現在、新型コロナウィルス(COVID-19)とインフルエンザの検査は、両方同時にやるべきだとされています。
2020年冬から2021年にかけて、自分や家族が発熱した場合は、コロナかインフルエンザか、検査するまではわかりません。
現在は、主な感染経路は、家庭内感染とも言われています。
厚労省からは、感染拡大を防ぐためにも、コロナとインフルエンザの同時検査が推奨されています。
2020年11月、新型コロナウィルス感染症(COVID19)は流行の第3波を迎えました。 感染者であっても感染初期は無症状であるため、その間(発症2日前)に接触があった方は、濃厚接触者となります。 当然、濃厚接触者も感染初期は無[…]
結論:コロナ(COVID-19)とインフルエンザの検査を同時に行うことを推奨
現在は、インフルエンザ流行期に発熱した場合は、新型コロナウィルス検査と、インフルエンザ検査を同時に行うことが望ましいとされています。
コロナとインフルエンザの検査を両方同時に行うことが望ましい
インフルエンザが強く疑われる場合を除いて、可及的に季節性インフルエンザとCOVID-19の両方の検査を行うことを推奨.
厚労省新型コロナウィルス感染対策推進部 事務連絡(令和2年10月2日)
インフルエンザの検査は、鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査が主流です。
新型コロナウィルス検査は、主に、鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査とPCR検査に加えて、唾液によるPCR検査が多いです。
最近では、鼻咽頭ぬぐい液検査での感染拡大への懸念から、鼻腔ぬぐい液検査も追加されました。
鼻咽頭ぬぐい液検査とは、『鼻の穴へ綿棒を入れる検査』です。
新型コロナウィルス(COVID-19)の検査方法
新型コロナウィルス(COVID-19)の検査 | |||
検査種類 | PCR検査 | 抗原検査(定性) | |
検体 | 鼻腔 | 唾液 | 鼻腔 |
発症9日以内 | ○ | ○ | ○ |
発症10日目以降 | ○ | × | △ |
無症状者 | × | ○ | × |
COVID-19病原体検査の指針(第2版)より改変
唾液PCR検査は、発症から10日目以降の方には推奨されていません。
また、無症状者に対しては、鼻腔の検査は、PCRも抗原検査も推奨されていません。
しかし、無症状の方には、唾液PCR検査は適応となります。
- 無症状の濃厚接触者には、唾液PCR検査を行う
抗原検査の結果とPCR検査の結果は必ずしも一致しない
- 抗原検査よりも、PCR検査の方が、信頼性が高い
抗原検査よりも、PCR検査の方が、信頼性が高い検査となります。
検査キット毎に差はありますが、抗原検査キットの結果とPCR検査の結果の一致率は、全体として約6割程度と言われています。
唾液(だえき)検査の注意点
唾液検査をうがい直後に行うと、ウィルスが検出できなくなる場合があります。
10分から30分程度は、うがいをせずに検査した方が質の良い検査ができます。
唾液検査の前の10分間は、飲み物を飲まないように
飲食や歯磨き、うがいの直後はの唾液採取は、ウィルスの検出に影響を与える可能性があり、避けるべきである.
最低10分以上、できれば30分ほど空けることが望ましい。
COVID-19病原体検査の指針(第2版)
-
『抗原検査』は、症状が出た初日から実施するべき
-
抗原検査は、症状が出た日から、積極的に行うことが一般的です
抗原定性検査は、症状が出た初日から有効です。
初日に抗原定性が陽性の結果であれば、コロナ感染の確定診断になります。
抗原定性検査は、発症初日から行う
抗原定性検査は、発症初日から9日目の有症状者の確定診断に用いられる.
COVID-19病原体検査の指針(第3版)
-
1回のPCR検査だけは、『絶対に感染していない』とは言い切れない
-
1回の検査結果が真に陰性であっても感染を否定できない
PCR検査が陰性だったとしても、1回だけの検査であれば、2回目は陽性になることも十分あり得ます。
検査結果の解釈は難しく、個別対応が必要です。
1回のPCR検査だけでは『感染していない』と言い切れない
1回の検査結果が真に陰性であっても感染を否定するものではないため、検査結果を隔離解除等の参考にする場合には慎重であるべきである.
