頭痛の診療では、痛みをやわらげる治療を提案することが主な目的ではありますが、重大な疾患を見落としてないかの診断も重要です。
画像検査で怖い病気を除外すれば、『頭痛症』として、細かな分類をして治療に入っていきます。
最も多いのは片頭痛と緊張型頭痛です。
頭痛のタイプは、それぞれ重複している場合もあり、区別が曖昧な場合は治療を優先する事が多いです。
また、子どもの頭痛では、特殊な治療を必要とすることもあり、しっかりと相談することが大切です。
子供から『頭がいたい』と訴えがあった時に、大切なのは、『適切な治療を求める家族の姿勢』と『お子さんの痛みを理解しようとする姿勢』です。 なぜなら、子どもの頭痛を治療するときは、予防薬が必要となることが多いからです。 また、お子さ[…]
頭痛の薬と言えば、カロナール、アセトアミノフェン、ロキソニン、バファリン、が有名です。 これらを飲むと、だいたいの頭痛は治まります。 しかし、強い頭痛では、これらを飲んでも痛みが治まらない場合もあります。 […]
頭痛は、怖い病気を除外して、診断・治療
日本人の4割が頭痛もちです。
頭痛は社会人に多く、頭痛があると仕事の効率が落ちます。
片頭痛(偏頭痛)による経済的損失は、日本だけでも年間で約3000億円と言われています。
頭痛は国策として多額の研究費が充てられ、治療薬の開発が日々行われている分野なのです。
参考
【情報を先どり】頭痛の新薬『抗CGRP抗体』の注射薬について
頭痛の人口割合
日本人の約4割が、頭痛もちと言われています。
特に、『繰り返し起こる頭痛』の原因は、片頭痛が最も多いと言われ、片頭痛は840万人とも言われています。
ストレスの多い現代社会では、子どもの頭痛も多いです。
前提『突然、首筋から後頭部が痛くなった』は危ない!
- 血管の重大なトラブルの事があります
詳細は下記の記事で述べています。怖い病気だけは除外が必要です。
『首筋から後頭部が痛い』で、1番怖い病気は『椎骨動脈解離(ついこつ・どうみゃく・かいり)』です。 この病気は、『くも膜下出血になる直前』の状態です。 くも膜下出血は、頭の病気ですが、くも膜下出血を発病する少し前に『肩や首筋の後ろ[…]
『治らない頭痛』は緊張型頭痛ではない
頭痛で病院を受診するとき、MRI(またはCT)で怖い病気さえ除外できれば、ほとんどが片頭痛(偏頭痛)です。
左右の両方の頭が痛くても、片頭痛のことが圧倒的に多いです。
『緊張型の頭痛』『こりの頭痛』と言われたり、『肩こりが原因』と言われていても、偏頭痛の治療を行うと劇的に改善する患者さんはとても多いです。
緊張型頭痛として診断治療された方で、あまり改善が見られない方は、専門的な偏頭痛治療を受けてみるのは有効な選択肢です。
-
『肩こり頭痛』は意外と少ないという真実
-
病院を受診するほどの頭痛は、肩こり頭痛(緊張型頭痛)ではなく、片頭痛(偏頭痛)の方が多い
有名な研究報告があり、病院を受診する程の頭痛となると、その原因は、緊張型頭痛(肩こり頭痛)よりも、片頭痛が原因の事が多いという事が知られています。
『肩こりから頭痛が来てると思います』と言われる患者さんはとても多いです。
しかし、強い頭痛を繰り返している場合や、治りにくい頭痛の場合は、片頭痛のきちんとした治療の方が有効です。
ロキソニン・イブ・カロナールを飲みすぎるより、頭痛の予防薬を飲んだ方が良いロキソニン、イブ、カロナール、などを繰り返して飲むよりも、頭痛の予防薬の方が、頭痛が治る可能性が高いです。
また、これらの頭痛薬(とんぷく薬)は、頭痛を悪化させる可能性もあります。
-
その他の頭痛の診断
-
顔が痛くなる頭痛もある
- ヒゲ剃ると痛いんです・・
- 顔を洗うとビビッと痛いんです・・
- 髪の毛をなでると痛いんです・・
『ビビッと痛い』で、まずは神経痛と思われますが、顔を洗う時に痛い、触ると痛い、というのは、三叉神経痛か帯状疱疹の事が多いです。
三叉神経痛を疑った場合は、MRIを撮影して、三叉神経と血管の接触があるかないかを調べます。
顔や頭皮の帯状疱疹は、ブツブツした赤い発疹が出る前に受診される事が多いため、『帯状疱疹と思われます』とお伝えしても、『えっ、ブツブツは出てませんよ』という反応がとても多いです。
ただ、帯状疱疹の場合は、治療が遅れると後遺症を残す事があるため、疑った場合は早期に治療を開始します。
『帯状疱疹後神経痛』という後遺症が残ってしまうと、強力な痛み止め治療をしてもなかなか効きません。
- 三叉神経痛はMRIによる画像診断が有効
- 帯状疱疹は早期に治療した方が良い
