2020年11月、新型コロナウィルス感染症(COVID19)は流行の第3波を迎えました。
感染者であっても感染初期は無症状であるため、その間(発症2日前)に接触があった方は、濃厚接触者となります。
当然、濃厚接触者も感染初期は無症状であるため、その間にさらにいろいろな人と接触してしまいます。
みなさんそれぞれの生活や家庭があるため、国民ほぼ全員が、『濃厚接触者の濃厚接触者』となります。
無症状な人が知らぬ間に周りに感染させてしまうことは大変怖いことです。
正しい予防の知識、正しいイメージを持って、可能な限り、感染を予防していきましょう。
現在、新型コロナウィルス(COVID-19)とインフルエンザの検査は、両方同時にやるべきだとされています。 2020年冬から2021年にかけて、自分や家族が発熱した場合は、コロナかインフルエンザか、検査するまではわかりません。 […]
『濃厚接触者』の定義
- 感染者と1メートル以内で15分一緒にいたら濃厚接触者
- 感染者の唾液(だえき)を素手で触れてしまったら濃厚接触者
『濃厚接触者の濃厚接触者』の定義
そもそも、感染者が症状を発症してから、後から『自分は濃厚接触者だったんだ』とわかります。
つまり、誰が濃厚接触者かわからない状態であれば、感染者の多い密集地帯では、ほぼすべての人が、『濃厚接触者の濃厚接触者』になってしまうかもしれません。
マスクなどの自己防衛、または、接触確認アプリ『COCOA』を上手に利用していく他、有効な手段はありません。
COCOAは、発症してPCR検査した後に感染者が登録すると、今まで移動した導線にいた人たちのスマートフォンに通知がいくシステムです。
新型コロナウィルスの予防
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家族内の感染が多い
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コロナウィルスは自宅で感染しやすい
韓国のデータからは、家族内の感染は、家族以外からの感染に比べて数倍多いです。
家庭内であっても、マスク着用・手洗いが大切となります。
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マスクの傷口からもコロナウィルスは感染
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コロナウィルスは皮膚の傷口から侵入する
マスクなどで耳の後ろがこすれて傷になったりすると、傷口からコロナウィルスが侵入し、感染しやすいことが知られています。
マスクを長期間している場合、皮膚がすりむけてないか、定期的にチェックしておきましょう。
また、指の傷などがあれば皮膚保護剤を使用した方が、COVID19の感染が防げると、マレーシアからの研究報告があります。
マスクなどの医療防護具でケガ(傷)がある場合、皮膚保護剤を塗布することは、COVID19の感染予防につながる.
A.Gefen; Prevention of skin damage caused by the protective equipment used to mitigate COVID-19: J Wound Care. 2020 Jun 2;29(6):311.
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家族がコロナだった時の食器はどうする?
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食器を分ける必要はありません
コロナ患者さんだからといって、食器を分ける必要はありません。
洗剤で洗い、熱水で消毒し、よく乾燥させれば特に問題ありません。
患者が使用した食器類は、必ずしも他の患者と分ける必要はなく、中性洗剤による洗浄に加え、80度5分以上の熱水による消毒を行った後、よく乾燥させる.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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コロナの遺体は慎重に扱う
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十分な防御をした医療従事者が、遺体を密閉する
コロナ患者さんの遺体は、残念ですが、感染源となり得ます。
ケアを行う医療従事者は感染防御して、遺体をきちんと密閉します。
故人の尊厳、家族の心証に十分配慮することが必要です。
遺体は、体外へ体液がもれないように処置し、全体を覆う非透過性納体袋に収容・密封することが望ましい.
