【赤ちゃんの奇形を防ぐために】甲状腺バセドウ病の女性が気をつけるたった1つのこと

バセドウ病の女性が、妊娠したら、甲状腺の専門の先生にすぐ受診して、メルカゾールを他の薬に切り替えてもらうことが大切です。

バセドウ病の女性が妊娠したら、甲状腺の専門の先生にすぐ受診して、メルカゾールを他の薬に切り替えてもらいます

赤ちゃんの奇形(胎児奇形)を防ぐ方法は、シンプルにこれだけです。

体のこと、これからのことなので、一生後悔しないためにも、有給休暇を取得して、すぐに受診する必要があります。

 

また、バセドウ病で『目が飛び出た』症状が出たら、急いで処置が必要になります。

バセドウ病と『目が飛び出る』症状の関連 ⇛ (https://sato-nou.com/megaderu

 

結論:バセドウ病の治療中に妊娠したら、メルカゾールを飲まないようにする

  1. 甲状腺の専門医にすぐ受診する
  2. メルカゾールを他の薬に切り替えてもらう
  3. 必要なら、プロパジールかヨウ化カリウムを飲む

バセドウ病でメルカゾールを飲んでいる時に妊娠してしまったら、まずは甲状腺の専門医にすぐ受診して、メルカゾールを他の薬に切り替えてらもらうようにしましょう。

メルカゾールをそのまま飲んでいると、赤ちゃんに奇形ができてしまうかもしれません

 

バセドウ病の治療薬│初心者向け

  1. メルカゾール
  2. プロパジール
  3. ヨウ化カリウム

バセドウ病の治療薬は、3つあります。

1番効くのが、『メルカゾール』ですが、妊娠中は飲めません

メルカゾールで副作用が出たら、『プロパジール』に変更します。

それでも、副作用があれば、『ヨウ化カリウム』を飲むことになります。

 

バセドウ病の薬の副作用まとめ│初心者向け

  1. メルカゾール ⇛ 赤ちゃんに奇形ができる
  2. プロパジール ⇛ 感染症にかかるかも、肝臓が傷むかも
  3. ヨウ化カリウム ⇛ 副作用なし

メルカゾールは、赤ちゃんへ影響が出るため、妊娠の希望があれば主治医の先生にしっかり伝えましょう。

プロパジールは、バイ菌と戦う白血球が少なくなる可能性があります。

プロパジールの飲み始めは、頻繁に血液検査をすることになります。

ヨウ化カリウムは、副作用は少ないですが、効果が弱いです。

 

妊娠中に飲んではいけないバセドウ病の薬│メルカゾール(チアマゾール)

妊娠初期は、メルカゾールを飲んではいけません

妊娠しはじめに、メルカゾール(チアマゾール)を飲むと、赤ちゃんに奇形ができやすくなります。

奇形ができる確率が約2%上がるだけですが、奇形があると、その後の生活が大変になります。

妊娠初期にメルカゾールを飲むと、赤ちゃんに奇形ができるかもしれない

妊娠初期の器官形成期に母体がチアマゾール(MMI)を内服していると、先天性形態異常(MMI-related embryopathy)の確率が約2%上がる.

  • 頭皮欠損
  • 臍腸管遺残
  • 臍帯ヘルニア
  • 食道閉鎖
  • 気管食道瘻

Yoshihara A: Treatment of Graves’ disease with antithyroid drugs inthe first trimester of pregnancy and the prevalence of congenital malformation. J Clin Endocrinol Metab, 97: 2396-2403, 2012

妊娠初期は、メルカゾール(チアマゾール)を飲まないようにする│ガイドライン

妊娠初期は、催奇形性の観点から妊娠5週0日から9週6日までは、チアマゾールを裂けるべきである.

(B:強い推奨)

バセドウ病治療ガイドライン2019 CQ

 

妊娠したらプロパジールに切り替える│妊娠中に安全に飲めるバセドウ病の薬

プロパジールは、妊娠中でも安心して飲めます

プロパジール(プロピルチオウラシル)は、妊娠中に飲んでも赤ちゃんの奇形の心配はありません。

実を言うと、デンマークや韓国で、『プロピルチオウラシルを飲んで、少ないながらも奇形が発生した』という報告があります。

しかし、その他の研究では、『プロパジールは、妊娠中でも安全』と証明されていますし、他に薬もないため、『妊娠したらプロパジールを飲む』という結論になります。

妊娠初期は、『薬をやめる』か『プロパジール』または『ヨウ素』│ガイドライン

チアマゾール(MMI)内服中に妊娠が判明した場合、妊娠9週6日までであれば、MMIを速やかに中止.

