花粉症・果物アレルギーの検査・治療│子供と大人のアレルギー

 

大人のアレルギー

大人のアレルギーの病気の代表は花粉症です。

しかし、食べ物でのアレルギーを小児期より継続している方も多いです。

子供の頃に注意すると、大人になってからのアレルギーが予防できることが明らかになってきました。

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食べ物のアレルギー

1番多い食物アレルギーは、『卵アレルギー』です。

生まれたての赤ちゃんでは、3大アレルギーである、卵(ニワトリ)・牛乳・小麦、の発症に気をつけます。

2歳ごろから、魚卵・ピーナッツ、が増えてきます。

4歳以降では、果物が増え、成人では魚介類・甲殻類、が増えてきます。

  •  卵(鶏卵)アレルギーが最多

  • 0歳ー1歳: 卵(鶏卵)・牛乳・小麦
  • 2歳: 魚卵・ピーナッツ
  • 4歳以降: 果物
  • 成人: 魚介類・甲殻類

参考│
消費者庁, 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業, 2016

 

 

アレルギー検査

  1. 血液検査
  2. 皮膚テスト
  3. 内服テスト

*当院では上記のうち、血液検査のみ実施しております

アレルギー検査には、主に血液検査、皮膚テスト、内服テストがあります。

花粉症や食べ物のアレルギーの場合に、血液検査を行うことが多いです。

アレルギーが特定された場合は、通常の治療を勧めていきます。

  • 原因物質の除去・生活指導
  • 塗り薬
  • アレルギー薬(飲み薬)
  • ステロイド薬(飲み薬)

 

血液によるアレルギー検査(食物特異的IgE検査)

血液検査は、リスクなく安全にできることでクリニックでの検査に適しています。

当院でも、血液検査によるアレルギー検査を行っています。

1回の採血で、39項目のアレルギー原因物質を同時に計測することができます。

食物特異的IgE抗体を計測します。

*当院では、『食物特異的IgE抗体』の検査を実施しています。

*『食物特異的IgG抗体』の検査は、実施していません。

 

食物特異的IgG抗体検査はあまり有効ではない(アレルギー学会より声明発表)

食物アレルギーの検査は、食物特異的IgE抗体が良いとされています。

SNSで話題の『食物特異的IgG抗体』は、2014年にアレルギーの学会の公式見解として、食物アレルギーの検査として行わないようコメントが出ました。

食物特異的IgG抗体の検査に現在、保険適応はなく、自費診療となり、メリットは少なく、解釈も難しいものと言えます。

 

参考│

日本小児アレルギー学会, 血中食物抗原特異的 IgG 抗体検査に関する注意喚起, 2014

 

皮膚テスト

  1. オープンテスト - 塗る
  2. プリックテスト - 点状の穴をあける
  3. スクラッチテスト - 引っかき傷をつける
  4. 皮内テスト - 注射器で皮膚の中に注入

患者さんの皮膚とアレルギー物質を反応させる検査です。

いずれも15分程度で判定できます。

医療者側と患者さん側で、同時に目で見るため、非常に理解しやすい検査です。

これらの検査は、正しく判定するために、検査の約3日前から、アレルギー薬の内服をやめておくことも大切です。

 

オープンテストは、アレルギーが疑われる物質を腕に塗る、最もリスクが少ない検査です。

以前アナフィラキシーが起こった時に、疑う物質をおそるおそる扱う時に行われる検査です。

それ以外の場合は、ほぼ行われません。

 

プリックテストは、点状の穴をあけて、アレルギー原因物質を浸透させるテストです。

皮膚テストは、これから始める場合が多いです。

スクラッチテストは、プリックテストの傷をもう少し大きく、引っかき傷のようにしたものです。

 

皮内テストは、アレルギー原因物質を入手して、それを注射器で皮内へ注入するテストです。

皮膚テストの中では、リスクの高い検査になります。

 

