子供から『頭がいたい』と訴えがあった時に、大切なのは、『適切な治療を求める家族の姿勢』と『お子さんの痛みを理解しようとする姿勢』です。
なぜなら、子どもの頭痛を治療するときは、予防薬が必要となることが多いからです。
また、お子さんは上手に自分の訴えを言えませんし、生活習慣も家族のサポートなしには変えられません。
まれですが、脳腫瘍や生まれつきの奇形など、見逃してはいけない重大な病気があるということも大切です。
さらに、小児の頭痛は、特殊な頭痛のタイプもよく知っておく必要もあります。
- 怖い病気を早めに除外する(MRI・CT)
- 頭痛がクセにならないために早めの予防治療が効果的
- 薬だけでなく、生活習慣も重要
MRIやCTは、お子さんの場合でも、当院では当日撮影します。
MRIは6歳以上であればじっと動かずに撮影できることが多いです。
CTであれば0歳児でも撮影できます。
予約は不要ですので、頭痛で学校を休んでしまった日や、頭が痛いときは、保険証を持って、そのままお越しください。
『朝は元気』であれば、『起立性調節障害』を心配する必要はありません。
頭痛の薬と言えば、カロナール、アセトアミノフェン、ロキソニン、バファリン、が有名です。 これらを飲むと、だいたいの頭痛は治まります。 しかし、強い頭痛では、これらを飲んでも痛みが治まらない場合もあります。 […]
結論:子供の頭痛の治療には『予防薬』と『生活習慣』が大切
子どもの頭痛は、繰り返す事が多く、その場合、予防薬が必要になります。
なぜなら、痛み止めをたくさん飲むと、『頭痛がクセになる』からです(薬物乱用頭痛と言います)。
予防薬の提案がある医療機関は、頭痛治療の選択肢が広いと思います。
また、予防薬の提案をきちんと受けて、それぞれの薬のメリット・デメリットをよく聞いて、お医者さんと両親が、本人と一緒に考えていくチームの姿勢が大切です。
『子どもの頭痛』は『クセ』にならないように、予防薬で早めに治療
小児の頭痛は頻回に頭痛発作を認め、予防薬が必要になることは少なくない.
患児やご家族の不安を加味して治療薬を決定する.
日本頭痛学会誌; 45,1, 36-38; 2018
-
子供の片頭痛の”痛い時に飲む薬”の正解は?
-
- イブプロフェン(イブ)
- スマトリプタン点鼻薬
- リザトリプタン錠
- 予防薬
お子さんの片頭痛では、イブプロフェン(いわゆるイブ)が最良とされています。
また、鼻で吸うタイプの薬(イミグラン点鼻薬)も良いとされています。
さらに、口の中で溶ける薬(リザトリプタンOD錠)も水なしで飲めて便利です。
使用量は、担当医の先生とよくお話しして決めましょう。
子どもの頭痛の効果的な治療(頭痛ガイドライン)
小児片頭痛のグレードAの治療は下記の通り:
- 小児片頭痛の急性期治療の第1選択薬として、イブプロフェンは最良の鎮痛作用
- スマトリプタン点鼻薬が有効かつ安全
- 錠剤では、リザトリプタンが有効かつ安全
慢性頭痛診療ガイドライン2013
『グレードAの治療』とは、『最も効果的』という解釈で良いです。
-
子供の頭痛は、”予防薬” が必要になることが多い
-
毎日飲む『頭痛の予防薬』で、頭痛を根本的に抑えることができます
いわゆる片頭痛に適応のある薬を使いますが、予防薬はやや特殊なものも効きます。
少量からの投与なので、目立った副作用なく使用できる事がほとんどです。
『頭痛がひどくて学校に行けない』という状態であれば、メリットの方が多い治療と思います。
いずれの薬も副作用は『眠気』ですが、夜に飲む薬であるため、気にならない事が多いです。
- てんかんの薬、花粉症の薬や、うつ病の薬がとても効く事が多いです
小児・思春期片頭痛の予防薬
- 抗うつ薬(トリプタノール)
- ミグシス
- てんかん薬(バルプロ酸、トピナ)
- ペリアクチン
- プロプラノロール
- 漢方薬(呉茱萸湯、五苓散)
日本頭痛学会誌 46巻1号, 47-51
トピラマート(トピナ)は、保険適応外使用となりますが、予防効果が非常に高い薬です。
ですので、保険適応の薬物を優先して使用しても、効果不十分の際に検討されます。
また、リボフラビン(ビタミンB2)、マグネシウムも子供の頭痛の予防に効果があり、副作用も少ないため非常に飲みやすいです。
トピラマート(トピナ)は予防効果のエビデンスがとても高い.