患者の状態に応じて休薬またはプロピルチオウラシル(PTU)や無機ヨウ素薬に変更する.

(B:強い推奨)

バセドウ病治療ガイドライン2019 CQ

 

妊娠16週以降は、またメルカゾールに戻ることもある

メルカゾールは、妊娠16週以降なら、飲んでも良いです

メルカゾールは妊娠16週以降であれば、赤ちゃんへの奇形には影響しません。

妊娠16週までは他の薬で粘って、16週以降にまたメルカゾールに戻ることはあります。

『妊娠中なのにメルカゾール飲んでて大丈夫かな・・』と心配になって自己判断で薬をやめないようにしましょう。

バセドウ病の治療薬まとめ│医療者向け内容

 

  1. メルカゾール(チアマゾール・MMI)
  2. プロパジール・チウラジール(プロピルチオウラシル・PTU)
  3. ヨウ化カリウム

メルカゾールは、妊娠初期は胎児奇形のリスクが高くなるため禁忌です。

プロパジールの副作用は、無顆粒球症と肝機能障害です。

ヨウ化カリウムは、特に副作用はありませんが、効果も弱いです。

 

妊娠を考えている女性は、メルカゾールを避ける

妊娠希望の若年女性であれば、プロパジールまたはヨウ化カリウムで治療します。

『妊娠初期のメルカゾール内服は、少量でも胎児器系を引き起こす』という報告があります。

 

プロパジールは、無顆粒球症チェックをする│投与開始時は2週間毎

プロパジールは、無顆粒球症のチェックが必須

プロパジールの内服早期は、無顆粒球症のチェックのため、2週間ごとに血液検査をします。

プロパジールの投与開始後2-3ヶ月は、2週間毎の採血を要します。

 

プロパジールを飲むと血管炎になるかも│『MPO-ANCA陽性の血管炎』の副作用あり

プロパジール内服中は、30%がMPO-ANCA陽性になる

プロパジール内服中は、約30%でMPO-ANCAが陽性になることがあります。

プロパジール内服中に、倦怠感で受診して尿蛋白と尿潜血が出たときは、血管炎の副作用が出ているかもしれません

プロパジールで血管炎になった場合は、プロパジールを中止します。

 

妊娠初期の対応

妊娠したら、プロパジールかヨウ化カリウムに変更します。

 

妊娠中期(妊娠16週)以降の対応

妊娠中期(妊娠16週以降)までは、プロパジールかヨウ化カリウムにしているはずです。

妊娠中期・妊娠後期は、バセドウ病の病勢が弱まります。

妊娠中は、胎児の甲状腺機能低下を防ぐため、母体側は『甲状腺機能を抑えられる最小量』でコントロールしましょう

また、ヨウ化カリウムの場合、徐々に薬の効果が減弱する可能性があります。

その場合は、妊娠中期になったら、またメルカゾールに戻すこともあります

妊娠初期(胎児形成期)を超えて、妊娠中期になれば、メルカゾールの胎児奇形リスクは少ないからです。

妊娠中は、抗甲状腺薬は最小量にする│胎児の甲状腺機能低下を防ぐため

出産時まで抗甲状腺薬を内服していた場合、出産時の児のFT4は低くなる.

母体のFT4は、非妊娠時の正常上限を目安にする.

母体の抗甲状腺薬の使用量は最小限にとどめる.

