【『隠れリウマチ』を見逃さないように】血清反応陰性関節リウマチの診断と治療

リウマチの確定診断は、関節痛の症状と血液検査・超音波検査で行います

中には、『関節が痛いけど、血液検査ではリウマチっぽくない』という人もいます。

その場合でも、リウマチの治療がとてもよく効く場合があります。

『血液検査で異常なし』でも、実は『関節リウマチ』のことがあります

 

また、リウマチは『自分で自分の体を攻撃する病気』です。

リウマチも膠原病も、血液検査で『自分の体を攻撃する物質』を特定することができます。

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隠れリウマチとは?│血清反応陰性関節リウマチ(SNRA)

『血液検査でRFが低い』けど、リウマチのような症状がある人を『隠れリウマチ』と言います

血清反応陰性関節リウマチ(けっせいはんのう・いんせい・かんせつりうまち)は、『血液検査で問題はないが、リウマチ症状のある病気』のことを言います。

この病気では、関節リウマチで上昇するはずの『RF(リウマチ因子)』が上がりません

リウマチを疑って血液検査をするも、リウマチかどうかを診断するRF値が低いため、診断がなかなかつかないこともあります。

しかし、この病気を知っていれば、早く診断でき、治療を行うことができます。

『リウマチ』の正式名称は『関節リウマチ』

『リウマチ』の正式名称は、『関節リウマチ』と言います

一般的に言われる『リウマチ』の正式な名前は『関節リウマチ(かんせつ・りうまち)』です。

医学的な扱いでは下記の通りです。

  • 血清陽性関節リウマチ=SPRA=Seropositive RA
  • 血清反応陰性関節リウマチ=SNRA=Seronegative RA

初心者の覚え方は下記でOKです。

  • 一般的なリウマチ=SPRA
  • 隠れリウマチ=SNRA

関節リウマチではRFが高くなる

関節リウマチの診断は『RFが高い』ことを診断の根拠にします

リウマチを疑う関節症状があっても、RFが低いと『関節リウマチです』と言い切れません。

逆に『血清反応陰性関節リウマチ』が疑わしいということになります。

治療は、関節リウマチと同じです。

関節リウマチでは抗CCP抗体も高くなる

関節リウマチは、RFとともに『抗CCP抗体(こう・しーしーぴー・こうたい)』も上がります

関節リウマチは、抗CCP抗体も上昇します。

抗CCP抗体は、隠れリウマチではそれ程高くなりません。

 

隠れリウマチの診断│MMP-3高値・関節エコー

隠れリウマチ(血清反応陰性関節リウマチ)は、MMP-3が高くなります

血清反応陰性関節リウマチでは、血液検査でMMP-3値が高くなります。

MMP-3は、『関節が壊れている程度を示す値』です。

関節リウマチでも、隠れリウマチでも、関節はこわれているため、どちらでもMMP-3は上がります。

また、関節エコーで、滑膜(かつまく)や骨が壊れていれば、血清反応陰性関節リウマチと診断します。

(当院では関節エコーは現在行っていません)

  1. RF 陰性
  2. MMP-3 高値
  3. 抗CCP抗体 陰性
  4. 関節エコーのパワードップラー・シグナルあり

 

MMP-3は治療効果も判定できる

リウマチが良くなると、MMP-3値も下がります

MMP-3は、リウマチの治療効果を反映し、薬が効いていればMMP-3は下がっていきます。

MMP-3を測る目的は3つ│診断・予後予測・治療効果

MMP-3 を測定するおもな目的:

  1. 関節リウマチの診断時における補助検査
  2. 関節破壊の予後予測
  3. 疾患活動性と治療効果の評価

高橋, MMP-3, Rheumatology Clinical Research 3(3): 154-159, 2014

MMP-3が高すぎるときはリウマチ以外の関節炎かも?

大きな関節(肩・肘・膝)の炎症があると、関節リウマチでなくても、MMP-3が異常に高くなります

大きな関節(肩・肘・膝)が傷んでいると、関節リウマチではなくても、MMP-3が高度に上昇します。

関節リウマチは、指などの小さな関節が傷むことで、MMP-3が軽度上昇する病気です。

MMP-3 は傷んでいる関節の大きさによって、上昇の程度が変わります。

MMP-3高値は関節リウマチだが、異常に高すぎる場合は関節リウマチ以外の病気のこともある

日常診療でも MMP-3 が 1,000 ng/ml を超えるような異常高値を示す症例で,気づけば膝が腫れているという経験はよくある.

高橋, MMP-3, Rheumatology Clinical Research 3(3): 154-159, 2014

 

 

隠れリウマチの治療

隠れリウマチの治療は、一般的なリウマチと同じ治療です

隠れリウマチといえども、治療は一般的なリウマチと変わりません。

『ノドの扁桃腺を切り取る手術をすると、リウマチが良くなる』という報告も過去にはあります。

扁桃腺を切除すると、関節の症状が良くなることがある

扁桃病巣感染症として骨関節疾患, 皮膚疾患はよく知られている.

特に扁桃摘出術の効果が高いのは掌蹄膿庖症などの皮膚疾患, 関節リウマチ, などの骨関節疾患である.

森山, 血清反応陰性の骨関節疾患に対する扁挑摘出術の効果, 和歌山医学 53(4): 280-280, 2002