内服テスト

アレルギー原因物質を試しに飲んでみる(食べてみる)検査です。

非常にリスクが高い検査となりますので注意が必要です。

 

接触皮膚炎のテスト│金属・パーマ液・毛染め液

接触皮膚炎のテストは、『だいぶ時間が経ってから出るアレルギー』を検査するために行います

皮膚テストと似ていますが、接触皮膚炎を疑う場合は、48時間以上経過してから判定したりします。

長いと1週間かけて接触皮膚炎の検査(パッチテスト)を行うこともあります

  • 試薬を貼付後、48, 72, 96時間後、そして7日後に判定
  • 4日経過してからアレルギー反応が起こることもある

人間の肌にとって、多くの医薬品・化粧品・衣類・植物が、長時間触れているとかぶれの原因になります。

接触皮膚炎のテストは、Scanpor tape(Norgesplaster社)というテープの上からアレルギー物質を接触させることが多いです。

*接触皮膚炎の検査は当院では行っておりません

 

接触皮膚炎で診断書が必要な場合│仕事に関わるとき

接触皮膚炎の原因が、仕事などで避けられない場合は、皮膚科へ受診して、きちんと検査をした上で診断書を発行してもらいましょう。

 

魚のアレルギー

  • 魚のアレルギー
  • 貝類のアレルギー
  • 甲殻類のアレルギー

  • 魚粉アレルギー(アレルギー様食中毒)
  • アニサキスのアレルギー

魚に含まれるパルブアルブミンが交叉反応を起こすため、ひとつの魚でアレルギーが出た場合は、他の魚のアレルギーも混ざっていることがあります。

魚粉は、かつお節や、イワシ・アンチョビなどを加工したものです。

 

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

アレルギー誘発物質を食べただけではアレルギー症状が起こらず、身体を動かす運動が加わることで、食物アレルギーの症状がしっかり出るようになるタイプのアレルギーです。

10歳代の男性の多い(少年に多い)です。

典型的には、小中学校の男子生徒が、給食で小麦を含む食品(パン・お好み焼き、めん類)を食べて、昼に体育の授業でマラソンをすると、発症するというエピソードです。

運動をしてなくても、アスピリンを飲むことでも起こり得ます。

運動やアスピリンの他にも、ストレス・疲れ・不眠・かぜ・お風呂・気温・生理前・花粉、などでも発症します。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食品

  • 1位 小麦(51%) 
  • 2位 エビ・イカ・カニ(34%)
  • 3位 ぶどう・ナッツ(5%)

原田, FDEIAの本邦報告例集計による考察, アレルギー 49: 1066-1073, 2000

小麦、甲殻類(エビ・カニ)、果物に多いですが、約半数が小麦です。

子供のアレルギーの代表である、牛乳・卵が食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因にあることは少ないです。

成長につれて、症状がなくなっていく人もいれば、ずっと症状が続く人もいます。

 

参考│

・厚生労働省科学研究班, 特殊型食物アレルギーの診療の手引き 2015

食物依存性運動誘発アナフィラキシー│医療者向け

 

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

FDEIA

Food Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの定義

食物摂取単独、あるいは運動負荷単独での症状は認められず、ある特定の食物摂取後の運動が加わることによって、全身葦麻疹喘鳴など呈するアナフィラキシーが誘発される疾患.

食物アレルギー診療ガイドライン2016

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの診断のポイントは、『運動しなければ、アレルギーは起こらない』ということです。

診断確定後に最も大切なことは、『運動前には原因の食物を摂取しないこと』です。

最低2時間は、運動を避けるようにしましょう。

 

診断を確定する『誘発試験』は入院して行うことが多い

誘発試験は、入院して行うことが多いです(担当医の先生の方針によります)。

発作が起こった時に速やかに対応するためです。

走ったり、自転車をこいだりして、発作の誘発を試みます。

アスピリンを事前に内服することもあります。

 

参考│

・Asaumi: Provocation tests for the diagnosis of food-dependent exercise-induced anaphylaxis, Pediatr AIIergy Immunol 27: 44-49, 2016

 

 

花粉-食物アレルギー症候群とは?