Yoshihara A: Substituting potassium iodide for methimazole as the treatment for Graves’ disease during the first trimester may reduce the incidence of congenital anomalies. Thyroid, 25: 1155-1161, 2015

 

 

授乳中のバセドウ病の治療│産後はバセドウ病が悪化する

産後はバセドウ病が悪化します

バセドウ病は、妊娠の後半で良くなりますが、産後は悪化します

授乳中は、プロパジールの治療を受けることが多いです。

メルカゾールと、ヨウ化カリウムは、母乳に出てしまうことがあるからです。

 

産後はプロパジールの治療

プロパジールは、母乳に出にくいため、赤ちゃんにとっても安全です

授乳中は、プロパジールが母乳に出にくいため安全です。

授乳中のプロパジールは、1日300mg以下が赤ちゃんにとって安全です。

授乳中のメルカゾールは、1日10mg以下にとどめます。

メルカゾール 10mg 以上の場合、人工乳を併用したり、赤ちゃんも血液検査をして甲状腺機能チェックをします。

母乳への影響からは、プロパジールが1番安全

母乳への移行は、プロパジールの方が少なく、メルカゾールの方が多いです

母乳の移行だけを考えた場合は、プロパジールが赤ちゃんにとって最も安全です。

母乳への移行は、メルカゾールの方がプロパジールよりも多い

母体血漿から乳汁への薬剤の移行は、MMIの方がPTUよりも高い.

吉原, 月刊薬事 62(13): 2533-2537, 2020

 

授乳中は、メルカゾール10mg以下、プロパジール300mg以下

 

  • メルカゾール 1日10mg以下
  • プロパジール 1日300mg以下

メルカゾールもプロパジールも、母乳にわずかに出てくるため、多量に飲むと赤ちゃんに影響します。

授乳中は、プロパジールの方が、メルカゾールよりも、安全に飲めます。

授乳中に安全に飲めるメルカゾール・プロパジールの1日量

下記の量であれば、児の甲状腺機能を測定することなく投与可能.

  • MMI 1日 10mg 以下
  • PTU 1日 300mg 以下

吉原, 月刊薬事 62(13): 2533-2537, 2020

 

メルカゾールでも6時間たてば、授乳してもOK

メルカゾールを多めに飲んでいても、6時間たてば授乳可能です

メルカゾールを多めに飲んでいた場合でも、授乳ができないわけではありません。

6時間たてば授乳できますから、その間は人工乳を併用しましょう。

メルカゾール内服6時間後から授乳可能

MMIが10mgを超える場合は、内服後6時間までは授乳を控え、その間は人工乳にする.

MMIの乳汁移行は内服後2-4時間がピークであるため、6時間経過後は授乳可能である.

吉原, 月刊薬事 62(13): 2533-2537, 2020

 

授乳中のヨウ化カリウムは注意│ヨウ素が母乳に出てしまう

 

授乳中はヨウ化カリウムを避けましょう

授乳中にお母さんがヨウ化カリウムを飲んでいる場合は、 赤ちゃんの甲状腺機能のチェックが必要です。

ヨウ化カリウムは、濃縮されて母乳に出るからです。

ヨウ化カリウムは、副作用が少ない薬ですが、唯一気をつけるのが、授乳の時です。

 

出産後に、甲状腺が壊れることがある│破壊性甲状腺中毒症

出産後に、甲状腺が壊れて、甲状腺ホルモン値が異常に高くなることがあります

バセドウ病のない健康な妊産婦でも、出産後に甲状腺が壊れることで、甲状腺ホルモンが体内に異常に漏れ出ることがあります。

甲状腺が壊れて、甲状腺ホルモンが体内に異常に漏れ出ることを『破壊性甲状腺中毒症(はかいせい・こうじょうせん・ちゅうどくしょう)』と言います。

甲状腺ホルモン値が異常に高くなったときは、バセドウ病と区別する必要があります。

出産後の甲状腺トラブルは、『破壊性甲状腺中毒症』が1番多い

出産後甲状腺機能異常で最も多いタイプは、破壊性甲状腺中毒症、多くは橋本病による無痛性甲状腺炎である.

バセドウ病との鑑別が重要である.

甲状腺自己抗体・エコー所見から、早期に的確な判断が必要である.

岩永, バセドウ病合併妊婦において, 分娩後に著しい甲状腺機能亢進症・無痛性甲状腺炎を呈した一例, 日本内分泌学会雑誌 96(3): 660-660, 2020

 

 

バセドウ病とは?│症状チェック│診断と治療の初心者まとめ

バセドウ病は、甲状腺のホルモンがたくさん出てしまい、全体に不調を訴えたり、ドキドキしたり、目が飛び出たり、する病気です。

  1. 脈が早くなる
  2. 体重が減る
  3. 手がふるえる
  4. 汗が出る
  5. 首が腫れる(甲状腺が大きくなる)
  6. 目が飛び出る

バセドウ病を疑ったら血液検査で、甲状腺のホルモンが高くなっていないかチェックします。

TRAb(=TSH受容性抗体)陽性

(またはTBIIまたはTSAb陽性)

