【透析にならないために】腎臓が悪いときにできることは?

腎臓が悪いと、最後は透析(とうせき)になります。

透析は、命をつなぐ大切な治療ですが、1週間に3回、1日4時間程度、ベッドで寝ながら血液を入れ替えないといけません。

当然、病院へ行く往復の時間もありますし、天気が悪くても、予約に遅れずに行かなければいけません。

 

透析は辛い治療ですが、いきなり透析になるわけではありません。

段階的に、徐々に腎臓が悪くなり、透析に至ります。

この『徐々に腎臓が悪くなっている段階』で適切な治療を行えば、腎臓を長く守り続けることができるかもしれません。

 

 

腎臓を長持ちさせる方法

  1. 薬を調整する
  2. 食べ物に気をつける(低たんぱく食にする)

腎臓を長持ちさせる方法は、薬の種類を微調整することと、食べ物です。

腎臓を長持ちさせるための特効薬はないので、腎臓を攻撃する病気に対しての薬を、腎臓に負担のかからないものに変更していく必要があります。

 

慢性腎臓病の患者数 1330万人│糖尿病より多い

 

日本国内の慢性腎臓病の患者さんは1330万人です。

糖尿病患者さんの人数 1000万人より多いです。

腎臓が悪い人は、日本人の1割以上

わが国の慢性腎臓病(CKD)患者数は約1,330万人で,国民の8人に1人が罹患する国民病であり,糖尿病患者数1,000万人を遥かに凌ぐ.

しかも70代の4人に1人,80歳以上の2人に1人はCKDである.

上月, 慢性腎臓病の運動療法・食事療法, 治療 105(5): 617-623, 2023

 

 

 

腎ぞう機能を良くする薬

  • 血圧の薬
  • 糖尿病の薬
  • 心臓病の薬

腎臓の機能を良くする薬は、主に3つあります。

 

腎機能を改善する薬│医療者向け内容

 

  • 降圧薬(RAS阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
  • 糖尿病薬(SGLT2阻害薬)
  • 心不全薬(エンレスト)

 

 

 

 

高血圧の薬

  • 血圧を 130/80 mmHg 未満にする
  • タンパク尿が出ている人は、厳格に血圧を管理すると、腎臓が長持ちする
  • タンパク尿が出ている人、または糖尿病がある人は、薬の種類を特殊なもの(RAS阻害薬)に変更すると、腎臓が長持ちする
  • 厳格に血圧を管理すると脳卒中が減る

 

高血圧の薬を、特殊な薬(RAS阻害薬)に変更するべき人は?

  • 糖尿病の人
  • タンパク尿が出ている人

腎臓を長持ちさせるために、 高血圧の薬を『RAS阻害薬』というタイプに変更しなければいけない場合があります。

タンパク尿や糖尿病がなければ、腎臓がちょっと悪くても、ふつうの高血圧の薬(アムロジピン・ニフェジピン)でも問題ありません。

 

RAS阻害薬を注意して使う人は?│腎臓が極端に悪い人は注意

  • 高齢者(75歳以上)
  • 腎臓が極端に悪い人

腎臓が悪い人には、RAS阻害薬はとても良い薬です。

しかし、腎臓が悪すぎる人には、RAS阻害薬で腎臓が突然悪くなってしまうかもしれません。

腎臓が悪すぎる人で高齢者の場合は、突然ドンッと腎臓が悪くなることがあったり、カリウムの値が上がったりするため、RAS阻害薬をごくごく少量から飲んでいきます。

 

参考│

・日本腎臓学会, エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018

・岡田, 保存期CKD : 脳心血管病抑制のための治療総論, 腎と透析 90(1): 112-115, 2021

・Papademetriou V: Cardiovascular outcomes in action to control cardiovascular risk in diabetes:Impact of blood pressure level and presence of kidney disease. Am J Nephrol 43: 271-280, 2016

・Bangalore S: Blood pressure targets in subjects with type 2 diabetes mellitus/impaired fasting glucose: observations from traditional and bayesian random – effects meta – analyses of randomized trials. Circulation 123:2799-2810, 2011