花粉-食物アレルギー症候群とは、『花粉症がきっかけで食物アレルギーになる』という病気です。

カバノキ科、イネ科、キク科などの花粉症がきっかけで、果物・野菜・豆類・スパイス、などの植物由来の食品に対して、アレルギー反応が起こります。

これは、花粉に含まれている2つのタンパク質『PR-10』『プロフィリン』によって、上記食品のアレルギーが起こると言われています。

果物・野菜などにアレルギーがあった場合、花粉症もセルフチェックするようにしましょう。

どの花粉かわからないときは、血液検査でのアレルギー検査がわかりやすいです。

当院でも血液によるアレルギー検査を実施していますので、受付にて申し付けください。

花粉の種類・季節・原因タンパク質

  • カバノキ科(シラカンバ・ハンノキ)ー春ー PR-10
  • イネ科(カモガヤ・オオアワガエリ)ー春夏ー プロフィリン
  • キク科(ブタクサ・ヨモギ)ー秋ー プロフィリン

猪又, 口腔アレルギー症候群 : 診断の進め方, MB ENTONI (254): 13-19, 2021

 

口腔アレルギー症候群とは?

口腔アレルギー症候群とは、『何かを食べたときに口の中がイガイガする』という症状です。

主に、フルーツが多いですが、野菜でも起こります。

口腔アレルギー症候群がある人は、花粉症も起こりやすく、どちらもある場合は『花粉-食物アレルギー症候群』と呼びます。

つまり、果物を食べてノドがイガイガするという人は、花粉症も起こりやすい、ということです。

また、豆乳の場合は、重症度の割に血液検査で引っかからないことがあるので注意です。

豆乳で強いアレルギーを起こしても、血液検査で『異常なし』と出ることあり

豆乳による口腔アレルギー症候群はアナフィラキシーに進展するリスクが高いにもかかわらず、大豆特異的IgE抗体測定検査が陰性になることがある.

猪又, アレルギー検査, 診断と治療 109(7): 907-913, 2021

 

 

ラテックス-フルーツ症候群

ラテックス-フルーツ症候群の人が、アボカド・キウイ・栗・バナナを食べると、アナフィラキシーショックを起こすことがあります

ラテックス-フルーツ症候群』とは、ゴム成分(ラテックス)のアレルギーと、果物のアレルギーが両方同時にある状態です。

これは、ラテックスのタンパク質と、フルーツのタンパク質が、似ていることで起こります(『交差反応:こうさはんのう』といいます)。

アレルギー症状をきたす果物は、アボカド、キウイフルーツ、栗(くり)、バナナ、が多く、時にアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。

ラテックス(ゴム)アレルギーと合併しやすいのは、果物アレルギーだけでなく、野菜のこともあります。

ラテックス-フルーツ症候群は、現在でもきちんとした治療はなく、『厳格な原因物質の除去』が望まれます。

特に、学校給食の指導でも注意喚起が必要です。

ラテックス-フルーツ症候群の原因

  • 1位: アボカド、キウイフルーツ、栗(くり)、バナナ
  • 2位: りんご、にんじん、セロリ、メロン、パパイヤ、じゃがいも、トマト

吉田, ラテックス, 日本小児アレルギー学会誌 35(2): 192-197, 2021

 

 

子どもの食物アレルギー

子供の主な食物アレルギー3つ

  1. たまご(鶏卵)
  2. 牛乳
  3. 小麦

今井, 食物アレルギーに関連する食品表示に関する研究事業, アレルギー 2020; 8: 701-705

子どもの食物アレルギーの原因は、たまご、牛乳、小麦です

小さい頃に食物アレルギーと診断されても、大人になるにつれて、自然とだんだんアレルギー症状が出なくなり、安全に食べられるようになることが多いです。

しかし、中には子供の頃からの食物アレルギーが自然とは治らない人も多いです。

その場合は、小児期に『経口免疫療法(けいこう・めんえき・りょうほう)』が行われることがあります。

 

経口免疫療法とは?