バセドウ病の診断基準│ガイドライン

バセドウ病の診断基準│ガイドライン

a)症状

  1. 甲状腺中毒所見(頻脈・体重減少・手指振戦・発汗)
  2. 甲状腺腫大
  3. 眼球突出

b)検査所見

  1. FT4またはFT3の高値
  2. TSH低値(0.1 μU/mL 以下
  3. 抗TSH受容体抗体(TRAb・TBII)陽性、
    または刺激抗体(TSAb)陽性
  4. 放射線ヨードまたはテクネシウムの甲状腺摂取率高値

甲状腺疾患診断ガイドライン2010

血液検査で、甲状腺ホルモンがたくさん出ている場合は、『バセドウ病』なのか、『甲状腺が壊れて甲状腺ホルモンが大量に漏れ出ているのか』を区別することが大切です。

『バセドウ病』の場合は、『TRAb(てぃーあーるえーびー)』が高くなります

バセドウ病ではなく、『甲状腺が壊れている』場合は、『抗TPO抗体(こう・てぃーぴーおー・こうたい)』が高くなります。

  • バセドウ病の治療はメルカゾール
  • 甲状腺炎の治療はステロイド

バセドウ病の場合は、メルカゾールなどの薬の治療を行います。

甲状腺が壊れている場合は、炎症を抑える強いステロイド薬(プレドニゾロン)を飲みながら、甲状腺の機能が落ち着くのを待ちます。

甲状腺がたくさん壊れてしまうと、甲状腺の機能は逆に下がってしまうため、甲状腺ホルモンの補充(チラーヂン)が必要になります。

 

バセドウ病の治療戦略│ほとんどが薬の治療

  1. 放射線
  2. 手術

バセドウ病の治療は、薬で行われることがほとんどです。

若い女性で妊娠希望の場合は、薬の調整が必要になります。

 

バセドウ病の初期治療│メルカゾール 15mg

バセドウ病の初期治療は、メルカゾール 1日 15mg が推奨されています

バセドウ病の初期治療は、軽症(FT4: 5.0 ng/dL未満)ではメルカゾール 15mgが推奨されています。

初期治療開始後、少なくとも3ヶ月間は、2-3週間ごとに診察して副作用をチェックします。

バセドウ病の初期治療

軽症(FT4 5.0 ng/dL未満):

  • メルカゾール 15mg

中等症以上(FT4 5.0ng/dL以上):

  • メルカゾール 30mg

または、

  • メルカゾール 15mg + ヨウ化カリウム50mg

内田, 月刊薬事 62(13): 2495-2499, 2020

 

プロパジールの減らし方(医療者向け)

毎日交互に飲むことで少しずつ減らしていきます

例えば、プロパジール(50mg)を、4錠(200m)でFT4が低めできちんと安定しているときは、3錠(150mg)に減量したくなります。

その場合、4錠と3錠を毎日交互に飲むことで、プロパジール175mg(1日量)と近似して25mgずつ減量することができます

自己中断や急速に減量すると、甲状腺クリーゼの原因になるので注意が必要です。

 

バセドウ病は治る?完治する?│まずは半年で判断

バセドウ病を治療して、約6ヶ月で、休薬して判断する方法もあります

バセドウ病の治療をして、半年以上、甲状腺機能が正常であれば、お薬をやめられる可能性があります。

休薬する時に、TRAbの値が低ければ、再発しにくいという話もあります。

バセドウ病の薬は半年程度で終了できるかもしれない│完治する可能性あり

6ヶ月以上にわたり甲状腺機能が正常を維持している場合には、休薬を考慮する.