・Cheung AK: SPRINT Research Group:Effects of intensive BP control in CKD. J Am Soc Nephrol 28:2812-2823, 2017

 

糖尿病

  • 腎臓が悪くなったら、糖尿病を厳しく管理する必要はない
  • ヘモグロビンA1cをがんばって下げすぎると、低血糖になってむしろ死亡率が上がる

糖尿病があると、腎臓が悪くなって透析になってしまいます。

しかし、糖尿病の値(HbA1c)を下げすぎると、逆に命を落としてしまうかもしれません。

ですので、腎臓が悪くて糖尿病がある場合は、HbA1cはそこそこ低めくらいのコントロールで良いです。

 

世界の大規模研究でわかったこと

・腎臓が悪い糖尿病の患者さんで、HbA1cを6.0%未満に下げると死亡率が上がります(死因は、低血糖・心筋梗塞など:ACCORD研究)。

・腎臓が悪い糖尿病の患者さんで、HbA1cを6.5%未満に下げると、腎臓は長持ちしますが、心筋梗塞での死亡は減りませんでした(ADVANCE研究)。

 

参考│

・ACCORD Study: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. NEJM: 358:2545-2559, 2008

・ADVANCE study, Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. NEJM: 358:2560-2572, 2008

 

腎臓が悪くなると使えなくなる糖尿病の薬│SGLT2阻害薬に注意

  • SU剤
  • メトグルコ・メトホルミン
  • アクトス
  • SGLT2阻害薬

腎臓が悪くなったら、薬を徐々に減らしていき、インスリンなどの薬に切り替える必要があります。

特にメトグルコ(メトホルミン)・SGLT2阻害薬は、糖尿病の初期から処方される薬なので、腎臓が悪くなったあとも高用量で飲み続けている場合があり注意です。

腎臓が悪くなっても、インスリン・αグルコシダーゼ阻害薬、一部のインスリン分泌促進薬は、使用できます。

 

これらの中で、腎臓の機能を維持する目的で『SGLT2阻害薬』を使用している場合は、腎機能が下がってくると使えなくなるため、使用の継続に注意が必要です。

SGLT2阻害薬を使用する場合は、定期的な血液検査(腎機能を判断する目的)が必要です。

 

尿酸

  • アロプリノール(ザイロリック)を使って尿酸 6.0mg/dL 以下に下げるのが良い
  • フェブリク(フェブキソスタット)は、死亡率を高めるおそれがある

尿酸は、腎臓を守るためには値を下げた方が良いです。

ただし、腎臓が悪い人は減量して処方してもらう必要があります。

 

参考│

・White WB: CARES Investigators:Cardiovascular safety of febuxostat or allopurinol in patients with gout. NEJM 378: 1200-1210, 2018

 

高脂血症

  • 悪玉コレステロールは下げた方が良い
  • 中性脂肪は、下げる必要はあまりない

悪玉コレステロールは、低くした方が良いです(120mg/dL以下)。

中性脂肪を下げる薬は、腎臓が悪いと使いにくいため、あまりメリットがありません。

*中性脂肪を下げる薬(フィブラート系)は、腎臓が悪いと禁忌・慎重投与になります。

 

血液さらさらの薬

一部の血液さらさらの薬は、腎臓が悪くなりすぎると使えなくなります。

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腎臓が萎縮すると腎臓がんになりやすい│CT検査が必要

腎臓が傷んでくると、腎臓が萎縮してきます。

そうすると、普通の健常人よりも腎臓がんのリスクが高まります。

ですので、『腎臓が萎縮している』と言われた場合は、定期的に画像を撮影することが望ましいです。

 

 

結論

  1. 高血圧はRAS阻害薬でしっかり下げる
  2. 糖尿病の値は、はじめはがんばって下げ、腎臓が悪くなったらそこそこで良い
  3. 尿酸の薬は、アロプリノール(ザイロリック)が良い

腎臓を長持ちさせる時に使う薬は、RAS阻害薬とアロプリノールです。

なるべく透析にならないように、主治医の先生に腎臓を守ってもらうようにしましょう。