食物アレルギーでも、少しずつ食べることで、体を慣らしていく治療です

経口免疫療法は、アレルギー物質となる食べ物を極少量ずつ口の中に入れて、少しずつ体を慣らしていく治療です。

年単位で継続する治療となります。

アレルギー物質をあえて口の中に入れるわけですので、当然、大きなリスクを伴います。

お子さまとご家族で十分にお話をした上で、専門の先生と十分に相談して行うべき治療です。

*当院では、経口免疫療法は行っておりません

 

アレルギーは赤ちゃんの時からはじまる

  • 赤ちゃんの時にスキンケア(保湿)を行う
  • 赤ちゃんの時にいろいろな食べ物を食べてもらう

アレルギー体質になるかどうかは、生後まもない赤ちゃんの頃に決まります

特にスキンケア(保湿)が重要と言われています。

この時に、肌荒れ部分を通じてアレルギー原因物質が触れると、その食べ物のアレルギーになってしまうことが知られています。

逆に、小さい頃にいろいろな種類のものを食べると、アレルギーになりにくいことが医学研究から明らかになりました。

食物アレルギーにならないためにはスキンケアが大切

食物アレルギー発症のきっかけは、アトピー性皮膚炎を通じたアレルゲンの接触である.

腸管を通した食物を摂取すると、アレルギーになりにくくなる.

Lack G, Epidemiologic risks for food allergy,  J AIIergy Clin Immunol 2008; 121: 1331-1336

 

アトピーがある子供は食べ物のアレルギーが多い

アトピー性皮膚炎があると、食べ物のアレルギーが増えることが知られています。

皮膚かぶれをスキンケアで整えて、食べ物に感作されてないようにする工夫が必要です。

 

アトピーがあっても、スキンケアで食物アレルギー発症を防げる

アトピー持ちの赤ちゃんでも、きちんとスキンケアをして、ピーナッツやたまごなどを積極的に摂取することで、食物アレルギーを発症しにくくなります。

 

赤ちゃんのうちに食べさせるべき食べ物3選

  1. たまご(鶏卵)
  2. ピーナッツ
  3. 人工ミルク

たまご(鶏卵)、ピーナッツ、人工ミルクを赤ちゃんの時期に摂取することで、これらの食物アレルギーは起こりにくくなることがわかっています。

この事実は、2015-2020年に発表され、医学の新常識となりました。

ただし、ピーナッツは2歳ごろまでは、のどに詰まりやすいので、すったり潰したりする配慮が必要です。

 

参考│

・鶏卵アレルギー予防の研究(PETIT)
Sakihara T, Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow’s milk allergy. J AIlergy Clin Immunol 2020

・ピーナッツアレルギー予防の研究(LEAP)
Du Toit G, Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med 2015; 372: 803-813

・牛乳アレルギー予防の研究(SPADE)
Natsume O, Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema(PETIT), Lancet 2017;389:276-286

 

小さい頃から卵を食べるデメリット│食物蛋白誘発胃腸症のリスク?

たまごを赤ちゃんのうちから食べることで、卵アレルギーが起こりにくくなります。

しかし、近年、卵黄で下痢になる『食物蛋白誘発胃腸症(しょくもつ・たんぱく・ゆうはつ・いちょうしょう)』が増えていることが知られています。

この病気は、卵白は食べても大丈夫ですが、卵黄の場合のみ下痢をすることで診断に至ります。

卵を早い段階で食べることがこの病気の原因となるのかは現在わかっていませんが、注意する必要があるだろうと言われており、未だ結論は定まっていません。