腎臓が悪いと、最後は透析(とうせき)になります。
透析は、命をつなぐ大切な治療ですが、1週間に3回、1日4時間程度、ベッドで寝ながら血液を入れ替えないといけません。
当然、病院へ行く往復の時間もありますし、天気が悪くても、予約に遅れずに行かなければいけません。
透析は辛い治療ですが、いきなり透析になるわけではありません。
段階的に、徐々に腎臓が悪くなり、透析に至ります。
この『徐々に腎臓が悪くなっている段階』で適切な治療を行えば、腎臓を長く守り続けることができるかもしれません。
腎臓を長持ちさせる方法
腎臓を長持ちさせる方法は、薬の種類を微調整することと、食べ物です。
腎臓を長持ちさせるための特効薬はないので、腎臓を攻撃する病気に対しての薬を、腎臓に負担のかからないものに変更していく必要があります。
高血圧の薬
- 血圧を 130/80 mmHg 未満にする
- タンパク尿が出ている人は、厳格に血圧を管理すると、腎臓が長持ちする
- タンパク尿が出ている人、または糖尿病がある人は、薬の種類を特殊なもの(RAS阻害薬)に変更すると、腎臓が長持ちする
- 厳格に血圧を管理すると脳卒中が減る
高血圧の薬を、特殊な薬(RAS阻害薬)に変更するべき人は?
- 糖尿病の人
- タンパク尿が出ている人
腎臓を長持ちさせるために、 高血圧の薬を『RAS阻害薬』というタイプに変更しなければいけない場合があります。
タンパク尿や糖尿病がなければ、腎臓がちょっと悪くても、ふつうの高血圧の薬(アムロジピン・ニフェジピン)でも問題ありません。
RAS阻害薬を注意して使う人は?│腎臓が極端に悪い人は注意
- 高齢者(75歳以上)
- 腎臓が極端に悪い人
腎臓が悪い人には、RAS阻害薬はとても良い薬です。
しかし、腎臓が悪すぎる人には、RAS阻害薬で腎臓が突然悪くなってしまうかもしれません。
腎臓が悪すぎる人で高齢者の場合は、突然ドンッと腎臓が悪くなることがあったり、カリウムの値が上がったりするため、RAS阻害薬をごくごく少量から飲んでいきます。
参考│
・日本腎臓学会, エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018
・岡田, 保存期CKD : 脳心血管病抑制のための治療総論, 腎と透析 90(1): 112-115, 2021
・Papademetriou V: Cardiovascular outcomes in action to control cardiovascular risk in diabetes:Impact of blood pressure level and presence of kidney disease. Am J Nephrol 43: 271-280, 2016
・Bangalore S: Blood pressure targets in subjects with type 2 diabetes mellitus/impaired fasting glucose: observations from traditional and bayesian random – effects meta – analyses of randomized trials. Circulation 123:2799-2810, 2011
・Cheung AK: SPRINT Research Group:Effects of intensive BP control in CKD. J Am Soc Nephrol 28:2812-2823, 2017
糖尿病
- 腎臓が悪くなったら、糖尿病を厳しく管理する必要はない
- ヘモグロビンA1cをがんばって下げすぎると、低血糖になってむしろ死亡率が上がる
糖尿病があると、腎臓が悪くなって透析になってしまいます。
しかし、糖尿病の値(HbA1c)を下げすぎると、逆に命を落としてしまうかもしれません。
ですので、腎臓が悪くて糖尿病がある場合は、HbA1cはそこそこ低めくらいのコントロールで良いです。
世界の大規模研究でわかったこと
・腎臓が悪い糖尿病の患者さんで、HbA1cを6.0%未満に下げると死亡率が上がります(死因は、低血糖・心筋梗塞など:ACCORD研究)。
・腎臓が悪い糖尿病の患者さんで、HbA1cを6.5%未満に下げると、腎臓は長持ちしますが、心筋梗塞での死亡は減りませんでした(ADVANCE研究)。
参考│
・ACCORD Study: Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes. NEJM: 358:2545-2559, 2008
・ADVANCE study, Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. NEJM: 358:2560-2572, 2008
腎臓が悪くなると使えなくなる糖尿病の薬
- SU剤
- メトグルコ・メトホルミン
- アクトス
- SGLT2阻害薬
腎臓が悪くなったら、薬を徐々に減らしていき、インスリンなどの薬に切り替える必要があります。
特にメトグルコ(メトホルミン)・SGLT2阻害薬は、糖尿病の初期から処方される薬なので、腎臓が悪くなったあとも高用量で飲み続けている場合があり注意です。
腎臓が悪くなっても、インスリン・αグルコシダーゼ阻害薬、一部のインスリン分泌促進薬は、使用できます。
尿酸
- アロプリノール(ザイロリック)を使って尿酸 6.0mg/dL 以下に下げるのが良い
- フェブリク(フェブキソスタット)は、死亡率を高めるおそれがある
尿酸は、腎臓を守るためには値を下げた方が良いです。
ただし、腎臓が悪い人は減量して処方してもらう必要があります。
参考│
・White WB: CARES Investigators:Cardiovascular safety of febuxostat or allopurinol in patients with gout. NEJM 378: 1200-1210, 2018
高脂血症
- 悪玉コレステロールは下げた方が良い
- 中性脂肪は、下げる必要はあまりない
悪玉コレステロールは、低くした方が良いです(120mg/dL以下)。
中性脂肪を下げる薬は、腎臓が悪いと使いにくいため、あまりメリットがありません。
*中性脂肪を下げる薬(フィブラート系)は、腎臓が悪いと禁忌・慎重投与になります。
血液さらさらの薬
一部の血液さらさらの薬は、腎臓が悪くなりすぎると使えなくなります。
ワーファリンに変わる新しい血液さらさらの薬(DOAC)が2010年頃に発売されました。 新しい血液サラサラの薬は数種類あり、すべてをまとめて『DOAC(どあっく)』と言います。 ワーファリンがなくなったわけで[…]
結論
- 高血圧はRAS阻害薬でしっかり下げる
- 糖尿病の値は、はじめはがんばって下げ、腎臓が悪くなったらそこそこで良い
- 尿酸の薬は、アロプリノール(ザイロリック)が良い
腎臓を長持ちさせる時に使う薬は、RAS阻害薬とアロプリノールです。
なるべく透析にならないように、主治医の先生に腎臓を守ってもらうようにしましょう。