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COCOAをインストール
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接触確認アプリ(COCOA)で陽性者との接触の知ることができる
日本政府が作った接触確認アプリ(COCOA)は、スマートフォンのBluetoothを使って、COVID19陽性と診断された人との接触を、後から通知してくれるアプリです。
COCOAはプライバシーに配慮されたスマートフォンアプリです。
メールアドレス、電話番号などの登録は一切不要です。
COCOAで通知を受けても、濃厚接触者とはなりませんので、あくまでも参考とのことです。
新型コロナウィルスの最新情報
医療機関において、新型コロナウィルスの対策は、厚生労働省が発行する『新型コロナウィルス感染症(COVID19)診療の手引き』を元に、診療しています。
一般には出回らないですが、医療機関に配布されます。
世界が大変な事態になっている感染症ですので、ぜひみなさんと知識をシェアしたいと思います。
症状
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新型コロナウィルスの症状
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- 発熱
- 咳
- だるさ
下痢は約1割に見られます。
味覚障害(味がしない)、嗅覚障害(においがしない)は、海外よりも少ないとのことです。
また皮膚に赤いブツブツができることもあります。
合わせて読みたいコロナ皮膚新型コロナウィルスを発症すると皮膚の症状が出ることがあります。 新型コロナウィルスの皮膚炎のパターンは、赤い小さなブツブツ、しもやけ、じんましん、などです。 重症になると、『赤い網目模様の皮膚炎の症状』が出ます。 新型コロ[…]
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コロナは皮膚症状・じんましんが出る
- コロナウィルスは皮膚炎も起こすことが知られています。
主に、赤いブツブツ・じんましん、などが出ます。
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潜伏期間
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潜伏期は、14日間
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発症までの日数
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濃厚接触から5日目に発症することが多い濃厚接触から発症までの間は無症状です。つまり、その間に他の人にうつしてしまう可能性があるのです。しかも、濃厚接触から発症までの間の感染力が、他のウィルスに比べて強いことが、感染拡大の大きな理由です。発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており、SARSやMERSと異なる特徴である.新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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入院までの日数
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発症7日目に入院となることが多い
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重症になりやすい人・なりにくい人
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高齢者・妊婦・基礎疾患のある方は、重症になりやすい子どもは軽症のとどまることが多い
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妊婦は重症化しやすい
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妊婦の方が重症になりやすいということが報告された
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子どもは軽症
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子どもは軽症で済むことが多い
子どもが新型コロナウィルス(COVID19)に感染しても、軽症で済むことが多いです。
これはイタリアでも同様で、小児の方が軽症で済むことが多いとのデータが出ています。
2020年10月14日の時点では、日本国内の20歳未満の感染者の死亡例の報告は1例もありません。
後遺症
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コロナの後遺症:嗅覚障害(においの障害)
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日本では、嗅覚障害(においがしない)の後遺症が多い
味覚障害、嗅覚障害の後遺症は、海外よりも少ないという報告があります。
日本で回復者63人の電話調査では、発症60日後にも、
- 嗅覚障害(19.4%)
- 呼吸困難(17.5%)
- 倦怠感(15.9%)
- 咳(7.9%)
- 味覚障害(4.8%)
を認めた.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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コロナの後遺症で毛が抜ける│脱毛
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コロナの後遺症では、脱毛も多い
コロナウィルスの2割に脱毛の後遺症が認めれています。
脱毛は2ヶ月程度、継続します。
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皮膚の後遺症は白人に多い
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多彩な皮膚所見は白人に多いと報告がある.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
コロナウィルスによる皮膚症状は、イタリアの皮膚科医が発見しました。
合わせて読みたいコロナ皮膚新型コロナウィルスを発症すると皮膚の症状が出ることがあります。 新型コロナウィルスの皮膚炎のパターンは、赤い小さなブツブツ、しもやけ、じんましん、などです。 重症になると、『赤い網目模様の皮膚炎の症状』が出ます。 新型コロ[…]
