【健康で長生きするために】糖尿病の専門的な薬物治療│豊橋の糖尿病内科

糖尿病の治療は、食事療法・運動療法が基本です。

しかし、それでもHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が高い場合は、薬を飲むことになります。

それでも糖尿病がコントロール不良の人は、注射を導入します。

注射には、以前はインスリンが中心でしたが、今ではインスリン以外の注射薬も広く使われています。

 

糖尿病の薬物治療│飲み薬・注射・インスリン

糖尿病の薬をどの順で使うかは、だいたい決まっています。

糖尿病の治療で、まずはじめに使われる薬は、下記のいずれかです。

 

  • メトホルミン(メトグルコ)
  • SGLT2阻害薬
  • DPP-4阻害薬

 

最初の薬を飲み続けても、まだ糖尿病が制御しきれないときは、残りの2剤を順に使っていきます。

それでも、糖尿病が進行する場合は、注射薬や、その他の飲み薬を併用していきます。

重度の糖尿病や、合併症が進行している場合は、インスリンの注射を導入します。

 

各医療機関ごとに薬物治療の方針は違います。

当院では、初回は、フォシーガ・ジャディアンスなどのSGLT2阻害薬または、リベルサス(やせる糖尿病薬)を導入します。

それでも血糖・A1cが下がらない場合は、メトホルミン(メトグルコ)を追加します。

治療コストを気にされる場合は、比較的安価なメトホルミンから導入します。

 

自宅での血糖測定(1日3-4回の測定または24時間持続測定)を行い、食後高血糖の要素が強い場合は、シュアポストを加えます。

 

それでも血糖コントロールが不良の場合は、注射薬を導入します。

注射薬には、週1回、毎日1回、毎日3-4回、の注射があります。

まずは、インスリンではない週1回製剤または毎日1回製剤を導入することが多いです。

それでも血糖値が落ち着かなかったり、手術が控えていたりする人には、インスリンへ切り替えを勧めます

インスリン製剤は、1日1回打つだけの場合もありますし、1日4回打つ人もいます

 

  • 24時間測定(10-14日間)  約4000円
  • 1日3-4回測定(約1週間) 約2000円

自宅での血糖測定は、24時間測定であれば、約4000円(3割負担の額)で実施できます。

1日3-4回の血糖測定は、約2000円(3割負担の額)で実施できます。

 

腎臓が悪いときに使う薬│フォシーガ・ジャディアンス・SGLT2阻害薬

腎臓が悪いときに、それ以上の腎機能の悪化を防ぐ薬が、SGLT2阻害薬(フォシーガなど)です。

これらの薬には、腎臓の機能がかなり落ちていても、残った腎臓の機能を守る力があります。

フォシーガ(SGLT2阻害薬)は、stage4の慢性腎臓病でも腎保護作用がある

eGFR 25-30 mL/minであったも、フォシーガの腎保護作用はある.

Effects of Dapagliflozin in Stage 4 Chronic Kidney Disease, J Am Soc Nephrol. 2021 Sep;32(9):2352-2361

 

ステロイド糖尿病│プレドニゾロン長期内服の副作用

ステロイド(プレドニゾロン)を長期に飲み続けると、糖尿病になります。

その場合の治療は、2つあります。

  1. ステロイドを中止する
  2. 薬物治療(糖尿病薬、インスリン)

ステロイドを中止できるのであればそれが最善の治療です。

しかし、実際は『ステロイドを中止することはできない難しい病気』でステロイドを長期に渡り飲んでいます。

ですので、ステロイド糖尿病の場合は、糖尿病薬やインスリンを使用してコントロールすることになります。

 

血糖値 150-200 mg/dL の人がプレドニゾロン10mg を飲むと、30分後に血糖値が300-400mg/dLに上がります

プレドニゾロン20mgを飲むと、その30分後には一時的に血糖値 500mg/dLを示す人もいます。

 

リアルタイムに『今の血糖値』を知る方法│CGM・リブレ・G7

血糖値を持続的に計測する腕に取り付ける装置』が病院でお渡しできます。

この装置を、『CGM(=Continuous Glucose Monitoring:持続グルコースモニタリング)』と言います。

インスリン導入時に CGM をお渡しして腕に取り付けることがあります。

 

CGMの注意点

  • リブレは1枚14日間、G7は1枚10日間 計測可能です
  • MRI 撮影時は、外して頂きます

 

メトホルミン(ビグアナイド系)

メトホルミンは(メトグルコ)は、安価でコスパ良いため、1番最初に処方されることが多い薬です。

欧州・米国では第1選択薬となっています。

日本では、メトホルミンは第1選択薬にはなっておらず、個人の事情に合わせた処方が推奨されています。

1日の合計使用量は、750-1500mg が多いです。

腎機能が悪すぎると使えないため、血液チェックと量の調整が必要です

  • eGFR 60以上 ⇛ 2250mg(毎食後750mgずつ)
  • eGFR 45以上 ⇛ 1500mg(毎食後500mgずつ)
  • eGFR 30以上 ⇛ 750mg(毎食後250mgずつ)
  • eGFR 30未満 ⇛ 禁忌

