『正座した時の足のしびれ』を自覚したまま放置して座り続けると、血栓ができたり、また、足が壊死し、最悪の場合、命を落とすこともあります。
座った姿勢で血栓ができる有名な病気で、『エコノミークラス症候群』というものがあります。これは、足の血栓が立ち上がった瞬間に肺の血管に飛んで行って詰まってしまう病気です。
また、座りすぎで足の筋肉が痛んで壊死すると、筋肉中のカリウムなどのミネラルや有害物質が体中の血管の中に放出され、高カリウム血症を発症して命を落とすこともあります。
結論:『正座した時のしびれ』を放置すると、血管が詰まり、命を落とすこともある
正座したままでいると、血管が詰まる事があります。
足の血管が詰まると、筋肉が壊死して、筋肉内の有害物質が血流の乗ってしまい、心臓が停止し、死に至ることがあります。
また、血栓自体が、肺に飛んで行って大事な血管に詰まることがあります。
血栓が肺に飛んで行く病気はエコノミークラス症候群と呼ばれています。
『正座で足が壊死した』という症例報告あり
『正座で足が壊死する』というのは決して大げさな話ではありません。
2019年の報告で、くも膜下出血を発症して長時間にわたり正座のまま気を失っていたところ、足の筋肉が一部壊死したために、瀕死の状態になった症例報告があります。
正座姿勢で発見された横紋筋融解症を伴うコンパートメント症候群を呈したくも膜下出血の症例報告あり
日本臨床麻酔学会誌 39(6): S319-S319, 2019
通常であれば、正座で血流が悪くなれば、足がしびれて姿勢を崩したり、立ち上がったりします。
しかし、意識がないため、しびれた感覚がわからず、そのまま足が一部壊死を起こしたということです。
正座で足がしびれるのは、『足の血流の障害と再開』が原因
正座の時に足がしびれる原因は、足の血流の異常のために、神経に異常電流が流れるからです。
正座のはじめに、血流が止まることでしびれが出現し、その後、血流再開をすることで、もう1回、びりびりした痛みを自覚します。
この『しびれ』という感覚がないと、前述のように、知らない間に足が壊死してしまうことがあります。
正座をすることで、脛骨粗面および外果でそれぞれ膝窩動脈と後脛骨動脈が圧迫されて、下腿から足を支配する総腓骨動脈に循環不全をきたし、必要な酸素が足りなくなります.そのため末梢神経に異常電流が流れ、「しびれ」として感じることが、正座したときのしびれの大きな原因です.
治療VoL95, No,4, 2013,4
われわれは、日常においては正座による下肢の血流低下、その後正座を崩した直後の血流の再開によりビリビリとした強いしびれを経験する
YAKUGAKU ZASSHI, 140, 1-6(2020)
TRPA1の過敏化でしびれが起こる
組織に血流がいかなくなると、脊髄の後根神経節にあるTRPA1が過敏化して、しびれを生じると言われています。
しかし、しびれの細かいメカニズムはまだ解明されていません。
ですので、有効な薬が少ない状態なのです。
これまで痛みに対する研究は精力的に実施されており様々な鎮痛薬が開発されているのに対し、しびれに関する研究はいまだ全く進んでおらず、そのメカニズムも不明である
医学のあゆみ Vol.260 No4, 2017, 1.28
正座で膝も痛くなる
正座すると足のしびれとともに、膝も痛くなります。
この膝の痛みは、体重が大きいと、痛みが強くなることが感覚的にも理解できると思います。
膝関節の痛みは体重が大きいほど,正座時間が長いほど痛みが大きいことが認められた
成人病と生活習慣病 47(5): 642-643, 2017.
正座中に『足のしびれ』を感じたら、我慢せず姿勢を変えよう
正座していて足のしびれを感じたら、姿勢を変えていきましょう。
足のしびれを感じにくい方は、時間を決めて姿勢を変えましょう。
足のしびれを感じる方はまだ良いですが、足のしびれを全く感じなければそのまま足が壊死してしまうかもしれません。
足の血行や色などを確認することで、正座を安全にしていけると思います。