検査
検査の方法は、現在は一般のクリニックでも、PCR検査が主流です。
治療
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日本で使えるコロナの薬(承認済み)
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- レムデジビル
- デキサメタゾン(ステロイド)
レムデジビルは、『重症だと無効』ですが、『早めに使えば効く薬かもしれない』と認識されています。
レムデジビルは、各国の研究データ毎に結果が違います。
また、デキサメタゾンは、古くから炎症を抑える目的でいろいろな病気で使われているステロイド薬です。
COVID19には、その炎症を抑えることで、効果を発揮すると言われています。
英国での研究では、デキサメタゾンの投与を受けた患者は、標準治療を受けた患者と比較して致死率が減少した.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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日本で使えるコロナの薬(未承認)
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- トシリズマブ(アクテムラ)
- ファビピラビル(アビガン)
トシリズマブ(アクテムラ)は、もともとリウマチの薬です。
イタリアで行われたトシリズマブを使った研究では、酸素が必要なくらいのコロナ患者には、あまり効果はありませんでした。
ファビピラビルは、もともとインフルエンザの薬です。
藤田医科大学で行われたファビピラビルを使った研究では、無症状や軽症なコロナ患者には、少し効果があるのではないか、という結果でした。
酸素投与が必要な中等症のCOVID19患者にトシリズマブとプラセボを比較した試験で、人工呼吸管理の回避や死亡に有意差はみられなかった.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
無症状または軽症のCOVID19患者に、ファビピラビルとプラセボを比較した試験で、有意差はなかったものの、早期のPCR陰性化、解熱傾向が見られた.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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レムデジビルは効く?効かない?
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レムデジビルは、早めに使うと効く
レムデジビルは、『効く』というデータと、『効かない』というデータがあります。
中国でのデータは『効かない』、米国のデータは『効く』、というデータになっています。
現在では、『レムデジビルは早めに使うと効く』という認識が広まっています。
日本の多くの医師が参考にしている厚労省の作成したマニュアルでも、『早めに使えば効く』という認識です。
- 中国での重症COVID19患者では、死亡・臨床的改善に有意差はなかった.
- 多国間医師主導治験(米国NIH)では、臨床的改善までの期間が、15日から10日に短縮された.
- すでに人工呼吸管理が必要となった重症例に対しては効果が期待できず、酸素投与が必要な症例に速やかに投与することで効果がある可能性が残されている.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版
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『効くかも?』と言われているその他の薬
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- アドレノメデュリン
- イベルメクチン
- サリルマブ
- シクレソニド
- ナファモスタット
- ネルフィナビル
- バリシチニブ
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『実は効かない?』と言われている薬
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- レムデジビル
- ヒドロキシクロロキン(マラリアの薬)
- インターフェロン(ウィルスの薬)
- イオビナビル・リトナビル(エイズの薬)
レムデシビル、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」、抗ウイルス薬「インターフェロン」、エイズ治療に使われる「イオピナビル」と「リトナビル」の4つについて、WHOが関与してきた大規模な臨床試験から、いずれの治療薬も患者の生存率や入院日数に大きな影響を与えないことを結論付けるデータが得られたと発表しました。
レムデジビルについては、重症の状態になってからだとあまり効かないですが、早めに使うと効果があるかもしれない、と言われています。
レムデジビルは、欧州・米国ともに承認されています。
レムデシビル、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」、抗ウイルス薬「インターフェロン」、エイズ治療に使われる「イオピナビル」と「リトナビル」は、患者の生存率や入院日数に大きな影響を与えない.
WHO Solidarity trial consortium, NEJM, Posted October 15, 2020.
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症状が軽ければステロイド薬は不要
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現時点では、軽症の患者さんにはステロイド薬は不要と考えられています日本で承認されているステロイド薬は、『デキサメタゾン』です。
現時点では、酸素投与が必要ない患者では、ステロイド薬を使用するべきではない.
ただし、継続中のステロイド薬を中止する必要はない.
中等症であれば、ステロイド使用で予後改善が認めれるため、強く推奨されている.
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コロナ回復者の血漿・グロブリン製剤
- 新型コロナウィルス感染症から回復した人の血液の成分を点滴する方法です。
中国で行われた研究では、中等症患者では臨床症状の期間短縮がみられた.
米国では緊急承認となっているが、有効性・安全性についてはまだ十分に検証されていない.
新型コロナウィルス診療の手引き 第4版