副作用は、胃のむかつき・嘔吐・下痢などの消化器症状が多いです。

重度の副作用として、乳酸が身体の中に溜まってしまう『乳酸アシドーシス』があります。

乳酸アシドーシスになると、ひどい体調不良、全身倦怠感、嘔吐、下痢、などの『ひどい胃腸かぜ症状』になります。

乳酸アシドーシスは、高齢者や腎臓が悪い人に起こりやすい副作用です。

しかし、若い人でも風邪をひいたり極端に体調が悪いときにメトホルミンを飲むと乳酸アシドーシスが起こり、さらに体調不良が悪化することがあります。

また、メトホルミンを長期に内服すると、ビタミンB12不足になりがちで、補充が必要になることもあります。

 

メトホルミン内服中は、ヨード造影剤を使ったCT検査をするときに休薬する必要があります。

ヨード造影剤使用の前後2日間ずつ、メトホルミンを休薬します

総合病院などで、がんの検査がある場合は、メトホルミンを飲んでいないかチェックしましょう。

『メトホルミン』という名前の薬を飲んでいなくても、メトホルミン成分が入っている薬も多いので、医療機関で確認が必要です。

 

  • メトグルコ錠 250mg/500mg
  • メトホルミン塩酸塩錠 250mg/500mg
  • グリコラン錠 250mg
  • イニシンク配合錠
  • メタクト配合錠 LD HD
  • エクメット配合錠 LD HD
  • ジベトス錠 50mg
  • ジベトス S 腸溶錠 50mg

 

参考│
・日本糖尿病学会, 糖尿病診療ガイドライン2019

 

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は、血中の糖分を尿で出す薬です。

ですので、尿検査を行うと尿糖が検出(3+以上)されますが、それだけ薬が効いていると解釈してください。

 

SGLT2阻害薬の特徴は、下記の通りです。

  • やせる効果がある
  • 長生きする
  • 低血糖になりにくく、安全に使える
  • 新しい薬で、値段が少し高い

 

  • フォシーガ
  • ジャディアンス
  • カナグル
  • ルセフィ
  • スーグラ
  • デベルザ・アプルウェイ

 

副作用はほとんどありませんが、尿の中の糖分が多くなるため、尿路感染(膀胱炎・腎盂腎炎)が起こりやすくなります

 

参考│
・Zelniker TA: SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes, Lancet 2019; 393: 31-39

 

DPP-4阻害薬

DPP-4阻害薬は、インスリンを分泌する物質(GIPとGLP-1)の濃度を高めることで、血糖値を下げる薬です。

低血糖になりにくく、安全に使えることが特徴です。

また、透析中にも使えます。

ダイエット効果のあるGLP-1の濃度を高めますが、DPP-4阻害薬には痩せる効果はありません。

1日1回の薬(7種類)と、週に1回の薬(2種類)があります。

 

1日1回の薬

  • ジャヌビア(グラクティブ)
  • エクア
  • ネシーナ
  • トラゼンタ
  • テネリア
  • スイニー
  • オングリザ

 

週1回の薬

  • マリゼブ
  • ザファテック

 

 

GLP-1製剤

GLP-1製剤は、飲み薬と注射薬があります。

ダイエットにも使われます。

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GLP-1注射剤

  • ビクトーザ(リラグルチド)
  • バイエッタ
  • トルリシティ
  • オゼンピック(セマグルチド)
  • ビデュリオン

 

GLP-1とインスリンの配合剤

  • ゾルトファイ配合注(ビクトーザ+トレシーバ)
  • ソリクア配合注

 

GLP-1飲み薬

  • リベルサス

 

リベルサスは唯一のGLP-1飲み薬です。

低血糖になりにくい製剤ですが、ダイエットの効果も期待できます。

心臓が悪い(心不全)場合は、SGLT2阻害薬とともに、GLP-1製剤の使用が推奨されています

 

SU剤

SU剤は、血糖を強力に下げる飲み薬です。

そのため、低血糖リスクが若干あります。

 

SU剤の特徴は下記の通りです。

  • 肥満のない人の方がよく効く
  • 低血糖のリスクが他の薬よりも高い
  • 低血糖になったときは長続きする可能性がある
  • インスリンが分泌されていない状態では使わない

 

SU剤を新規で導入する場合は、グリミクロン・アマリール(グリメピリド)のどちらかが使われます。

 