内田, 月刊薬事 62(13): 2495-2499, 2020

 

バセドウ病治療を自己中断すると命を落とすかも│甲状腺クリーゼ

バセドウ病の治療を自己中断すると、突然命を落としてしまうかもしれません

バセドウ病の治療中に、甲状腺ホルモン値が突然上がり、命を落とすことがあります

この『体内の甲状腺ホルモンが異常に多くなる』状態を『甲状腺クリーゼ』と言います。

『甲状腺クリーゼ』は、致死率10%以上あり、熱が出て、意識を失い、心臓が止まることがあります。

  • 治療していないバセドウ病の人
  • 治療を自己中断してしまったバセドウ病の人

甲状腺クリーゼになりやすい人は、『治療していないバセドウ病の人』、『治療を自己中断してしまったバセドウ病の人』に多いです。

『甲状腺クリーゼの原因』は未だ不明ですが、治療がきちんとできていないバセドウ病の人に多いことが知られています。

ですので、バセドウ病と診断がついた人はきちんと治療を続けなければいけません。

甲状腺クリーゼの症状│意識がなくなり、心臓が止まる

 

  1. 意識障害
  2. 発熱
  3. 血圧が下がる
  4. 下痢
  5. 目・体が黄色くなる(黄疸:おうだん)

 

バセドウ病で腹痛があると、甲状腺クリーゼを疑う

甲状腺クリーゼでは、腹痛・下痢などの消化器症状が出ます

甲状腺クリーゼでは、お腹の症状が出ることがあります。

自分で脈を測って、『脈が速いかな』と思ったらすぐに病院へいきましょう。

 

甲状腺の病気まとめ│バセドウ病・橋本病・亜急性甲状腺炎の違い

  1. バセドウ病
  2. 橋本病
  3. 亜急性甲状腺炎
  4. 破壊性甲状腺中毒症

バセドウ病は、『甲状腺ホルモンを出す物質』である『TRAb』が体の中で作られてしまうことが原因で、体内で甲状腺ホルモンが増えてしまう病気です。

 

橋本病(はしもと・びょう)は、『甲状腺が静かに壊れてしまう病気』です。

甲状腺がある『首の前の方』は痛くないことが特徴です。

甲状腺が勢いよく壊れている時は、甲状腺の中に入っている甲状腺ホルモンが大量に漏れ出ます。

この時は、甲状腺ホルモンの値が高くなります。

一方、甲状腺が壊れた後は、甲状腺ホルモンを作ることができなくなり、『甲状腺ホルモンの補充』が生涯必要になります。

 

亜急性甲状腺炎(あきゅうせい・こうじょうせんえん)は、『甲状腺が勢いよく壊れる病気』です。

甲状腺がある『首の前の方』が痛くなることが特徴です。

血液検査で、Tg・炎症反応(CRP)が上がります。

超音波検査で、甲状腺の中に黒く抜ける部分(低エコー部分)が出ます。

 

破壊性甲状腺中毒症は、『甲状腺が壊れた結果、甲状腺ホルモン値が高くなること』が特徴です。

 

甲状腺の抗体検査

甲状腺を壊す物質を、『抗TPO抗体(こう・てぃーぴーおー・こうたい)』と言います。

 

首の前が痛くなる病気一覧│甲状腺だけじゃない

  1. 亜急性甲状腺炎
  2. 急性化膿性甲状腺炎
  3. 甲状腺嚢胞内出血
  4. 橋本病の急性増悪
  5. 甲状腺の未分化がん
  6. リンパ節炎
  7. 顎下腺炎
  8. 筋肉痛・首のこり

首の前が痛くなる時、『リンパ節の炎症(リンパ節炎)』が、最も多いです。

『リンパ節炎(りんぱせつ・えん)』の場合は、自然治癒か、抗生物質の治療で、速やかに良くなります。

のどぼとけの辺りの甲状腺を押して痛い時は、亜急性甲状腺炎(あきゅうせい・こうじょうせんえん)を起こしていることがあります。

亜急性甲状腺炎は、ステロイド治療が必要になることがあるため、きちんと病院に受診しましょう。

 

感染があるかないか、の区別がとても大切

甲状腺のバイ菌感染に、ステロイド治療を行うと、逆に悪化します

甲状腺の炎症が感染なのか、感染ではないのか、の区別はとても大切です。

感染がある『急性化膿性甲状腺炎(きゅうせい・かのうせい・こうじょうせんえん)』の時は、甲状腺の中に膿の塊を作っています。

これを間違えて、『亜急性甲状腺炎(あきゅうせい・こうじょうせんえん)』と思ってステロイド治療を受けてしまうと、バイ菌の塊がどんどん大きくなってしまいます

区別する方法は、『甲状腺の超音波検査』です。

超音波検査で、甲状腺の中に明らかな膿の塊が見えれば、急性化膿性甲状腺炎として、バイ菌をやっつける治療を受ける必要があります。

 

『左が痛い甲状腺の病気』は、『急性化膿性甲状腺炎』かもしれません

甲状腺にバイ菌がつくときは、9割が左側です

甲状腺にバイ菌の感染を起こす時、90%は左側に起こります。

甲状腺の感染は、左側に起こる

急性化膿性甲状腺炎の約90%が、左側に発症する.