JAMA Pediatr. 2013;167(3):250-258
リボフラビン(ビタミンB2)は頭痛予防薬としてエビデンスレベルが高い.
Prophylaxis of migraine headaches with riboflavin: A systematic review; J Clin Pharm Ther. 2017, Aug;42(4):394-403
リボフラビンは重篤な副作用がないく、小児の予防薬としても使用しやすい.
小児片頭痛の薬物療法について; 日本頭痛学会誌; 45: 36-38, 2018
-
子どもの頭痛は、『お薬の飲むこと』自体が大切かもしれない
-
『なにかを飲む』だけで、頭痛が良くなる可能性があります
前述のとおり、子どもの頭痛薬は種類が豊富です。
しかし、近年の大規模な研究では、子どもの頭痛は、『何かを飲む』だけで良くなるのかもしれない、という報告もあります。
『飲むもの』は、もちろん薬であっても良いし、薬でなくても良いのかもしれません。
子どもの頭痛は、プラセボ効果が期待できる
エビデンスレベルの高いアミトリプチリン(トリプタノール)やトピラマート(トピナ)は、プラセボ群と比較して有用性に差が見られなかった.
これらの薬物が無効ではなく、プラセボ効果が高いことにより、その有用性が否定されてしまったと考えるべきであろう.
CAMP study; NEJM, 376: 115-124, 2017
-
子どもの頭痛薬は、国ごとに違う
-
ヨーロッパで1番使われる子どもの頭痛薬『フルナリジン』は、日本にはありません
子どもの頭痛に対する予防薬は、国ごとに違います。
日本では、ミグシスという薬がよく使われます。
ヨーロッパでは、フルナリジンという薬が最もよく使われますが、日本人には不向きであり、本邦では発売中止になってしまいました。
米国では、トピナという薬がよく使われます。
このように、頭痛の治療は、各国の人種間の体質に合わせたり、保険適応に合わせて、薬を使い分ける必要があります。
欧州の第一選択薬は、日本では使えない
ヨーロッパでは、小児の片頭痛予防薬としてフルナリジンのエビデンスレベルが高く、欧州神経学会連合(EFNS)ガイドラインにも収載されているが、日本では使うことはできない.
小林, 日本頭痛学会誌; vol 46, No3 : 576-584, 2020
子供の頭痛は生活指導も重要
お子さんの頭痛の改善は、生活指導もとても大切です。
これらはご家族の協力なしには成立しません。
また、『お子さん本人が頭痛で困っている状況』をご家族の方が受け入れてあげる支持的な姿勢も、治療において力になります。
- 睡眠時間を確保する
- 規則正しい生活(早寝・早起き)
- 朝ごはんをきちんと食べる
- 朝に水分摂取をする
- 日中の空腹を避ける
- 適度な運動が良い
- 寝る前に明るい液晶画面を見ない
(スマホ、PC、テレビ、ゲーム) - 頭痛で困っているお子さんを受け入れる
1番大切なのは、睡眠時間を確保するということです。
また、日中の空腹を避けるということも意外と大事です。
昼ご飯(給食)直前の授業中での頭痛が多いと言われています。
子どもの偏頭痛は、生活習慣も重要
朝食を十分にとるようにする.
給食前の4時限目の授業中に頭痛になる子供がいる.
