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膠原病の診断・検査│抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は重症【医師向けの専門的な内容】

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膠原病は、さまざま症状をきたす病気です。

膠原病の種類によって、症状や診断方法は違います。

 

膠原病(こうげんびょう)検査の種類

膠原病検査
 項目 疑う病気 Drコメント
抗核抗体
(こうかく・こうたい)
膠原病すべて ・加齢でも値が上がる
 RF
(リウマチ因子)
リウマチ ・リウマチ初期には陽性にならないことあり
・抗CCP抗体・MMP3抗体も合わせて測る
抗DNA抗体 SLE
抗Sm抗体 SLE ・抗U1-RNP抗体と同時に動く
抗RNP抗体 MCTD
(混合性結合組織病)
抗ARS抗体 皮膚筋炎 ・抗TIF1-γ抗体、
抗ARS抗体,
抗Mi-2抗体,
も合わせて測る
・悪性腫瘍(がん)の除外が必要
抗SCL70b抗体
(抗Scl-70抗体)
強皮症 ・初期からレイノー
・食道機能低下
・全身臓器の線維化
抗SS-A抗体
抗SS-B抗体
シェーグレン症候群
ANCA
(MPO/PR3)
血管炎 ・がん、感染症でも値が上がる
・薬の副作用(バセドウ病の薬)でもMPOが上がる
・原因不明の体重減少、不明熱で測る

 

 

膠原病の種類と特徴

膠原病検査
 項目 抗体 Drコメント
巨細胞性動脈炎 なし ・日本の高齢者に多い
・強い頭痛
・血沈1時間値50mm以上
・リウマチ性多発筋痛症(3割合併)
ANCA関連血管炎 ・MPO-ANCA
・PR3-ANCA
・MPO-ANCAは高齢者に多い
・皮下出血、紫斑
・多発性単神経炎
・肺、腎
SLE
(全身性エリテマトーデス)
・抗核抗体
・抗DNA抗体
・抗Sm抗体
・抗リン脂質抗体症候群を合併
・CRPは上がりにくい
・C3,C4が低い
強皮症 ・抗セントロメア抗体
・抗SCL70抗体
・高齢者にも多い
MCTD
(混合性結合組織病)
・抗RNP抗体 ・数年後にSLEと診断されることあり
シェーグレン症候群 ・抗SS-A抗体
・抗SS-B抗体
・口の中が乾燥
・ドライアイ
・サリグレン
・サリベートエアゾール
皮膚筋炎 ・抗ARS抗体
・抗RNP抗体
・抗TIF1-γ抗体
・抗Mi-2抗体
・抗MDA5抗体
・左右対称の筋力低下
・皮膚症状あり(まぶた、手の甲)
・CK上昇
・筋MRIで炎症あり
・がんの検査が必要
多発筋炎 ・皮膚筋炎と同じ症状で、皮膚症状のないもの
ベーチェット病 なし ・口内炎(繰り返す)
・陰部潰瘍
・皮膚が荒れやすい
・レミケード(インフリキシマブ)
成人スティル病 ・フェリチン ・サーモンピンク皮疹

膠原病を診断するときは、心臓の怖い感染症である『感染性心内膜炎』ではないことを確認しつつ、診断する必要があります。

 

巨細胞性動脈炎の診断・検査

高齢者で、強烈なこめかみの痛みがあれば、巨細胞性動脈炎を疑う

巨細胞性動脈炎は、日本では高齢者に多いですが、疑われないと診断できません。

総合病院の脳神経外科で、『こめかみの皮膚血管』を切り取って検査することで、確定診断となります。

また、リウマチ性多発筋痛症を合併(30-50%)することも診断のヒントになります。

巨細胞性動脈炎の診断基準

巨細胞性動脈炎の分類基準

1.50歳以上で初発症状あるいは所見が出現.
2.初めて経験する,あるいは今まで経験したことがないタイプの局所の頭痛
3.頸動脈の動脈硬化と因果関係のない側頭動脈に沿った圧痛あるいは拍動低下.
4.赤血球沈降速度1時間値50mm以上.
5.動脈への著明な単核細胞浸潤あるいは肉芽腫像と,通常,多核性巨細胞を伴う血管炎所見を認める.

上記5項目中少なくとも3項目以上が認められる場合,巨細胞性動脈炎と判定する(特異度91.2%,感度93.5%)

側頭動脈を生検し、炎症所見を確認することで確定診断となる。

 

皮膚筋炎の診断・検査

  1. 抗ARS抗体 → 診断
  2. 抗MDA5抗体 → 重症
  3. 抗TIF1-γ抗体 → がん
  4. 抗Mi-2抗体 → 軽症

皮膚筋炎を疑った時、これら4つの抗体は、保険診療で検査可能です。

以前は、皮膚筋炎と言えば、抗Jo1抗体の検査がされていましたが、検査の精度が良くありませんでした。

現在では、皮膚筋炎を診断するために、抗Jo1抗体に代わって、抗ARS抗体が計測されるようになりました。

抗MDA5抗体が陽性のときは、重症の間質性肺炎になることが多く、強力な治療をしなければいけません。

抗TIF-1抗体が陽性のときは、がんの合併に注意です。

抗Mi-2抗体が陽性のときは、軽症が多いです。

皮膚筋炎は、がんの合併に注意│抗TIF1-γ抗体

皮膚筋炎の症例で、抗TIF1-γ抗体が陽性の場合は、陰性の場合に比べて、悪性腫瘍が見つかる確率が18倍 高い.

抗TIF1-γ抗体 陽性の皮膚筋炎は、全身スクリーニング検査が必要である.

Trallero-Araguas E et al: Usefulness of anti – P155 autoantibody for diagnosing cancer-associated dermatomyositis : a systematic review and meta-analysis. Arthritis Rheum 64:523-532, 2012

その他の抗体として、抗NXP-2抗体は、皮膚筋炎の約2%でしか陽性とならないため、当院では積極的には検査していません。

抗ARS抗体は効率的│複数の抗体を1度に検査

抗ARS抗体は、抗Jo1抗体を含めた複数種類の自己抗体をまとめて検査できる抗体です

抗ARS抗体は、一度に複数の抗体を検査できる便利な検査です。

抗ARS抗体が陽性だと、間質性肺炎、機械工の手、レイノー、多関節炎、の症状が出る『抗ARS抗体症候群』と呼ばれたりします。

 

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は重症│命に関わる難病

抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎は重症です。

命に関わる病気かつ難病です。

手のひら側の指の関節に赤い発疹が出ます。

八代亜紀さんがこの病気だったと言われています。

 

強皮症の診断・検査

手の指が固くなって、レイノーがあれば疑う。自己抗体が陽性であれば、強皮症と診断する

手の指が固くなったり、レイノー(寒いと手先が白くなる現象)があれば、念のため、強皮症の自己抗体を計測しておきます。

強皮症は初期からレイノー症状

強皮症では、初期から『寒いと手先が白くなる』という『レイノー症状』が出ます。

逆に、レイノー症状があれば、強皮症を疑って、積極的な検査が必要です。

レイノー症状のみであれば、手先が温まる塗り薬を処方します。

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