小林, 総合臨床, 1992: 41: 2304-2308

 

痛む位置が変わるときは、『亜急性甲状腺炎』かも│クリーピング現象

痛みの位置が変わること(クリーピング現象)が、亜急性甲状腺炎の特徴です

『亜急性甲状腺炎』は、痛みの位置が変わる『クリーピング現象』がよく知られています。

左側だけがずっと痛い『急性化膿性甲状腺炎』と明確に区別してもらえるように、痛みの位置は、医師の診察を受ける前に自分でしっかり確かめておきましょう。

痛みの位置がいろいろ変わる『亜急性甲状腺炎』

亜急性甲状腺炎の甲状腺の痛みの部位は、経過中に移動することがあり、クリーピング現象と呼ばれる.

本疾患の特徴である.

檜垣, 亜急性甲状腺炎の臨床像と超音波像, 乳腺甲状腺超音波医学 9(4): 99-99, 2020

 

首の前の方が痛くなる病気の考え方│医療者向け

 

  1. 甲状腺
  2. リンパ節
  3. 気管
  4. 顎下腺
  1. 炎症
  2. 出血
  3. がん

首の前の方が痛くなる時、首のそれぞれの構造に、どんな種類の病気があるか、で病気が決まります。

まれなものを含めるとキリがありません。

実際は、『首にあるガン』は痛くないことが多いです。

リンパ節が腫れている時、あまりにも痛い場合は、悪性リンパ腫ではないことが多いです。

首の前が痛い時は、炎症・出血・がん、の3つを考える

前頸部の痛みで鑑別すべき疾患:

亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎、嚢胞(結節)内出血、橋本病の急性増悪、未分化癌があげられる.

また、甲状腺以外にも頸部リンパ節炎や顎下腺炎などがある.

宮川, 日常よく遭遇する甲状腺疾患シリーズ乳腺甲状腺超音波医学 10(1): 12-12, 2021

 

亜急性甲状腺の治療はステロイドが主役│『脈が速い』対策も

亜急性甲状腺炎の治療は、プレドニゾロン30mgを6週間かけてゆっくり減らす治療です

亜急性甲状腺炎(あきゅうせい・こうじょうせんえん)の治療は、ステロイド治療(プレドニゾロン)を行います。

プレドニゾロンを1日30mgから6週間くらいかけてゆっくり減らしていきます

約6週間でプレドニゾロンを中止・終了できることが多いですが、短期間で再発する場合は、またプレドニゾロンを再開します。

亜急性甲状腺炎は、甲状腺の機能がそのまま下がったままになってしまい、補充が生涯必要になることもあります。

しっかり通院して主治医の先生のお話をよく聞くようにしましょう。

亜急性甲状腺炎の治療│医師向け内容

亜急性甲状腺炎の治療はステロイド、頻脈にはβブロッカー

亜急性甲状腺炎は、一旦治っても、再燃したり、その後甲状腺機能低下症でチラーヂンが永続的に必要になったりします。

甲状腺機能が正常化するまで、長期フォローする必要があります。

亜急性甲状腺炎は短期間ですぐ再発することもある

亜急性甲状腺炎の治療:

  • 軽症ではNSAIDs
  • 症状が強い場合はステロイド
  • ステロイドは、プレドニゾロン15-30mg/dayで開始
  • 6週間程度でプレドニゾロンを中止

プレドニゾロン減量中に再燃した場合は、再度増量し、安定したら漸減する.

Mizutoshi T. Evaluation of Recurrence in 36 Subacute Thyroiditis Patients Managed with Prednisolone. Intern Med 2001; 40: 292-295

 

 

結論:バセドウ病で妊娠を希望する女性は、専門の先生に見てもらいましょう

バセドウ病のある妊娠希望の女性の方は、薬の調整が必要になるため、甲状腺の専門の先生の診察を受けるようにしましょう。

元気な赤ちゃんと健やかな生活が送れるといいですね。