『耳の後ろが痛い』は後遺症が残る?『耳の後ろが痛い』と言われた場合は、『後頭神経痛』の可能性があります。 しかし、重症化して後遺症が残りやすく、見逃してはいけないのは、『帯状疱疹』です。 耳の後ろが痛いとき、見逃してはいけないのは、『帯状疱疹(たいじょう・ほうしん)[…]
目が赤くなる(充血する)頭痛もある
- 頭痛の時に涙が出ます・・
- 目が赤くなります・・
TACS(タックス)という特殊な頭痛で、目が充血したり、涙が出たりすることがあります。
治療は消炎鎮痛剤の中でも、特定の薬剤に絞って処方していきます。
痛み方も特徴的で、診療していると、しばしば遭遇する病気です。
歯が痛くなる頭痛もある
- 口の中や、あごの辺りが痛いんです・・・
様々な医療機関を受診され、来院される方もいます。
三叉神経痛も疑われますが、特殊な頭痛の事が多いです。
このような場合は、ある種のてんかん薬や、抗うつ薬が有効ということが知られています。
口の中まで痛い頭痛は、効く薬が少なく、治りにくいですが、粘り強く患者さんと治療薬を一緒に探していきます。
口の中が痛い時はあの病気かも?口の中が痛い場合は、まず歯や口の病気や耳鼻科の病気などの問題がないかきちんと診察を受ける事が大切です。 適切な処置を受けても改善しない場合は、特殊な病気かもしれません。 その時は、ある種の痛み止め(神経痛の薬)が効く事があります[…]
閃輝暗点は脳梗塞の除外が必要
『目がチカチカする症状』が出る閃輝暗点は、脳梗塞の初期症状の可能性があります。
当院ではMRIの検査を積極的に勧めています。
頭痛の治療
頭痛の治療では、予防薬が大切です。
頭痛の専門的な治療
- 痛い時に飲む薬
- 痛くなりそうな時に飲む薬
- 前の晩から痛みを予防する薬
特に、「前の晩から痛みを予防する薬(予防薬)」の中で自分に合うものを探していくことが大切です。
片頭痛(偏頭痛)の予防薬
頭痛の予防薬は、さまざまな種類があります。
診察して、その方に効きそうな薬からご案内していきます。
『頭痛の予防薬』は、効果が高い順に国際的なランキングがついています。
この国際ランキングは、AランクからCランクまであり、Aランクが最も効きやすい薬です。
このAランクの薬には、てんかんの薬だったり、うつ病のくすりだったり、心臓の薬だったりするものもあります。
頭痛の予防薬の国際ランキング
- 予防薬の国際ランキングには、AからCまでのランク(グレード)あります
頭痛薬のAランク(グレードA)の薬は、てんかんの薬だったり、うつの薬だったり、心臓の薬だったりします。
痛みの波に合わせた薬の飲み方を知る
- 発作の時は、我慢せずに早めに頭痛薬を飲みましょう
- 週2~3回の頭痛があれば予防薬を試してみましょう
- 頭痛がしそうな前兆がわかれば、トリプタンを試してみましょう
痛みは波があることが多いです。
治療薬は、強いものであっても、波に合わせないと効果が弱まります。
逆に、それほど強くない薬でも、波に合わせて飲めば効くことも多いです。
波のつかまえ方を理解して、冷静に対処していけば、より有効な戦い方ができるのが頭痛の診療なのです。
片頭痛発作時の薬は、頭痛が始まったらできるだけ早く使用することで頭痛が軽快することが多い
いろいろな頭痛の診断と治療; ペインクリニック; 39:1456
トリプタン製剤は、使うタイミングが大切です。
頭痛が出た時に手元に薬がなければ意味がありません。
海外では、薬局にトリプタンの点鼻薬(ゾーミック点鼻薬)が店頭販売されており、医師の診察なく、気軽に入手することができます。
-
頭痛薬のエビデンス│医師向け内容
-
日本で使われる片頭痛予防薬とエビデンスグレード
柴田, 片頭痛治療UPDATE, 日本病院薬剤師会雑誌 58(6): 603-607, 2022
-
“気圧の頭痛” には漢方薬も有効
- 気圧の頭痛には、五苓散(ごれいさん)が有効、と言われています。
その他、目がチカチカする頭痛には、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、ストレスが多い頭痛には、抑肝散(よくかんさん)が効きやすいと言われています。
発作の原因が低気圧の場合は、五苓散の適応となる
漢方・中医学講座治療編(頭痛) 2009, 246-247
呉茱萸湯は、視覚前兆を伴う片頭痛に有効である
痛みと漢方 2016, 26:46-51
-
『肩こり頭痛の治療』は、片頭痛には無効
- 診断を正しくつけることから始まります。
緊張型頭痛(肩こり頭痛)の治療は、病院に受診する程の頭痛には、有効性が高くない事が知られています。
- 『肩こり頭痛』の治療は、片頭痛には無効
-
『頭痛薬の使いすぎ』で頭痛は悪化する│薬物乱用頭痛
-
毎日、痛み止めを飲むと、頭痛が悪化してしまう
