【CT撮らないとわからない】首が固い・回らない!治らない原因は?【Crowned dens syndrome】

首が回らない、動かない時に、見逃しやすい病気は、『Crowned dens syndrome(クラウンド・デンス・シンドローム)』です。

日本語では、『頸椎偽痛風(けいつい・ぎつうふう)』または『環軸関節偽痛風発作(かんじくかんせつ・ぎつうふうほっさ)』と言います。

 

頸椎偽痛風・Crowned dens syndromeとは?

Crowned dens syndrome(頸椎偽痛風)は、頭蓋骨と頸椎の間に、トゲのあるカルシウムが沈着し、首がとても痛くなる病気です。

首の動きも制限され、首がまったく回らなくなります。

 

この沈着するカルシウムのことを『ピロリン酸カルシウム』と言います。

ピロリン酸カルシウムが沈着する病気を『偽痛風(ぎ・つうふう)』と言うため、この病気は頸椎偽痛風と呼ばれます。

 

高齢者に多い病気ですが、国内でも4歳の女の子に発症した症例報告もあります。

4歳の女の子の頸椎偽痛風の症例報告(高知県)

  • 突然の頚部痛、38度台の高熱、CRP 4.6mg/dL
  • XPで疑い、CTで診断(後頭頸椎間に石灰化)
  • アセトアミノフェン無効
  • メフェナム酸は有効
  • 1週間で自宅退院
  • 退院2週間後に炎症反応正常化
  • 改善後は再発なし
  • 退院1年2ヶ月後にCTで石灰化が消失

 

阿部, Crowned dens syndromeの4歳女児例, 日本小児放射線学会雑誌 33(2): 149-152, 2017

 

頸椎に沈着する結晶

  1. ピロリン酸カルシウム
  2. ハイドロキシアパタイト

ピロリン酸カルシウムが多いですが、ハイドロキシアパタイトも沈着して、Crowned dens syndrome を引き起こします。

 

頸椎偽痛風・Crowned dens syndromeの症状

  1. 首が回らない
  2. 首が固い
  3. 『うなづく』動作ができない
  4. 首を後ろに曲げてアゴを上に向けない
  5. 発熱
  6. 頭痛

Crowned dens syndrome はとにかく首が固くなります。

首が曲げられないし、回せません。

首から後頭部の痛みがあり、時に熱発します。

 

症状で1番似ていて怖い病気は、『髄膜炎(ずいまくえん)』です。

髄膜炎の場合は、腰から針を刺して髄液(ずいえき)を採取し、髄液中の炎症反応を見て、髄膜炎を診断します。

逆に髄液中に炎症所見がなければ、Crowned dens syndrome を強く疑うこととなります。

 

 

頸椎偽痛風・Crowned dens syndromeの診断

Crowned dens syndrome は、CTで診断する

頸椎偽痛風・Crowned dens syndrome は、CTでなければ診断できません

レントゲンでは、よく見えず、しばしば見逃されます。

ピロリン酸カルシウムの結晶は、頸椎歯突起の背側に沈着することが多いです。

時に腫瘤を形成して、神経(頸髄)を圧迫します。

 

Crowned dens syndromeは、頸椎MRIよりも頸椎CTの方が診断しやすいです。

しかし、その他の病気(がん・脊髄症・頚椎症など)を診断するためには、頸椎MRIも有効です。

 

頸椎偽痛風は、レントゲンでは診断できない

主に環軸関節t字靱帯の横靱帯に発症する.

単純写真では描川困難であり、穿刺も困難である.

佐藤, 環軸関節偽痛風発作 (crowned dens syndrome) のCT診断, 日本医事新報 (4879): 1-1, 2017

頸椎偽痛風は骨腫瘍として神経圧迫することあり

神経症状の出現はまれだが,ピロリン酸カルシウム結晶が腫瘤を形成し脊髄を圧迫する場合がある.

Wells CR,  Cervical myelopathy due to calcium pyrophosphate dihydrate deposition disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1991; 54: 658-9

 

 

血液検査も有効│CRPが上昇する

頸椎偽痛風・Crowned dens syndrome は、血液検査でCRPが上がります

頸椎偽痛風・Crowned dens syndromeの診断は、画像所見だけではありません。

熱発を伴ったり、血液検査で炎症反応であるCRPが上昇することで疑えます。

 

Crowned dens syndromeの鑑別診断

除外するべき病気

  1. 髄膜炎
  2. 巨細胞性動脈炎(血管炎)
  3. リウマチ性多発筋痛症
  4. 化膿性脊椎炎

中島, 早期に診断, 治療し得たcrowned dens syndrome 2症例の経験, 日本ペインクリニック学会誌 28(12): 253-257, 2021

 

 

頸椎偽痛風・Crowned dens syndromeの治療│ロキソニン・ステロイド

  1. ロキソニン
  2. ステロイド(プレドニゾロン)

頸椎偽痛風に限らず、偽痛風はすべてロキソニンが有効です。

重症例では、ステロイドを使用します。

適切な治療が行われると、3週間程度で症状が良くなります

 

治療しても、画像上は石灰化はよくならず、むしろ大きくなっている場合があります。

ですので、治療の効果判定に、CT画像はあまり有効ではありません。

あくまでも症状が良くなっているかどうかで治療の効果を判定していきます。

 

神経症状がある場合は、まれですが手術になることがあります。

 

頸椎偽痛風にはロキソニンが有効

画像検査ではCTで冠状,馬蹄様に石灰化病変が軸椎歯突起周囲をとりまくのが特徴的であり,治療はNSAIDs著効例が多い.

Goto S:Crowned Dens syndrome. J Bone Joint Surg Am 89:2732-2736, 2007

Crowned dens syndromeは3週間で治る

Crowned dens syndromeと診断された 13 例で、ステロイドもしくは NSAIDs での治療が行われ、数日から 3 週間で症状は改善した.

Malca SA. Crowned dens syndrome: a manifestation of hydroxy-apatite rheumatism. Acta Neurochir (Wien) 1995; 135:126-130