部附属病院、名古屋セントラル病院、などで行っています。
- とても困っている
- 若い(小児または若年)
- 全身性
- 薬が効かない
特に、全身性のジストニアが、小児期や若い時期に発病して、薬が効きにくいときは、手術を行う適応となります。
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ジストニアのDBS手術│医師向け内容
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ジストニアに対する手術は、淡蒼球内節を狙った GPi-DBS が行われます
ジストニアに対する手術は、GPi-DBS が行われます。
全身性の場合は、両側のGPi-DBSを選択します。
症状は、50-60%が改善されるという内容が、ランセットという有名な医学雑誌に報告されました。
ジストニア手術は、症状改善率50-60%
一次性全身性ジストニアに対するGPi-DBSの成績
- 追跡期間:3年間
- 症状改善率:50-60%
Vidailhet M, Bilateral, pallidal, deep-brain stimulation in primary generalised dystonia:a prospective 3 year follow-up study. Lancet Neurol 6: 223-229, 2007