日本頭痛学会誌 46巻1号, 47-51
子どもの頭痛は、学校生活に支障が出る
頭痛もちのお子さんは、学校に行きたくても行けなくなります。
お父さんお母さんとしては、子供が頭痛で学校を休んだとなればとても大変ですし、心配なこととと思います。
子供でも頭痛の訴えをする子は多いです。
幼稚園児も頭痛の訴えがあったりします。
女の子は小学校2年生くらいから頭痛の訴えが増える
女の子は小学校2年生くらいから、男の子は小学校4年生くらいから、頭痛の訴えが増えてきます。
ご両親よりたびたび頭痛の発症年齢の質問を受けます。
多くは片頭痛の事が多いですが、脳腫瘍や奇形の除外のため、繰り返す頭痛には画像検査をおすすめします。
- 子供の頭痛は多く、クセになる前に予防薬の治療をした方が良い
- 女の子の方が、頭痛が始まる年齢が早い
- 女の子は小2から、男の子は小4から頭痛の訴えが増えてくる
-
『子どもの頭痛』がクセになりやすいパターン
-
小学生の女の子は、頭痛がクセになりやすいです
小学生の女の子で、頭痛を発症して、2年くらい頭痛が続いていると、頭痛がクセになりやすいです。
また、痛み止めを飲みすぎている場合も、頭痛がクセになりやすいです。
痛み止めの回数を減らすために、予防薬の内服をおすすめします。
予防薬は種類が多いので、適切に選び、量を調整する必要があります。
小児・思春期に頭痛がクセになりやすい人
頭痛が慢性化する危険因子
- 女子
- 13歳前での発症
- 精神疾患の合併
- 薬物過量
- 2年以上の頭痛歴
橋本, 日本頭痛学会誌 45巻3号, 489-492
朝起きられず不登校になる頭痛は、起立性調節障害かも?
朝しんどくて起きられれない場合は、“起立性調節障害(きりつせい・ちょうせつ・しょうがい)” を合併しているかもしれません。
(『朝は元気』であれば、『起立性調節障害』を心配する必要はありません)
子供の頭痛の少なくとも3割は、起立性調節障害を合併していると言われています。
この病気かどうかは、姿勢による血圧の検査をするとわかります。
起立性調節障害を合併している場合は、頭痛そのものの治療よりも、起立性調節障害の治療を優先して行った方が、症状が良くなりやすいです。
起立性調節障害と頭痛の合併は子どもに多い
小児の頭痛で起立性調節障害を合併している割合は、32.4 – 52%
日本頭痛学会誌 46巻1号, 2020
起立性調節障害の治療を、頭痛治療よりも優先して行う
起立性調節障害に共存する頭痛は、起立性調節障害の治療を優先して方が良い
日本頭痛学会誌 44巻:122-126, 2017
『朝、起きれない』というお子さんは、実は『起立性調節障害(きりつせい・ちょうせつ・しょうがい)』かもしれません。 起立性調節障害は、自律神経の障害で、朝起きられなかったり、頭痛が起こったりする子どもの病気です。 『朝起きられない[…]
おなかが痛くなる頭痛もある
『腹部片頭痛(ふくぶ・へんずつう)』という頭痛があります。
これは名前のとおり、『お腹が痛くなって、頭も痛くなる』という頭痛です。
この時の腹痛は、吐き気を伴うことも多いです。
診断のためには、腹痛を繰り返す事が条件になりますが、この病気の存在を知っていると、1回目からでも疑うことはできます。
時々、大人の腹部片頭痛もお見かけします。
腹部片頭痛とは?
腹部片頭痛は、小児周期性症候群に分類され、腹痛発作を繰り返し、後に片頭痛に移行することが多い
国際頭痛分類第 3 版β版. 東京, 医学書院, 2014, p14
子どもも大人も、『お腹が痛くなる片頭痛』は起こる
腹部片頭痛は、成人例も報告されているが、症例数が少ないためあまり認知されていない。そのため、診断や治療に難渋することがある
日本ペインクリニック学会誌 Vol.23 No.1, 2016
まとめ:子どもの頭痛は選択肢が広い
小児の頭痛は治療の選択肢が広いです。
また、薬を使わない治療、つまり生活指導も大切です。
信頼関係を築ける理解ある先生に巡り合えると良いですね。