ダイエットを目的として、GLP製剤を使った治療を行っています。
これは、GLPという種類の注射を、自宅で毎日自分のお腹に打つことで、食欲を減らし、ダイエットをする治療です。
当院では、欧米諸国で承認されたダイエット治療薬と同成分の注射剤『ビクトーザ(リラグルチド)』を使用します。
ダイエット効果は臨床研究で示されていますが、同時にリスクもきちんと理解して頂いた上での使用をお願いしています。
GLPダイエットの効果
GLP製剤『リラグルチド』がダイエット薬として承認される時に、3つの研究が行われました。
研究に登録された人数は、それぞれ3731人、635人、422人、の合計4788人でした。
主には、肥満の患者さん(BMI 30以上または27以上で肥満関連の病気のある方)を対象とした研究でしたが、糖尿病の患者さんが登録された研究も含まれています。
結果、平均して5-10%の体重の減量に成功したと報告されたことで、ダイエット注射薬として、2010年 米国で承認されました。
また、その他の研究で、リラグルチドは糖尿病の治療としても有効性が高いことがわかりました。
引用:サクセンダ添付文書
リラグルチドを成分とした薬│ビクトーザ・サクセンダ
リラグルチド製剤は2つの名前(ビクトーザ・サクセンダ)で発売されており、それぞれ承認されている目的が異なります。
ビクトーザは、糖尿病治療薬として、2010年に日本で承認、発売されました。
サクセンダは、ダイエット治療薬(BMI30以上、もしくはBMI27以上で肥満関連の病気のある方)であり、糖尿病治療薬ではありません。
いずれの薬も、ノボ・ノルディスクファーマ社から発売されています。
日本国内でサクセンダを取り扱うには、個人輸入しなければいけないため、当院ではビクトーザを使用しています。
ビクトーザは、国内の医薬品卸業者から通常の医薬品と同様に取り扱っています。
未承認医薬品等(異なる目的での使用)
医薬品医療機器等法で、「2型糖尿病」の効能・効果で承認済・肥満治療目的での使用については国内で承認されていません
入手経度等
国内の医薬品卸業者からの国内承認薬をお取り扱いしています
国内の承認医薬品の有無
国内で「肥満治療」の効能・効果で承認されているGLP製剤はありません
諸外国における安全性などに係る情報
サクセンダ(ビクトーザと同じ製薬会社が製造する同一成分の薬剤)が、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)、諸外国等で肥満治療薬(ダイエット治療薬)として承認されています
ビクトーザ(リラグルチド)の副作用
頻度の多い副作用としては、お腹の不快感(特に使用開始の数日間)、便秘・悪心(5%以上)、立ちくらみ、があります。
お腹の不快感や、立ちくらみは一時的な症状であり、数日以内に治まることが多いです。
便秘については、下剤を併用することで解決できることが多いですが、ひどい便秘であればGLP注射を中断することもあります。
報告がある重大な副作用としては、低血糖、膵炎、腸閉塞、があります。
これらは確率が低いものですが、起こった場合には適切な処置が必要になります。
副作用のチェックや発症予防のために、血液検査と定期的な通院をお願いしています。
引用:ビクトーザ添付文書
ビクトーザの代替医薬品としては、前述の通り欧米で使用されているサクセンダがあります。
成分
リラグルチド(ビクトーザと同一成分)
米国での承認
2010年
効果・効能
抗肥満効果(下記の状態に対して)
・BMI30以上
・BMI27以上、かつ肥満関連の病気の方
副作用
一過性の副作用:
・吐き気、胃部不快感、腹痛
・便秘、下痢
・倦怠感
・血中の酵素(リパーゼ)の変化
・低血糖
・めまい
・注射部位反応
・頭痛
重大な副作用
・低血糖
・膵炎、胆嚢炎
・甲状腺C細胞腫瘍
・心拍数増加
・腎機能障害
・アレルギー反応
・自殺企図
禁忌(使用できない人)
・甲状腺髄様がんの人またはその家族
・多発性内分泌腺腫症(MEN2)
・サクセンダでアレルギーのあった人
・妊婦
承認時の臨床研究の要約(添付文書に記載あり)
・承認時に3つの臨床研究あり、合計4788人(3731人+635人+422人)が登録
・56週間、リラグルチド(維持量 3mg)を使用
・体重が、平均 5-10% 減少した
GLP製剤(ビクトーザ・リラグルチド)を注射することで、食欲がなくなり、空腹感を感じにくくなります。
空腹感がなくなることで、食事量を減らすことができます。
つまり、『ダイエット食の継続をサポートする』という位置づけです。
打つことで脂肪が溶解されたり、打つだけでやせる訳ではありません。
リラグルチド承認時の研究では、56週間(約1年間)の使用で、平均 5-10% の体重減少に成功したと報告されています。
体重 80kg の方であれば、4-8kgやせて、72~76kg になったということです。
もちろん、効果にばらつきや個人差はあります。
4ヶ月継続しても痩せないようであれば、中止を検討するよう添付文書に記載があります。
下記の病気のある人はGLPダイエットはできません。
- 糖尿病
- 甲状腺の病気
- 腎臓の病気
- お腹の手術をしたことのある人
- 20歳未満(19歳の方もできません)
- 妊婦
- 授乳婦
起こる確率が高い副作用は、『開始数日間の吐き気』です。
体が慣れるまでのしばらくの間は、胃のあたりがむかむかしますが、1週間以内には自然と落ち着いてきます。
吐き気は、開始数日間に特に起きやすいです。
ビクトーザ(リラグルチド)を最小量(0.3 mg)で維持すれば、吐き気は大部分治まることが多いです。
それでも吐き気が治まらない場合は、2日に1回、3日に1回、と注射回数を減らしていきます。
体が慣れたら注射回数を増やしていき、徐々に注射量も増やしていきます。
臨床研究の報告では、低血糖、膵炎・胆嚢炎、腸閉塞、の報告があります。
ビクトーザの添付文書では、これらの重大な副作用の起こる確率は、『頻度不明』と記載されています。
起こる確率は低いものと考えられますが、リスクをご理解して頂いた上で使用する必要があります。
承認前の段階で、欧米で4788人を対象とした臨床研究が行われています。
これらの研究では、主に白人の患者さんに使わていましたが、現在サクセンダ(リラグルチド)は、韓国でも広く使われており、アジア人に対しても実績のある注射薬となっています。
医師の診察にて注射するGLP量を設定します。
適切な治療量を設定するため、定期的なチェックシートの記入をお願いします。