脳に『海綿状血管腫(かいめんじょう・けっかんしゅ)』という血管の奇形がある女性も、安全に妊娠・出産ができます。
- 脳海綿状血管腫があっても、安全に妊娠出産できます
- 妊娠しても脳出血の確率は上がりません
- 経膣分娩で出産して良いです
- 帝王切開する必要はないです
『頭に病気があります』とあらかじめ言われていると、妊娠して良いのか不安になります。
しかし、脳の海綿状血管腫は、妊娠出産には影響がありませんので安心してください。
『妊娠すると母体に悪影響がある病気』もありますので、心配な場合は一度ご相談ください。
『脳動脈瘤』『もやもや病』『脳動静脈奇形』があっても、妊娠・出産は可能です。 しかし、100%安全に妊娠出産できるとは言い切れません。 『脳動脈瘤』『もやもや病』『脳動静脈奇形』でも、妊娠・出産はできます 脳の持病がある妊婦さんが[…]
結論:脳の海綿状血管腫の女性は、安全に妊娠・出産できます
『脳に海綿状血管腫がある妊婦のガイドライン(治療方針)』というものはありません。
しかし、2020年のイタリアの研究で、『脳に海綿状血管腫がある女性でも、安全に妊娠出産できる』ことがわかりました。
経膣分娩で良く、帝王切開を行う必要はありません。
脳海綿状血管腫の女性は、安全に妊娠出産できる│2020年イタリア
脳海綿状血管腫の女性は、妊婦自身や胎児に特別なリスクなく、妊娠することができる.
脳海綿状血管腫の経膣分娩は、禁忌ではない.
脳出血を減らす目的で、帝王切開を行うことはない.
Merlino L: Cerebral cavernous malformation: Management and outcome during pregnancy and puerperium. A systematic review of literature. J Gynecol Obstet Hum Reprod. 2021 Jan;50(1):101927
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脳海綿状血管腫があってもなくても、妊婦の脳出血の確率は変わらない
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脳に海綿状血管腫がなくても、妊娠中は脳出血が起こることがあります
脳に海綿状血管腫があっても安全に妊娠できますが、まったく出血しないわけではありません。
これは、『脳に海綿状血管腫があってもなくても、妊婦が脳出血を起こす確率は変わらない』ということです。
妊娠中は、妊婦さんの血圧が上がることがあり、海綿状血管腫がなくても、脳出血する人もいます。
『脳に海綿状血管腫がある女性は、普通に妊娠・出産できる』と解釈してください。
妊娠出産は、脳海綿状血管腫に影響なし
最近の研究では、脳海綿状血管腫の女性は、妊娠していても、妊娠していなくても、脳出血リスクは同等と強調されている.
Merlino L: Cerebral cavernous malformation: Management and outcome during pregnancy and puerperium. A systematic review of literature. J Gynecol Obstet Hum Reprod. 2021 Jan;50(1):101927
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出産してから破裂する脳海綿状血管腫もある
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脳の海綿状血管腫は、赤ちゃんを産んでしばらくしてから、脳に出血することもあります
脳海綿状血管腫は、赤ちゃんを産んでから、お母さんの体が元に戻るまでの間に脳出血するパターンもあります。
赤ちゃんを産んだ妊婦は『産褥婦(さんじょくふ)』と言います。
産褥婦の脳出血には、妊娠中にも増して注意が必要です。
出産してから脳出血するパターンもある│産褥婦の脳海綿状血管腫
脳海綿状血管腫の産褥婦が脳出血する場合もある.
S. Yamada: Cavernous malformations in pregnancy, Neurol Med Chir, 53, 8, 2013, p555-560
脳海綿状血管腫(かいめんじょう・けっかんしゅ)とは?
脳の海綿状血管腫(かいめんじょう・けっかんしゅ)は、脳の中で出血することがある血管奇形です。
この病気がある人は、それほど多くはなく、人口の 1%未満 です。
脳の海綿状血管腫は、30歳代で診断されることが多いです。
脳の海綿状血管腫は、30歳代で見つかる
脳の海綿状血管腫は、30歳から39歳の間に診断されることが多い.
J.M. Simard: Cavernous angioma: a review of 126 collected and 12 new clinical cases, Neurosurgery, 18, 1986, p162-172
脳海綿状血管腫の患者さんは、家族もMRIで脳を調べてみる
海綿状血管腫が脳の中にたくさんある場合は、遺伝が原因のことがあり、家族の人もMRIで脳を調べた方が良いかもしれません。
海綿状血管腫がたくさんある場合は、家族性(遺伝による)かもしれない│サンフランシスコの報告
海綿状血管腫が多発する場合、家族性と関連する.
海綿状血管腫が1箇所だけの場合、遺伝とは関連しない.
G.G. Leblanc: Biology of vascular malformations of the brain NINDS workshop collaborators. Biology of vascular malformations of the brain, Stroke, 40, Dec 12, 2009, e694-e702
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脳出血しやすい海綿状血管腫の遺伝子│医師向けの内容
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脳出血しやすい海綿状血管腫の遺伝子『CCM3』があります
家族性の海綿状血管腫の遺伝子には、CCM1、CCM2、CCM3、の3つがあります。
- CCM 1
- CCM 2
- CCM 3(←出血しやすい)
これらの中で、CCM3は出血しやすいことが Lancet Neurologyに掲載されました。
CCM3遺伝子は、出血しやすい
脳海綿状血管腫のCCM3遺伝子は出血のリスクとなる.
P. Labauge: Genetics of cavernous angiomas, Lancet Neurol, 6, 2007, p237-244
『過去に出血したことがある脳海綿状血管腫』は、再出血しやすい│年間5%程度
脳海綿状血管腫が出血した人は、再出血する確率が高いです。
出血歴のある海綿状血管腫の妊婦さんは、一度、周産期センター(妊娠分娩センター)がある大きな病院の脳外科専門医に受診しましょう。
出血歴があると再出血率は高い
過去に出血したことがある海綿状血管腫の年間出血率は、4.5-6.0%.
Merlino L: Cerebral cavernous malformation: Management and outcome during pregnancy and puerperium. A systematic review of literature. J Gynecol Obstet Hum Reprod. 2021 Jan;50(1):101927
まとめ:脳の病気があり、妊娠を考えている場合は、専門の医師に一度相談しておきましょう
脳に何か病気があるけれども、妊娠を考えている場合は、専門の医師の話も聞いておきましょう。
画像を持っていれば、CD-Rを持参するだけでコメントしてもらえると思います。
画像がなければMRIを撮影することが多いため、妊娠中の方はかかりつけの産婦人科の先生に『MRIを撮影して良いかどうか』を聞いておきましょう。
脳に海綿状血管腫がある妊娠は、サイズや出血歴の聴取が必要です。
場合によっては、大きな病院と連携が必要になります。
一度、専門の医師に相談するようにしましょう。