頭痛薬を使いすぎると、頭痛が悪化するのは本当です。
頭痛のとんぷく薬ばかり飲んでいると、頭痛が治らなくなるどころか、悪化してしまうこともあります。
『頭痛薬(痛み止め)の使い過ぎによる頭痛』のことを、『薬物乱用頭痛(やくぶつ・らんよう・ずつう)』と言います。
薬物乱用頭痛になると、頭痛の予防薬が必須になります。
薬物乱用頭痛に悪化してしまう目安は、人によってさまざまですが、『1日1回の頭痛薬を1か月間、毎日飲む』でなった方や、『1日3回の頭痛薬を3か月間、毎日飲む』でなった方もいます。
-
『頭痛の予防薬』が必要な人は多い
-
頭痛は、『痛み止め』を飲むよりも、『予防薬』を飲む方が良いです
片頭痛のある人は、約40%の人が予防薬を受けるべきと言われていますが、専門医の数が少ないため、約10%程度の方しか予防薬を使用されていません。
ですので、頭痛があると作業効率が落ちて、仕事がしづらくなります。
一生のことですので、早めに頭痛を専門的に治療している医療機関へ通院して、その後の生活を充実させていきましょう。
当院ではこのような頭痛の予防薬を積極的に使用して頭痛治療を行っています。
頭痛の予防薬はいまだに普及していない
片頭痛もちの人の約38%が予防薬を使用する必要があるが、実際に予防薬を使っている人は、推定13%に過ぎない.
Lipton RB. Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy. Neurology. 2007; 68: 343-349
-
どの薬も効かない頭痛の対処法
-
どのクスリも効かないとき
- 特殊な治療を提案します
特殊な治療は、効く可能性はありますが、長期的には副作用もありますのでリスクをお話ししながら、提案させて頂きます。
現代の医療水準では治らない頭痛もある
現在、薬の選択肢は、非常に増えています。
しかし、まだまだ治らない頭痛は存在しています。
実際、世界では『モノクローナル抗体』を使った新しい頭痛薬が使用でき、日本でも2021年1月に承認されました。
この『モノクローナル抗体』による頭痛薬は、効果が高く、眠気が少ないものと期待されています。
このような特殊な製剤が開発されるということは、それだけ『現在の治療では治せない頭痛がある』、ということなのです。
モノクローナル抗体
現在、世界では、『抗CGRP抗体』という『モノクローナル抗体』が使われるようになってきました。
2週間から1か月の頻度で投与する製剤になります。
高価である事が予想されますが、非常に期待できる薬剤となります。
参考
【情報を先どり】頭痛の新薬『抗CGRP抗体』の注射薬について
医師も恐れる肩こりで1番こわい病気『首筋から後頭部が痛い』で、1番怖い病気は『椎骨動脈解離(ついこつ・どうみゃく・かいり)』です。 この病気は、『くも膜下出血になる直前』の状態です。 くも膜下出血は、頭の病気ですが、くも膜下出血を発病する少し前に『肩や首筋の後ろ[…]
片頭痛はなぜ起こる?│メカニズム
片頭痛の痛みは、硬膜の炎症です。
正確には、硬膜の中を走行している三叉神経と血管の炎症が原因となり、片頭痛が起こります。
三叉神経と血管に炎症を起こす物質が、CGRPという物質です。
新しく発売された頭痛治療の注射薬は、このCGRPを抑える効果があります。
CGRPは、視床下部に刺激が加わると放出されます。
その刺激は、運動やスポーツの刺激や、生理、アルコール、寝不足、などさまざまです。
片頭痛は三叉神経と血管の炎症
現在では、前兆は皮質拡延性抑制により、片頭痛の痛みは三叉神経血管系の神経原性炎症により起こるという説が最も広く受け入れられています.
頭痛治療の進歩, 日本医師会雑誌, 151-9 (12月), 1545-57, 2022
群発頭痛にはイミグラン皮下注射が1番効く
- イミグラン皮下注射
- ワソラン飲み薬(1日 240-360mg)
- 酸素治療
- ステロイド治療
群発頭痛の治療は特殊です。
群発頭痛が起こってしまったら、まずはイミグラン(スマトリプタン)皮下注射が効きます。
群発頭痛は、『目が取れそうなくらい痛い』ため、ためらわずに自分で注射を打ちましょう。
次に酸素を吸います。
酸素は効く人と効かない人と分かれます。
1ヶ月の治療費が上がるため、かかりつけの先生とよく相談しましょう。
予防薬で最も標準的なのは、ワソランです。
もともとは不整脈や狭心症で使われていた心臓の薬です。
群発頭痛では予防効果を示します。
どうしようもなくなった場合は、ステロイドの適応外使用があります。
群発頭痛の特効薬であり、とてもよく効きますが、保険適応外の治療となります。
主治医の先生とよく相談して使用しましょう。