間質性肺炎の診断と治療

間質性肺炎(かんしつせい・はいえん)は、『原因不明の肺が固くなる難病』で、何年もかけて呼吸がしにくくなり、経過中にしばしば命を落とすことがある難しい病気です。

今の医療水準でも、有効な治療がなく、治らない病気です。

 

肺炎とは、肺に炎症がある状態です。

通常は、肺の空気がある部分(肺を蜂の巣に例えると、蜂の巣の穴)にバイ菌がつく肺炎が一般的です。

一方、間質性肺炎は、肺そのもの(蜂の巣そのもの)がどんどん傷んでしまい、肺が固くなる病気です。

原因は不明のことが多く、その場合は根本的に治療の方法がありません。

時に原因のある間質性肺炎のこともあり、その場合は、治療が可能です。

 

間質性肺炎は、原因不明のことが多く、肺がんを合併することもあり、基本的には治らない予後不良の指定難病です。

 

 

間質性肺炎の診断

  1. 肺のCT
  2. 血液検査(KL-6、SP-D)

肺のCTでは、肺の傷み具合を確認できます。

肺の上の方(頭側)よりも、肺の下の方(足側)が傷んでくることが多いです。

肺が障害されている範囲が広い場合は、予後が良くないことを示します。

 

血液検査では、KL-6(けーえる・しっくす)と、SP-D(えすぴー・でぃー)で間質性肺炎かどうかを見たり、病気の勢いを確認したりします。

間質性肺炎の血液検査│厚労省作成│医療者向け

 

間質性肺炎の診断(血液検査)

  1. KL-6上昇
  2. SP-D上昇
  3. SP-A上昇
  4. LDH上昇

上記の1項目以上を満たす場合に陽性と判定.

間質性肺炎の診断基準, 厚労省, 難病指定センター

 

 

 

呼吸状態が急に悪くなった時│肺のCTが必要

間質性肺炎は、肺CTの定期的な撮影が必要

間質性肺炎で最も怖いのは、『急に呼吸状態が悪くなること(急性増悪:きゅうせい・ぞうあく)』です。

間質性肺炎は、急性増悪した時に命を落とします。

急性増悪したときは、肺のCTで悪化した像が確認できます

 

 

間質性肺炎の治療

間質性肺炎の主な治療として、ステロイドと免疫抑制剤が使われます。

これらを使用しても、病気がどんどん進行し、悪化していくことが多いです。

ですので、結局様子見となり、治療をしないことも多いです。

中には、膠原病(こうげんびょう)が原因となっている間質性肺炎もあり、その場合はステロイド治療が有効です。

最近は、『抗線維薬(こう・せんいやく)』という新しいタイプの薬が開発されました。

  • ピレスパ(ピルフェニドン)
  • オフェブ(ニンテダニブ)

ピレスパ、オフェブなどの抗線維薬は、超高額な治療であり、適応は絞られます。

日本では高額医療費制度があるため、月々の自己負担分は10万円以内に収まることが多いですが、それでも高額です。

 

間質性肺炎は悪化すると、人工呼吸器の管理となることもしばしばありますが、基本的には予後は良くなく、今後のさらなる新薬の開発が望ましいです。

  • ピレスパ 1ヶ月で約4万円(3割負担で支払う額)
  • オフェブ 1ヶ月で約11万円(3割負担で支払う額)

 

 

間質性肺炎は治らない│どんどん悪くなる

間質性肺炎の特徴は、進行性で、良くなることはない、ということです。

肺が一旦悪くなったら良くなることはない』ということを『不可逆(ふかぎゃく)』と言い、これが間質性肺炎の特徴と言えます。

間質性肺炎は『良くなることはない』

間質性肺炎の特徴(3つ):

  1. 慢性経過
  2. 進行性
  3. 不可逆性(肺が一度傷んだ箇所は元にもどらない)

King TE, Jr. et al. Idiopathic pulmonary fibrosis. Lancet. 378(9807)1949-61, 2011,

 

間質性肺炎は急に調子が悪くなって命を落とす

間質性肺炎の予後は不良です。

この病気がきっかけでお亡くなりになる方も多いです。

間質性肺炎でお亡くなりになる場合は、「急に調子が悪くなること(急性増悪)」です。

その他にも、肺がんが合併して命を落とすこともあります。

  1. 間質性肺炎の急性増悪(41%)
  2. 慢性呼吸不全(25%)
  3. 肺がん(10%)

Natsuizaka M:Epidemiologic survey of Japanese patients with idiopathic pulmonary fibrosis and investigation of ethnic differences. AmJ Respir Crit Care Med 190:773-779, 2014

 

 

子どもの間質性肺炎

子供にも間質性肺炎は起こり得ます。

発生頻度は、10万人中0.3人程度なので、大変めずらしい病気です。

子供の間質性肺炎が起こりやすい遺伝子異常も見つかっています。

治療は、大人と同様に、ステロイド治療が行われます。

『子供の間質性肺炎』に対するステロイドの有効率は、約30-50%です。

現在の日本の保健医療制度では、ヒドロキシクロロキンは小児には適応がなく、6歳未満では禁忌となっていますが、実際の医療現場では使われていることも多いです。

 

子供の間質性肺炎まとめ:国内10年間のレポート

小児の間質性肺炎:

  • 2010-2020年で全34例
  • 17例に遺伝子異常あり
  • ステロイドとヒドロキシクロロキンの治療が実施
  • ヒロロキシクロロキンを使用した28例のうち、27例が6歳未満だった
  • 治療終了(寛解)11例、肺移植3例、死亡6例だった

玉井, 小児特発性間質性肺炎登録システム運用10年間の報告, 日本小児呼吸器学会雑誌 33(1): 9-18, 2022