COVID-19病原体検査の指針(第3版)
インフルエンザの検査方法
インフルエンザの検査 | ||
検査種類 | 抗原検査(定性) | |
検体 | 鼻腔ぬぐい液 | 鼻かみ液 |
COVID-19病原体検査の指針(第2版)より改変
日常的に、医療機関で行われるインフルエンザの検査は、『鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査(定性)』です。
2020年より、検体採取の方法が見直され、『鼻咽頭ぬぐい液』から、『鼻腔ぬぐい液』と『鼻かみ液』が追加されています。
鼻から綿棒を入れる検査は2種類ある
『鼻から綿棒を入れる検査』には、深さによって、鼻咽頭(び・いんとう)ぬぐい液と、鼻腔(びくう)ぬぐい液があります。
- 鼻咽頭ぬぐい液・・・鼻から綿棒を深く入れる
- 鼻腔ぬぐい液・・・鼻から綿棒を深く入れる
-
鼻咽頭ぬぐい液の検査
- 鼻から綿棒を入れて、喉の奥の検体を採取する検査です。
綿棒を挿入する深さは、成人では約10センチ、小児では約5センチ程度が目安です。
-
鼻腔ぬぐい液の検査
- 鼻から綿棒を約2センチ入れて、鼻の手前の方から検体を採取する検査です。
挿入後にスワブ(綿棒)を5回程度回転させ、十分に湿らせる方が良いです。
鼻腔ぬぐい液は、検出感度は鼻咽頭ぬぐい液と比較するとやや低いとの報告があり、引き続き検討が必要であるものの、実用性と医療者の感染予防の面から有用な検査である
COVID-19病原体検査の指針(第2版)
鼻咽頭ぬぐい液は、感染拡大の面からはややリスクあり
初診時には、コロナかインフルエンザかわからないため、インフルエンザの鼻咽頭ぬぐい液検査でも、検査行為自体が感染拡大の観点からはリスクがないとは言えません。
濃厚接触者への検査はどれが良い?
『濃厚接触者が現在感染しているか?』を調べる場合、PCR検査が良いです。
PCR検査以外は検査の意義は低いと思われます。
特に、抗原検査は検査の意義が乏しいとされています。
抗原定性検査は、(濃厚接触のあった)無症状者への検査は適さない
COVID-19病原体検査の指針(第2版)
また、一般に無症状者に対するPCR検査は自費診療となります。
コロナ検査は、検査時間が短縮された
- PCR検査は、約1日で結果が出る
現在、コロナ検査は、PCR検査であっても、1日程度で検査結果が出ます。
抗原検査であれば、数十分で検査結果が出ます。
以前のPCR検査は、半日程度を要していました。
各種検査法の実施時間
- リアルタイムPCR・・2~4時間
- LAMP法・・1時間
- 抗原定性・・40分
COVID-19病原体検査の指針(第3版)
抗体検査の意義
- 抗体検査では『今、感染しているかどうか?』はわからない
抗体検査は、『過去に感染した事があるかどうかを調べる検査』です。
抗体検査は『現在、感染しているかどうか?』については調べられません。
『現在、COVID-19に感染にしているかどうか?』を調べる検査は、PCR検査と抗原検査のみです。
『抗体検査』では『今、感染しているか?』はわからない
抗体検査はウィルスを検出する検査ではなく、ウィルスに対する抗体の有無を調べる検査である.
抗体検査が陽性となる時期は症状出現後、1~3週間経ってから陽性となることが知られている.
COVID-19病原体検査の指針(第2版)
新型コロナウィルスが変異すると、PCRの判定ができない
コロナウィルスが変異していると、従来のコロナウィルスのPCR検査が正しく判定できなくなります。
これは、『変異したコロナウィルス』は、PCR検査をすり抜けてしまうからです。
つまり、『PCR検査が陰性』でも、本当は感染しているかもしれません(これを偽陰性と言います)。
新型コロナウィルス(SRAS-CoV-2)は、世界中で遺伝子変異が報告されています。
PCR偽陰性を防ぐための工夫は?
PCR偽陰性を防ぐためには、変異したウィルス(変異株)をターゲットに含めた、『網羅的なPCR検査』をする必要があります。
また、PCR検査の結果だけ判断せずに、患者さんの病歴や症状や周りの変異株の情報を組み合わせて判断することが望ましいです。
新型コロナウィルス変異株の感染を正しく判定するために
- 偽陰性の可能性を常に考慮する
- 複数の遺伝子増幅ターゲットを使って判定する
- PCR検査の結果だけでなく、患者情報・疫学情報を含めて検討する
- 別の遺伝子を標的とするPCR検査で再検査する
FDAホームページ, Genetic Variants of SARS-CoV-2 May Lead to False Negative Results with Molecular Tests for Detection of SARS-CoV-2-Letter to Clinical Laboratory Staff and Health Care Providers
新型コロナウィルスの変異株
- 英国型
- 南アフリカ型
- ブラジル型
日本国内では、英国型、南アフリカ型、ブラジル型の変異株が見つかっています。
今後は、これらの変異株を標的に含めたPCR検査が行われる必要があります。
現在、英国型の変異株を含めたPCR検査は、BML社が行っています。
BML社は、当院でも採用している検査会社であり、英国型の変異株まで含めたPCR検査が可能です。