現在では、ベースの血糖は、メトグルコ・SGLT2阻害薬・DPP4阻害薬などで抑えて、食後高血糖はグリニド薬を使用することが多いです。

そのため、SU剤の処方の機会は以前と比べると減ってきています。

 

 

グリニド薬

グリニド薬は、インスリン分泌を促す薬です。

食直前に飲むと、食後高血糖を防げます

食前30分以上前に飲むと低血糖になってしまうかもしれないので、なるべく食事の直前に飲みます。

とは言え、それ程強い薬ではなく、低血糖のリスクはSU剤に比べて少ないです。

1日3回まで飲めるため、それぞれのライフスタイルに合った飲み方を提案します。

 

グリニド薬は3種類あり、その中でも『シュアポスト』は、他の薬と比べて強く、長く効きます

スターシス・グルファストが約3時間、効果が持続するのに対して、シュアポストは約4時間効きます。

 

グリニド薬の種類:

  • スターシス(ファスティック)=ナテグリニド
  • グルファスト=ミチグリニド
  • シュアポスト=レパグリニド

 

重度の腎機能障害における適応:

  • スターシス(ファスティック)ー禁忌
  • グルファストー慎重投与
  • シュアポストー慎重投与

 

参考│
・Scott LJ: Repaglinide: a review of its use in type 2 diabetes mellitus. Drugs 2012; 72: 249-272

 

 

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)

αグルコシダーゼ阻害薬は、腸での糖が細かく分解されないようにすることで、糖の塊をなるべく吸収されないまま便として排泄させる薬です。

この薬を飲むと、腸で食べ物がきちんと分解されないため、消化器系の副作用(特におなら)が出ることがあります。

おならの副作用対策としては、『夕食時のみに使用する』という方法もあります。

 

αGI薬の種類:

  • グルコバイ=アカルボース
  • ベイスン=ボグリボース
  • セイブル=ミグリトール

 

インスリン製剤

インスリンは、糖尿病治療の中で、最も強力な治療です。

注射回数は、多い人で1日4回打つ場合もあります。

これは、毎食前に1回ずつ(計3回)、ベースで約24時間効果のあるインスリン製剤を1日1回、打つからです。

 

インスリン製剤の種類:

  • 超速効型⇛ ヒューマログ・ノボラピッド・アピドラ・フィアスプ・ルムジェブ
  • 速攻型⇛ ヒューマリンR・ノボリンR

 

  • 中間型・混合型

 

  • 持効型⇛ ランタス・ランタスXR・レベミル・トレシーバ

 

インスリンとGLP-1製剤との合剤(ゾルトファイ注射)もあります。

これは、トレシーバにビクトーザが配合されたもので、インスリン量を減らすことができます。

 

肥満の糖尿病薬

肥満のときは、

  1. GLP-1
  2. SGLT2阻害薬
  3. メトグルコ

を優先して使います。

お年寄りでやせすぎた場合は、SGLT2阻害薬は中止する場合もあります。

DPP-4阻害薬は、やせる効果はありません。

 

心不全での糖尿病治療の注意点

心不全を合併した糖尿病で最善の治療は、SGLT2阻害薬の『フォシーガ』です。

高度の心不全のときは、メトグルコは乳酸アシドーシスの確率が高くなるため、禁忌です。

アクトスも心不全の発症や悪化のリスクがあるため、禁忌です。

 

心不全で禁忌の薬物

  • メトグルコ
  • アクトス

 

心不全のときも使える薬物

  • SGLT2阻害薬(特にフォシーガ)
  • GLP-1製剤

 

フォシーガは、慢性心不全でも適応となります。

 

心不全治療のファンタスティック4

心不全では、β遮断薬、アルドステロンブロッカー、ARNI、SGLT2阻害薬、の4剤が使われます。

この4剤は、アメリカンコミックのヒーローになぞらえてファンタスティック4と呼ばれています

 

 

腎臓が悪いときの糖尿病治療

腎臓が悪くなると、使ってはいけない糖尿病薬が増えます。

 

高度な腎不全のときは禁忌

  • メトグルコ
  • アクトス
  • SU剤

 

多少の腎障害なら使える

  • グリニド
  • αグルコシダーゼ阻害薬

 

尿が出なくなると、血糖を尿で排出するSGLT2阻害薬は効果がなくなるため、飲む意味がなくなります。

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糖尿病性腎臓病は医療者の中では『DKD』と呼ばれ、下記に注意して管理しています。

  • 血糖コントロール(HbA1c 7.0%未満)
  • 血圧コントロール(130/80mmHg未満)
  • 脂質コントロール(LDL120mg/dL未満)
  • RAS阻害薬・SGLT2阻害薬を使用する必要あり
  • 食事指導(塩分 6g、タンパク0.8g/kg/day)
  • 生活習慣の改善(禁煙・運動指導・適切な体重管理)