日本は透析患者さんが世界一多い国です。
その分、腎臓の保護に力を入れている国ということでもあります。
腎臓を守るためには、学校検診での尿検査も力を入れる必要があります。
- 日本の透析患者は世界一多い
- 日本の透析患者数は世界一です。
日本だけで34万人の透析患者さんがいます。
世界の透析患者の7分の1が、日本の透析患者さんです。
検診の尿検査の目的
- 3歳時の検尿 → 生まれつきの奇形を探す
- 学校検診の検尿 → 病気(腎炎)を探す
3歳児の検診では、生まれつきの内蔵の奇形を引っ掛ける検診です。
学校検診は、子供の時期に発症する病気の中でも、気づきにくいもの(腎炎)を引っ掛ける検診です。
腎炎はゆっくり進行するため気づきにくく、放置しておくと、成人してすぐに透析が必要になる場合もあります。
- 生まれつきの腎臓の奇形=先天性腎尿路異常
- 小学生で発症する腎臓の病気=慢性糸球体腎炎など
学校の尿検査で早期発見できる
子供の腎臓病の10-20%が、学校検診で見つかっています。
このおかげで、子供の透析が海外よりも減っています。
- 子供の透析は、海外よりも少ない
- 20歳未満の原発性糸球体腎炎による腎不全患者数は日本では米国の4分の1と報告あり
参考│服部, Auunal review 腎臓. 136-141, 2006
検尿の精度を高めるために
- ビタミンCを取りすぎるとデータが狂う(=尿潜血が偽陰性になる)
ビタミンCを過剰摂取すると、尿潜血を見逃しやすくなります。
つまり、尿潜血が偽陰性になります。
ですので、正確に判定するためには、1ヶ月くらいビタミンCの摂取を控えましょう。
尿検査での異常
血尿単独であれば、問題ないことが多いです。
蛋白尿単独であれば、体位性蛋白尿のことが多いです。
しかし、両方ある場合は、高い確率で、腎臓の病気(腎炎)が見つかります。
血尿の判定
- 血尿単独の場合は、原因不明の血尿が最も多い
血尿単独で異常がある場合は、いくら調べても原因がわからない『無症候性血尿』かもしれません。
無症候性血尿の場合、3分の1が、『良性家族性血尿』という遺伝的な良性の血尿です。
その他、高カルシウム尿症もあります。
目で見てわかるくらいの血尿が出れば、IgA腎症かもしれません。
小学生未満であれば、遺伝的な異常(アルポート症候群など)かもしれません。
- 血尿単独の場合に考える病気
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- 無症候性血尿(最多)
- 良性家族性血尿
- 特発性高カルシウム尿症
- ナットクラッカー現象
- 尿路結石
- 先天性腎疾患
- 腎腫瘍(ウィルムス腫瘍など)
特発性高カルシウム尿症の診断は、尿カルシウム/尿クレアチニン比 0.21以上。
蛋白尿の判定
- 『体位性タンパク尿』が最も多い
尿蛋白はいろいろな原因で検出されます。
熱が出ただけてもたまたま蛋白尿が出ますし(熱性蛋白)、姿勢で蛋白尿がたまたま出たりします(体位性蛋白尿)。
典型的には、体位性蛋白尿は、立った状態や、中腰姿勢(腰を曲げた状態)で、蛋白尿が出ることを言います。
小学生のタンパク尿を見つけたら、体位性蛋白尿の否定が必要です。
体位性蛋白尿であれば、何も問題はありません。
体位性蛋白尿が否定された場合は、無症候性蛋白尿と呼び、腎臓の病気があるかもしれません。
- 尿蛋白/尿クレアチニン比
- 尿中β2ミクログロブリン
尿蛋白が出た場合は、①尿蛋白/尿クレアチニン比、②尿中β2ミクログロブリンを測ります。
尿蛋白/尿クレアチニン比は、0.15以上を異常と判定します。
尿中β2ミクログロブリンは、30μg/mgCr 以上で異常と判定します。
- β2マイクログロブリンとは?
- 尿中β2ミクログロブリンは、尿細管の異常を反映します。
先天性の尿路異常で、この値は上昇します。