健診で指摘される『右脚ブロック・左脚ブロック』はだいじょうぶ?

心臓の『脚ブロック(きゃく・ぶろっく)』は、心臓に正しく電気が流れないことを示しています。

心臓には、右の心臓『右心室』と、左の心臓『左心室』があります。

右心室へ流れる電気がおかしいと『右脚ブロック』、左心室への電気がおかしいと『左脚ブロック』と言います。

右脚ブロックは、問題ないです。

左脚ブロックは、時々問題があります。

判断が難しい場合は、心臓の専門医の先生に診てもらうようにしましょう。

 

右脚ブロックは、問題ないことが多い

右脚ブロックは健康診断で指摘されることがありますが、健康上、問題となることはありません。

ただ、名前が怖いので、検診結果で見るとおそろしく感じるかもしれません。

右脚ブロックは、無症状で様子見とできることがほとんどです。

念のため、右脚ブロックを起こす病気がないかを確認をします。

右脚ブロックを起こす原因があった場合は、その病気に対しての治療を行います。

右脚ブロックに何らかの原因があることは、1%程度と少ないです。

  1. 先天性心疾患(生まれつきの心臓病)
  2. 肺性心(肺が悪い人)
  3. リウマチ性弁膜症(リウマチの人)
  4. 高血圧性心疾患(高血圧の人)
  5. 心筋梗塞・狭心症(突然状態が悪くなった人)

*上記異常があるのは右脚ブロックの1%程度

生まれつきの心臓病では、心房中隔欠損症が多いです。

右脚ブロックがきっかけで、狭心症・心筋梗塞が見つかったという症例報告がありますが、まれなものです。

右脚ブロックで注意することは、『ブルガダ症候群による突然死』です。

ブルガダ症候群は、死に至る不整脈を起こしやすい状態で、アジア人男性に多く『ポックリ病』として知られています

ブルガダ症候群のときは、右脚ブロックに加えて特殊な心電図異常(右胸部誘導のST上昇)を認めます

ブルガダ症候群

ブルガダ症候群は、若い人でも突然死する病気です。

V1とV2に特徴的な心電図変化が出ます。

波形によって、下記に分けられます。

・タイプ1: coved型

・タイプ2: サドルバック型

健診の心電図でも、約 0.2% の確率で見つかります。

ブルガダ症候群が見つかった場合、命を落とすような不整脈を防ぐために、ペースメーカーの埋め込み術(ICD)を行います。

 

参考・引用
・https://www.emnote.org/emnotes/brugada-syndrome
・影山, ブルガダ症候群, 臨牀と研究 93(11): 1431-1438, 2016
・Gourraud JB: Brugada syndrome: Diagnosis, risk stratification and management, Arch Cardiovasc Dis. 2017 Mar;110(3):188-195
・Brugada Phenocopy: The Art of Recognizing the Brugada ECG Pattern

 

 

参考│

・石川, 右脚ブロック, 日本医事新報 (4962): 39-39, 2019

・松田, 右脚ブロック波形を呈した非ST上昇型急性冠症候群の1例, 広島臨床検査 9: 16-19, 2020

・杉山, 胸部絞扼感の発作で来院…右脚ブロックは “良性” との決めつけは危険, 日本医事新報 (5004): 7-8, 2020

・岸谷, 健康診断時の心電図自動診断で見逃したブルガダ症候群の一例, 総合健診 44(5): 620-625, 2017

 

 

左脚ブロックは、精査が必要

左脚ブロックは、心臓が悪いことがあるため、精査が必要となります。

精査の結果、もともと心臓になにか病気があれば、その左脚ブロックの原因となっている病気に対して治療をしていきます。

  1. 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
  2. 弁膜症(心臓に雑音がある人)
  3. 高血圧性心疾患(高血圧の人)
  4. 心筋症

 

左脚ブロックでペーシングすることもある

ひどい左脚ブロックには『両心室同期ペーシング治療』

心臓の動きが悪くなる『心不全』になると、心臓の壁が伸び切って、電気の流れが悪くなり、左脚ブロックがますます悪化し、さらに心臓の動きが悪くなります。

このような負の連鎖になると、左心室の収縮が全体の心臓の動きと同期できなくなることが多いです。

その場合は、ペースメーカーで心臓の電気を統一させて同期させる『両心室同期ペーシング治療』を行うことがあります。

 

心臓の専門医への受診

心臓は動きのあるシンプルで難しい臓器です。

状態が安定するまでは、心臓の専門の先生のところへ受診し、心臓の状態を見ながら治療をしてもらうようにしましょう。