ペア血清とは?【ウィルス感染を診断するテクニック】医療者向け内容

ウィルス感染症の診断方法で、いろいろな種類があります。

新型コロナウィルス感染症の流行で、ウィルスの遺伝子があるかどうかを直接調べる『PCR検査』が有名になりました。

PCR検査は精密で確実な検査ですが、すべてのウィルス感染症で行える検査ではありません

COVID-19などの特別なウィルスを除き、一般的には『抗体』を使った検査を行います。

抗体検査には、IgMとIgG検査があります。

ウィルスの種類によっては、複数回の抗体検査を行う『ペア血清検査』を行い、診断を確定することがあります。

 

ペア血清とは?│ウィルス感染を診断するテクニック

ペア血清とは、感染症の診断をするときに行う検査方法です。

症状が出た数日以内の『感染初期』の抗体と、2-4週間して症状が落ち着いた頃の『回復期』の抗体の結果を比べることで、診断をします

『ペア血清による診断』は、主に小児科や内科などで使われる診断テクニックですが、帯状疱疹などでは耳鼻科でも行われます。

ペア血清に対して、感染初期に1回の検査で診断する抗体検査は『シングル血清』と言います。

シングル血清では、IgMで診断します。

 

ペア血清で診断する病気

  1. 帯状疱疹
  2. 水ぼうそう
  3. 麻しん
  4. 風疹
  5. その他のウィルス感染

 

ペア血清の診断方法

HI法、CF法の場合は、抗体価が4倍以上、上がっていれば、有意な上昇と判断します。

EIA法、CLIA法の場合は、抗体価が2倍以上、上がっていれば、有意な上昇と判断します。

また、感染初期に抗体陰性だったのに、回復期に陽性となっていた場合にも、感染症にかかっていたと診断できます。

 

HI・CF・PA・NT・IAHA法│4倍以上

ペア血清の抗体価が4倍以上で有意な上昇と判断します

 

EIA・CLIA・ECLIA・RIA法│2倍以上

ペア血清の抗体価が2倍以上で有意な上昇と判断します

 

ECLIA法の方が、CLIA法よりも、より高精度と言われています。

Shipkova M, Vogeser M, Ramos PA, et al . Multicenter analytical evaluation of a novel automated tacrolimus immunoassay. Clin Biochem, 2014; 47 : 1069-1077

 

 

抗体価の測定の種類

  • 階段血清希釈法 → HI・CF・PA・NT・IAHA法
  • 一定濃度希釈法 → EIA・CLIA・ECLIA・RIA法

階段血清希釈法(かいだん・けっせい・きしゃくほう)一定濃度希釈法(いってい・のうど・きしゃくほう)があります。

階段血清希釈法では、『倍数』で結果表示されます。

一定濃度希釈法では、『連続した数字』で結果表示されます。

これらの中でも、EIA法は、IgMとIgGを区別して計測することができます

感染初期に、IgMが上昇しているだけで診断をつけることも可能であるため、EIA法は便利な方法です。

 

HI法は、NT法よりも手技が容易です。ただ、病気によっては感度が低い場合があります。

麻しんHI法では検査結果が正しく出ない場合があります。風疹HI法は、感度は良好です。

 

CF法は、感染初期のみ有効です。早期に陰転化するため、ワクチンの効果判定には使えません。

 

EIA法は、感度が鋭敏であるため検査コストが高いですが、便利です。

EIA法では、IgM抗体を計測することが可能です。

 

基本的に「~IA法」は、小数点以下まで、数値が出ます。

 

ウィルスごとの抗体検査

ウィルス種類 シングル血清
の診断
ペア血清
の診断
免疫の有無
(ワクチンの必要性)
水ぼうそう
帯状疱疹
EIA-IgM  EIA-IgG
IAHA
NT
EIA-IgG
IAHA
NT
麻しん EIA-IgM  EIA-IgG
PA
NT
EIA-IgG
PA
NT
風疹 EIA-IgM  EIA-IgG
HI
EIA-IgG
HI
EBウィルス EIA-VCA IgM EIA-VCA IgG EIA-VCA IgG
サイトメガロウィルス EIA-VCA IgM EIA-VCA IgG EIA-IgG

 

帯状疱疹の抗体検査の判断

  1. EIA-IgM 0.8以上
  2. EIA-IgG 50以上
  3. EIA-IgGペア血清 2倍以上の上昇

上記のうちいずれか1つでも満たせば帯状疱疹の可能性が高い

帯状疱疹を正しく診断する場合、発症初期(初診時)に、IgMとIgGを検査する必要があります

帯状疱疹は全例、血液検査が必要ではなく、医師が見た様子(視診)で診断できることがほとんどです。

しかし、特に治療に難渋しそうな帯状疱疹や顔面神経麻痺を伴う帯状疱疹を疑ったら、血液検査を併せた方が無難です。

(ただし、同月のIgM・IgGの再検査は、保険診療として認められない場合があり、医療者側は注意が必要です)

帯状疱疹の既感染パターン・再活性化パターン

  • 既感染パターン → 感染初期にIgGが高値
  • 再活性化パターン → 既感染パターンで、2-4週間後のIgG値がさらに上昇

再活性化パターンで症状が出ている場合、感染初期のIgMは陰性のこともある

帯状疱疹の感染初期に、IgG高値であった場合は、既に帯状疱疹に感染して抗体ができています。

これを『既感染パターン』と言います。

感染初期にIgG高値で、2-4週間後のIgG値がさらに上昇している場合は、ウィルスが再活性化して帯状疱疹の症状が出ていることを示し、これを『再活性化パターン』と言います。

この『再活性化パターン』の時は、感染初期のIgMが陰性であることもしばしばあります。

つまり、再活性化パターンの場合は、IgMだけのシングル血清では、診断がつかないということになります。

 

風疹の免疫の有無│ワクチン追加接種の必要性の判断

『風疹HI法 8以下』 は、MRワクチンの追加接種が必要です

風疹HI法は、8以下で予防接種の追加接種が必要です。

8以下なので、『8』の場合も打ちます

HI法は、階段血清希釈法であり、倍数表示されるので、『1,2,4,8』の結果であれば追加接種と覚えておきましょう。

また、接種するワクチンは、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)です。

以前は、風疹単独のワクチンがありましたが、現在は普及しておらず、MRワクチンを打つことになっています。

『風疹の免疫が弱いのでMRワクチンを打つ場合』に、麻しんの免疫の有無は通常検査することなくMRワクチンを接種しても問題ありません。